外国映画 Archive

頸木の橋

「ドラゴン・タトゥーの女」公式サイト  往年のプロレスファンにはブルーザー・ブロディの入場テーマ曲としてお馴染み、レッド・ツェッペリンの名曲「移民の歌」が流れるなか、デヴィッド・フィンチャー監督最新作が幕を開けた。
「ドラゴン・タトゥーの女」を観た。
 本作は夭逝した作家、スティーグ・ラーソンの世界的ヒットとなった「ミレニアム」シリーズ第一作品を映画化した、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のハリウッドリメイクである。
 リメイクにあたって監督にデヴィッド・フィンチャーを迎え、主演にダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラを配した。
 上映時間158分の大作なので、トイレは上映前に済ませておくことを勧める。観賞中に尿意、あるいは便意との勝利なき戦いに苦しむ羽目になるよ。

 スウェーデンはストックホルム、「ミレニアム」誌の主筆であるミカエル・ブルムクヴィストはハンス=エリック・ヴェンネルストレムの不正追及の記事を物すも、ヴェンネルストレムから名誉毀損で訴えられてこれに負ける。
 自らが勤める調査会社で随一の能力と実績を持つリスベット・サランデルは、最近話題のミカエル・ブルムクヴィストの調査を終える。好奇心に駆られて調査対象が法廷で争ったヴェンネルストレムの自宅マンションに侵入し、ハッキングの仕掛けを施す。
 己の余生の短さを思い、ヘンリック・ヴァンゲルの意識は是非とも解決しておかねばならない一件に立ち返る。かわいいハリエットが失踪した件だ。自分の人生とグループ企業全体の明暗を分けることになったこの事件は、四十年経った今になっても決着していない。なんとか解決させたいヘンリックは、顧問弁護士に命じて調査に当たらせる人員の選抜を済ませた。
 敗北の苦さを噛みしめるミカエルに仕事が舞い込む。依頼主は衰えたとはいえ国内随一の同族企業ヴァンゲル社の前会長、ヘンリック・ヴァンゲル。この依頼を達成すれば、十分な報酬に加えてヴェンネルストレムを破滅させられる確たる証拠をミカエルに譲るという。
 ヘンリックの依頼は、四十年前に姿を消したハリエット・ヴァンゲルについての謎を解明してほしいというもの。つまり、
 誰がハリエットを殺した?

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我慢大会

amazon:[Blu-ray] 4デイズ  私なら鼻面をガツンと殴られただけで、秘密だろうと何だろうとあること無いこと洗いざらい喋っちゃうね。それはそれでまた殴られそうだけど。
「4デイズ」を観た。
 主演はサミュエル・L・ジャクソン。彼は"H"の愛称で呼ばれる拷問のプロフェッショナルを熱演する。Hが尋問の"ムチ"なら"アメ"はFBIのヘレン・ブロディ捜査官だ。演じるのはキャリー=アン・モス。
 ヘレンは仕事に情熱を傾けていてその結果として独身でいるのだが、子ども好きの一面を持つ。家庭よりキャリアを選んだであろう彼女と対照的に、仕事柄、人非人の所業も辞さないHが妻子に恵まれ、家庭人として満たされているのは皮肉だ。

 FBI捜査官のヘレン・ブロディと彼女のチームは極秘の任務である建物に赴く。敷地内を軍人が闊歩するそこで会ったのは、直前に危険人物として取り調べをした男、通称"H"。あのときはCIAの横槍が入って男の正体はわからずじまいだったが、ここでようやく男の仕事が判明する。
 建物内にひとりの男が監禁されている。男の名前はスティーブン・ヤンガー。彼は生粋のアメリカ人だが中東への派兵をきっかけに内面に変化が生じ、今やイスラム教徒に改宗済み。ヤンガーには特殊部隊所属の経歴があり、特に爆弾や爆発物に関するエキスパートだ。
 そのヤンガーがアメリカ国内に時限式の爆弾を仕掛けた。彼が送りつけた映像には国内三カ所に核爆弾を仕掛けたとある。ヤンガーの要求が飲まれない場合、これらの核爆弾が爆発する、と。
 ヤンガーの身柄は確保した。次にすべきは爆弾の在処を自白させること。
 ヘレンがこの場に喚ばれたのは、彼女がテロ犯罪の部署に所属してそういった犯罪者の扱いに長けているからだ。ヘレンが犯罪捜査のプロフェッショナルなら、Hは拷問のプロフェッショナルだ。彼の仕事はヤンガーに核爆弾の在処を自白させることにある。

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家に帰るまでが強盗です!

amazon:[Blu-ray] インサイド・マン  さあ、これで三回目だ。まだ続いているのが自分でも信じられない。
 スパイク・リー監督による2006年公開のアメリカ映画、デンゼル・ワシントンとクライヴ・オーウェンとジョディ・フォスターが出演する「インサイド・マン」を観た!
 前二回はここで梗概を書いたけれども、さすがに三度も同じことを書くのは辛い。今回は勘弁してもらいたい。
 まずは本作を取り上げた前二回に目を通してほしい。そうしなければこの記事を読んでもよくわからないだろう。ただでさえアレな文章だというのに、ソレをコレしてドウなるの?
 何はともあれ、前二回の記事をとりあえず読むことをお勧めします。

 また、本作「インサイド・マン」を取り上げた記事は、今回を含めてすべてネタを割っているものとお考えください。「まだ観てないからオチを知りたくない」ということでしたら、厳かに「戻る」をクリックでございます。

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木の葉を隠すなら?

amazon:[Blu-ray] インサイド・マン  前回、前置きで終わった「インサイド・マン」の続きである。
 差別問題を題材にとるスパイク・リー監督作品。武装強盗の首領をクライヴ・オーウェン、交渉担当の刑事をデンゼル・ワシントン、やり手の女性弁護士をジョディ・フォスターがそれぞれ演じている。ウィレム・デフォーがアクセントとなっている。

 ニューヨークのマンハッタン信託銀行32番支店は、今や大富豪として名高いアーサー・ケイスの起業の礎である。1948年にここを開業したのが、ケイスの成功神話の発端である。
 そのマンハッタン信託銀行32番支店を、強盗が襲う。四人組の男女が塗装工に扮して侵入。監視カメラを使用不能にして、人質をとる。
 巡回中の制服警官がマンハッタン信託銀行の扉の隙間から煙が漏れているのを発見。近付くと扉が開き、大口径の拳銃を手にした男が。サングラスに覆面で人相を隠した男は外国訛りで銀行を占拠した旨を宣言する。これは大事件だ!
 マンハッタン信託銀行の籠城事件を担当する刑事は、ニューヨーク市警のキース・フレイジャーだ。彼は14万ドルの小切手を着服した疑惑をかけられて内勤に回されていたが、本来なら担当するであろう同僚刑事が休暇のためお鉢が回ってきた。つまらない疑惑で出世街道から外れてしまったが、この事件を解決して名誉挽回するのだ!
 マデリーン・ホワイトがアーサー・ケイスから直接の電話を受ける。彼の銀行を強盗が侵入。現在、籠城しているという。そこには個人的な秘密が隠されており、ケイスはその秘密が暴かれるのを望んでない。だからケイスが云うには、腕利きの弁護士に強盗と取り引きしてもらいたい、と。ケイスの望みを叶えられるか否かが、ホワイトの将来を大きく左右するに違いない。彼女は笑顔で依頼を受ける。
 人質が解放される。二人目の彼が銀行から出されたときに首から提げていたのは、取り外された引き出し。それに犯人の要求が書かれている。
 バス二台と燃料満タンのジャンボジェット機をパイロット付きで。
 白昼の籠城劇、どんな結末を迎えるだろうか?

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疾風のように現れて、疾風のように去ってゆく!

amazon:[Blu-ray] インサイド・マン 「インサイド・マン」を観た。
 スパイク・リー監督作品。クレジットで最初に名前が挙がる俳優はデンゼル・ワシントン。確かに銀行内に引きこもってしまう犯人役のクライヴ・オーウェンと比較しても、彼が演じる刑事は事件解決に奔走して、よっぽど活動的と云えよう。しかし、物語を支配するのはクライヴ・オーウェン演じる強盗団のリーダーだ。彼らの他にウィレム・デフォーとジョディ・フォスターがキャストに名を連ねて、派手さこそないものの実に隙のない作品ができあがった。
 本作の基本アイディアは、実際に起こった事件から得ているとのこと。実際の事件は本作のように劇的な展開を見せないし、そもそもは銀行強盗事件ではないけれど、それだけに脚色を施してここまでの作品に仕上げたスパイク・リーには心の底から敬意を払う。ホント、たいしたもんだ。

 狭い空間にひとり籠もって、ダルトン・ラッセルが独白する。自分たちが成功させた銀行強盗事件について。
 1948年開業、ニューヨークは下町のマンハッタン信託銀行32番支店を強盗が襲う。塗装工に扮した四人組は、銀行内の人間を集めて携帯電話と鍵を没収。男女ともに全員をジャンプスーツに着替えさせ覆面をさせる。暴力も辞さない犯人グループに人質は脅え、唯々諾々とその指示に従う。
 14万ドルの小切手を着服したと疑われ、内勤に回されたニューヨーク市警のキース・フレイジャー刑事は、マンハッタン信託銀行で起きている強盗事件の担当を任されて名誉挽回とばかりに勇んで出陣する。
 アーサー・ケイスは自分の事業の礎となった銀行に強盗が入ったとの報告を受け、対策の必要に迫られる。選りにも選ってあの支店が狙われるとは!
 辣腕弁護士で鳴らすマデリーン・ホワイトは、アーサー・ケイスからの電話を受け取る。あのアーサー・ケイスが直々に電話をかけてきたのだ! この依頼は絶対に成功させなければならない。
 かくしてそれぞれの人生にとってのターニングポイントとなる長い一日が始まる。

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バチェラー・ガール

amazon:[DVD] 譜めくりの女 デラックス版  楽器はピアノはおろか小学校時代に習った縦笛からして不得手な私。ピアニストの繊細な神経を理解も実感もできる筈がない。
「譜めくりの女」を観た。
 メラニー・プルヴォーはずっとピアノを続けてきた。実家は肉屋を営んでいて、はっきり云えば裕福ではない。
 今度、コンセルヴァトワールを受験する。これに合格できればピアノを続けられる。たとえ受験に失敗したとしてもピアノを続けていいと父親は云ってくれるが、そう云うわけにもいかない。だから、絶対に合格する。失敗できない。
 受験当日。着飾った受験生たちに混じって、メラニーの姿があった。そこに審査員が到着。そのなかに高名なピアニストの姿があった。サインを求めるファンに対して、彼女は「後で」と云い残して去ってゆく。
 運命を左右する試験。自分の実力を遺憾なく発揮するメラニー。試験特有の緊張感が部屋に張り詰めて、しかしそれは不意に破られた。先刻のファンが無断で入室し、ピアニストにサインを求めたのだ。そしてそれに応じるピアニスト。
 その様子を横目に見たメラニーは、心を乱してしまった。心の乱れは演奏に大きく影響を及ぼす。
 散々な結果と心の傷を残して、メラニーはピアノを辞めた。
 長じてメラニーはパリに住む。そして、ある法律事務所で研修生として働くこととなった。息子の子守を探していた所長にメラニーはその仕事を志願する。仕事ぶりには所内で評価を上げている娘だ。彼はメラニーに子守を頼むことにした。
 子守の仕事の前に、ジャンはメラニーに云っておかねばならないことがある。ジャンの妻はピアニストだ。二年前に轢き逃げ事故に遭ってからというもの、彼女の精神面に脆さが見られる。子守をお願いするとは云っているが、実際の仕事は妻から目を離さないことだ。
 屋敷に着き、当のピアニストと対面する。彼女の名はアリアーヌ・フシェクール。メラニーもよく知っている人物だ。
 あの試験でファンにサインをしたピアニストだ。

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あるいは死でいっぱいの海

「トライアングル」を観た。
 主演はメリッサ・ジョージ。辛気臭いヒロインだと思っていると、そのキャリアに「30デイズ・ナイト」がある。あの吸血鬼映画でジョシュ・ハートネットと共演していた女優ではないか。本作とはイメージがまるで違うので気付かなかった。
 メリッサ演じるヒロインはなにしろ内向きのキャラクターであり、その気持ちが伝わってこない。なにやら思い悩むところがあるようだけれども、その様子が鬱陶しく、苛々しながら観ていた。ただし、いざ行動するとなると動きは機敏だし迷いは見られないしで意外に感じた。どんな人物造型なんだ?
 ヒロインが何を抱えていて何を思い悩んでいたかがわかるのは終盤。それらがわかるとそれまでの行動にも思い当たる節が。なるほど、そういうことね。

amazon:[DVD] トライアングル  ジェスは自閉症の息子と二人暮らし。ある晴れた土曜日、彼女は自分が働くダイナーの常連客からヨットクルージングに誘われていて、息子とともにヨットハーバーへ行く準備を。
 ヨットハーバーにトライアングル号が停泊している。船主のグレッグが出航の準備を整えていると、旧友のダウニーとサリーの夫婦、そしてサリーが連れてきたヘザーが現れた。この友人夫婦とは長い付き合いだ。独身の身を案じてくれているのだろう、サリーは招待するたびに女友達を紹介してくれるのだが、あいにくこちらにはその気がない。彼女には悪気がないだけに困りものだ。特に今回はジェスを招いているのに。
 そこへヴィクターがジェスを伴って現れる。ヴィクターはグレッグの居候で、若いけれども操船を任せられるくらい頼りになる男だ。その彼がジェスを「おかしな女」と云う。失礼な奴だが、そう云われてみると確かに浮かない表情だ。しかも、彼女は息子のトミーを連れていない。
 出航してしばらくは快調に走っていたトライアングル号だが、突然にぱったりと風がやむ。間の悪いことに、こちらに向かって黒い雷雲が恐ろしい勢いで迫ってくる。
 激しい風と波に襲われてトライアングル号は転覆。
 嵐が去り、転覆したヨットにとりついてみると、ヘザーの姿がどこにもない。サリーは姿の見えない友人を心配をするが、それどころではない。このまま助けが現れなければ全員が死んでしまう。
 すると、そこに豪華客船が姿を現す。アイオロス号と書かれた船体から視線を甲板に移すと、そこに人影が。
 助かった!
 五人はアイオロス号に乗り込む。

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天国に結ぶ恋

amazon:[Blu-ray] キラー・インサイド・ミー 「キラー・インサイド・ミー」を観た。
 主演はケイシー・アフレック。彼の兄はベン・アフレックだ。俳優としてのみならず、脚本や監督、製作においても実績を持つ才人だ。ケイシー・アフレックの名前は、今はベン・アフレックの弟という位置付けで記憶に留められるにすぎないかもしれないけれど、今後の活躍次第ではベンこそケイシーの兄と呼ばれる日がくるかもしれない。
 共演者は、主人公の「運命の女」にジェシカ・アルバ、恋人にケイト・ハドソン。

 舞台は1950年代の西テキサス。油田開発と有力な企業のおかげで、町は貧困の苦しみを免れている。保安官助手のルー・フォードは上司から指示を受ける。ボブが云うには、町に売春婦が流れてきた。派手に"営業"してないが、今のうちに"排除"したい。そういうことなのでどうにか処理してくれ。
 町の誰からも好人物と認められ、実際に善人そのものであるルーならば、波風立てずに事をおさめられるだろうと期待してのボブの指名だ。この町には犯罪者がいないと保安官は嘯くが、要は犯罪を犯罪として立件せずにこのように穏便におさめるのが実情であり、これが彼のやり方なのだ。
 かくして保安官助手ルー・フォードは売春婦ジョイス・レイクランドの自宅に出向き、そこで彼女と出逢い、その日のうちに二人は恋に落ちた。
 相手がどのような立場にあろうと、紳士的に対応するルー。家に自分を訪ねてくるのは男で、しかもセックス目当てでしかないことを承知しているジョイス。あくまで紳士的に職務を全うしようとするルーと、訪問者が客ではなく保安官助手と知るや暴力に訴えるジョイス。何度となく殴られるうちにルーのなかに衝動が芽生える。それは圧倒的なまでの強い力でルーの紳士面を引き剥がした。ジョイスをうつぶせにして組み伏せ、下着を下ろし、ベルトを引き抜くとこれで尻を打擲する。何度も、何度も。
 スパンキングのさなか、ルーとジョイスに心情の変化が訪れて、二人は互いを激しく求め合い、そして最愛の恋人と思い定めた。
 毎日のようにジョイスを訪ねるルー。愛を交わすうちに二人の絆はますます強くなってゆく。ジョイスは、二人でこんな町を出て行こうと誘うも、ルーは首を縦に振らない。自分が商売女だからかと尋ねるとそうではない、と。先立つものがない。ならば、あの男に金を出させるわ。あの男は私に岡惚れしているから、私が頼めば大金だって出してくれるはず。幸いにして父親は金持ちだから、ふっかけたところで連中にとってみればはした金よ。
 ジョイスの云うあの男とはエルマー・コンウェイだ。彼はルーの旧い友人だし、その父親のチェスターは建設会社を経営していて、町の有力者だ。

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アール・ブルックスは静かに暮らしたい

amazon:[DVD] Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼 (特別編) 「Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼」を観た。
 ケビン・コスナーとデミ・ムーア。はっきり云ってしまうと、いささか旬の過ぎた感のある映画俳優だ。その二人の名前が並んでいるのを見て、本作の出来にあまり期待しなかった。かつてのスターが新境地を拓けないまま再浮上できない様を目にするのが心苦しかったのだ。改めて振り返ると、本当に失礼な話だ。蓋を開けてみて驚いた。予想以上に面白い!

 紙箱メーカーを興して二十年、アール・ブルックスは商工会議所の選ぶ「今年の顔」となった。その夜、パーティの余韻に浸る妻を残して、アールは自分の工房にこもる。準備を万端ととのえた後、先刻目星をつけた標的の家へと向かう。
 アールには抗い難い欲求があり、この二年間はこれを我慢してきたのだが、この夜、とうとう禁忌を破ってしまった。
 アール・ブルックスの密かな快楽、それは殺人行為によって齎される。
 ベッドで快楽を貪る男女に対して気軽に声を掛け、一発ずつの銃弾を見舞う。快感が全身を駆け巡るなかで、ふと気がつけば窓はカーテンが開かれたまま。目撃された可能性が頭をかすめたが、それすらどうでもいいような気がした。
 ポートランド市警察殺人課のトレーシー・アトウッドは殺人現場の様子を見て確信する。このところ鳴りを潜めていた連続殺人鬼が再び現れたのだ。奴は殺人現場に被害者の親指と血でもって指紋を残し、自分の犯行であることを証明する。このことから世間はこの殺人鬼を「サムプリント・キラー」と呼んでいる。サムプリント・キラーは"被害者の親指の指紋"をあえて捺してゆく以外、犯行現場に痕跡を全く残さないので、警察はこの連続殺人鬼について何らの犯人像を描けていない。
 トレーシーは以前からサムプリント・キラーを追っていたが、ここしばらく奴による殺人事件は起こっていなかったことから、既に死んでいるか別件で刑務所に送られているかしているものだと考えていた。身辺の整理に手間取っているさなかに、手強い事件が続いてくれるものだ。トレーシーは夫との離婚が難航しており、これに加えて彼女がかつて逮捕した連続殺人鬼の脱獄が重なり、サムプリント・キラーの捜査に専従できない状況だ。
 アールの娘のジェーンが、彼女が大学生活を送るパロアルトからいきなり帰ってきた。退学したいのだと云う。将来を見据えて父親の会社で働きたい、と。タクシー代も持たずに帰ってきた娘の云い分を完全に信じたわけではないが、アールはいつものように娘を受け入れる。
 娘の帰還と前後して、アールは見知らぬ男から突然の来訪を受ける。男はスミスを名乗り、アールの写っている写真を彼に見せた。その写真の被写体はアール。サムプリント・キラーが行った殺人の現場に立つアールが、今まさにカーテンを閉じようとするところが写っている。あの夜、一瞬危惧したことが現実となってしまった。
 てっきり恐喝されるものとばかり思っていたが、仮名スミスの要求は金ではなかった。彼の要求は、アールの次の殺人に同行したいというものだ。殺人の様子を現場で見てみたい。

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失楽は匣の中

amazon:[Blu-ray] デビル 「デビル」を観た。
 原案、そして製作に名を連ねるのはM・ナイト・シャマラン。あのM・ナイト・シャマランだ。「シックス・センス」で驚愕のどんでん返しを仕掛けて観客の度肝を抜き、それ以降の作品でもアッと驚く結末を用意してM・ナイト・シャマラン印の興奮を味わわせてくれた、あのM・ナイト・シャマランだ。
 彼の最近の作品は驚天動地のどんでん返しを趣向としていないようで、彼が映像作家として目指すところと従来のファンが求めるところとに乖離が生じているようだ。そんな状況のなか、M・ナイト・シャマランの原案になる本作が製作された。
 さて、どのような仕掛けが施されているだろうか?

 まず自殺者が出た。
 高層ビルの35階から窓を割って飛び降りたようだ。
 そのビルのエレベーターに男女五人が乗り合わせる。若い女に老女、セールスマンにこのビルの警備員に外見からは何者ともつかない男。そしてエレベーターは突如として停止する。
 警備員室では二人の警備員が、ビルの各所に設置している監視カメラの映像をモニタリングしている。6号エレベーターが停止しているようなので、スピーカーを通して乗客に語りかける。彼らの反応からこちらの声が通じているのがわかるけれど、エレベーター内の音声は全く聞こえない。おかしな故障があったものだ。おまけに照明までが明滅しはじめた。
 ほんの数秒ほど暗闇が訪れて、再び明かりが点されたとき、若い女の背中から出血が。何かに噛まれたような痕が残っている。
 フィラデルフィア市警殺人課のボーデン刑事は自殺の件を捜査するため、相棒とともに高層ビルを訪れる。そこで故障中のエレベーター内で起きたという傷害事件の捜査を担当する。
 事件現場は何人をも出入りできないエレベーターの中。被害者はもちろんのこと、誰かはわからないが加害者も閉じ込められている。エレベーターを修理して乗客を降ろしたらすぐにでも解決するような簡単な事件だと思われた。しかし、事態は予想だにしない展開を見せる。

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