アニメーション Archive

永遠の約束

 前回に引き続いて、スタジオジブリ最新作、「思い出のマーニー」を取り上げる。
 札幌在住の杏奈は中学一年生。持病の喘息に苦しむ彼女に主治医は転地療養を提案する。
 杏奈は里親の親戚のもとでひと夏を過ごすことになる。
 杏奈にとってこの地は空気が澄んでいるだけでなく、自分が「異人」のままいられる気軽さがある。そのうえ、地域住民が立ち入らない、実に素敵な場所があって。
 杏奈が身を寄せる大岩宅からほど近い入り江に、「湿っ地屋敷」の通り名を持つ洋館がある。かつての栄華を思わせる外観に、はじめてこの地を訪れたにもかかわらず、杏奈は不思議な既視感を覚える。
 夜になり、満潮を迎えて孤立する湿っ地屋敷の姿に、孤高の潔さを杏奈は感じ取る。その高貴なるイメージを体現する少女との邂逅。杏奈はマーニーと出会う。
 すぐに無二の親友となった二人。夜毎の交友は杏奈に充実感を与えてくれたが、次第に違和感をも募らせることとなる。
 親しく付き合うほどに、マーニーは杏奈が想像だにしない言動をとるようになる。杏奈の与り知らぬ男子と楽しく談笑したりダンスしたり。
 杏奈が抱いた違和感は、次に示される事実によって驚きと変わる。
 驚きを齎す事実。それはマーニーの実在を示唆する証言であり、物的証拠である。

 マーニー、あなたは何者なの?

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辺縁の住人

amazon:[DVD] 夢と狂気の王国  有楽町はよみうりホールにて試写会。スタジオジブリの最新作、「思い出のマーニー」を観た。
 原作はジョーン・G・ロビンソンによる同名の児童文学。これを現代日本を舞台に翻案したのが本作である。
 スタジオジブリといえば看板は宮﨑駿、高畑勲。この二大巨匠だろう。
 しかし本作の監督は、脚本にも名を連ねる米林宏昌。「借りぐらしのアリエッティ」から四年を経て、再び監督を務める。
 さて、宮﨑駿は何度も何度も引退宣言をしては撤回することでも知られている。その性癖から「引退マニア」だの「引退詐欺」だのと陰口を叩かれているが、創作意欲に忠実なところと市場論理が絡み合って、だから思い通りに引退できないでいるのだろう。
 そうはいうものの、いつまでも宮﨑駿におんぶにだっこではスタジオジブリも今後が立ちゆかない。
 宮﨑駿にせよ高畑勲にせよ、彼らが本当に引退してしまった場合を考えて、後進に実戦を積まさなければならない。
 ひとりに屋台骨を背負わせる必要はないが、いずれは世代交代をしなければならない。むしろ、今までそれが成ってないことがスタジオジブリの問題点だ。
 その候補は誰だ? 宮﨑吾朗か?
 申し訳ないけど「ゲド戦記」も「コクリコ坂から」も観てない。だから評価できない。その資格がない。
 でもって米林宏昌初監督作品の「借りぐらしのアリエッティ」も観てない。
 ガチガチの宮﨑駿原理主義者ではないけど、彼や高畑勲の手掛けた仕事ほどには魅力を感じてないのかもしれない。
 それを勿体ないと思わせられるか。マーニー、どうなのよ?

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Deep Ones

 2008年の夏。スタジオジブリの劇場用長編アニメーション映画が公開され、それは日本全土を席巻した。あれから五年。まだ宮﨑駿はアニメを作っている。隠居はまだまだできそうにない。引退するつもりなど本当はないのかもしれない。

amazon:[Blu-ray] 崖の上のポニョ  静かなる調停の席。契約の締結は平和裏に為される。劇的に展開する破壊も創造もこの席には要らない。同じように、英雄譚として仰々しく飾り立てることも望んではいない。穏やかに、それでいて真っ直ぐに、調和と共生を望む心がここにある。
 だから、本作のクライマックスは緩やかな流れのなかに訪れるのだ。このうねりに海のような力強さを感じた。
 物語のなかで一番の盛り上がりを見せる場面は中盤に用意されている。ここにおいて世界は混乱の坩堝に叩き込まれる。やがて秩序の破壊は一旦は収まるけれど、終息というには程遠い。
 可及的速やかな問題の解決を求めて軍事的勝利を望むのではなく、時間は必要としても双方の歩み寄りによって導かれる外交的成功を選ぶ。つまり、そこには即時的な解決の方法は用意も提示もされない。幼い主人公たちは今後の人生において、その不断の努力を試され続けるのだ。
 どうしたものだろう、日本のアニメーション作品は。大変なところまで到達していたではないか。老いたりといえどまだまだ最前線を走っていたではないか、宮﨑駿は。
「崖の上のポニョ」を観た。

 宮﨑駿作品といえば飛翔と疾走だ。これらの表現には定評がある。この映像作家の生み出す「動き」には、アニメーションの持つ面白さがある。リアルとファンタジーとを併せ持つアニメ表現が本作には盛り沢山だ。
 本作に空中を飛翔滑空する場面は無いが、代わりに水中を浮遊潜航する場面があり、いっとき重力を忘れた。ポニョが荒れ狂う大海原を駆ける場面は、「これぞ宮﨑アニメの真骨頂!」と思わず笑みを浮かべた。
 また、本作ではポンポン船が海上を疾る。熱源さえあれば永久運動が可能なポンポン船に乗って、これを巧みに操るヒーローを私は他に見たことが無い。五歳児ながらも立派な海の男である。
 宗介の大冒険に目を細める一方で、リサの乱暴な運転に眉を顰める向きもあろう。しかし、これは宮﨑駿作品なのだ。女性ドライバーが神業的運転技術を有するのは、すこしもおかしくない。むしろ当然である。いわば約束事。「名探偵ホームズ」におけるハドソン夫人の爆走を知る身には、リサの走りはいささか物足りないくらいだ。
 リサの疾走にも意味はある。物語がはじまってすぐの場面、宗介とポニョの邂逅があった後にリサは愛車を駆る。この一連の流れによって、自宅から彼女の職場までの地理的特徴が描かれている。後から振り返れば、物語の主要な舞台はこの時点でちゃんと示されている。短い時間でこれを成し得た宮﨑駿は、やはり稀代のアニメ職人である。
 こういったところに語り手としての宮﨑駿の優れた点を見出せる。やたらと饒舌というわけではないけれど、要諦は決して外さない。否。むしろ、細部に関しては饒舌といえよう。
 たとえば、物語の主要な舞台のひとつ、崖の上の一軒家。この家の電気ガス水道事情を観客に示すのに、人間社会に疎いポニョに宗介が説明する体裁をとっている。これは巧い。物語世界を成り立たせているディテールを、さりげなくも着実に盛り込んで、しかも異人であるところのポニョを配することによって、日常に対する異化効果をも狙っている。さすがだ。神は細部に宿る。

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狂宴の空に別れはありて

「ベルセルク 黄金時代篇Ⅲ 降臨」公式サイト 「ベルセルク 黄金時代篇Ⅲ 降臨」を観た。
 ミッドランドの王都、ウインダムの城には、地底深くへと続く螺旋状の階段がある。この階段は、伝説の覇王が建設した都市へと到るのだそうだが、この廃都はかつて天使たちに滅ぼされたという。太陽の光が決して射し込まない滅びの地に、栄光を一身に受けていた男が幽閉されている。
 この地下牢で来る日も来る日も拷問を受け続けているのは、過日、ミッドランド王国にて白鷹将軍に任命されるはずであったグリフィスその人である。
 あの冬の日、グリフィスはすべてを失った。ひとりの男が麾下より去った。ただそれだけのことがグリフィスを狂わせ、彼に感情の赴くままに行動を起こさせた。シャルロット王女に夜這いをかけたところを目撃され、反逆の罪で捕らえられてしまう。同時に、「鷹の団」もまた謀反人の集団と判断され、白鷹騎士団としてミッドランド王国正規軍に組み入れられる栄光から一転して、昼夜を問わず追われる立場へ。救国の英雄は国家的大罪人へと転落した。
 軍略の天才、グリフィスを欠く「鷹の団」をまとめあげるのは、千人長のキャスカだ。かつて、グリフィスの剣たらんと欲した彼女が、グリフィスの留守を預かる。キャスカの統率力も大したものだが、総大将のいない傭兵集団が空中分解を遂げてないのは、彼らに希望があるからだ。その希望とは、グリフィス。
 キャスカをはじめとする「鷹の団」団員の総意はシンプルだ。グリフィスを奪還する。すべてはそこから始まる。グリフィスさえ帰ってきたなら、すべては元通りになる。「鷹の団」の誰もがそう信じている。グリフィスがこの窮地を逆転する秘策を齎してくれるものと信じ込んでいる。だから辛いのは今だけ。臥薪嘗胆はグリフィスを奪還するまでのこと。
 グリフィス奪還計画が進むなか、夜討ちを仕掛けられる「鷹の団」。そのとき、一年前に団を離脱した切り込み隊長が帰ってきた!

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夜の夢こそまこと

 その少年は地球に母の面影を求めた。母なる惑星でひとりの少女に想いを寄せたのは、彼女自身を好きになったのか、それとも父と母との出逢いをなぞったものか。その出逢いに少年は一時にせよ、己が背負う使命を忘れた。人類の希望を託さたことを自覚していたにもかかわらず。
「ねらわれた学園」を観た。
 光とともにこの世界に現れた少年は、なにかと異性の好意をひく存在。彼は、やがて自分の生きるべき場所へと帰る宿命を背負っている。少年が真に求めたのは絶対に手にすることのできないもの。
 その人は月より訪れ、月へと帰る、ひとときの来訪者。まさに「竹取物語」だ。

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うつし世は夢

「ねらわれた学園」公式サイト 「ねらわれた学園」を観た。
 来訪者は、ある春の日の未明に現れた。
 犬の散歩の途中、関ケンジは「ここが地球」との言葉を聞きつける。それが転校生、京極リョウイチとの出会いだった。
 少年と別れて散歩を続ける。海岸に出て砂浜を走っていると、サーフィンを楽しむ同級生と顔をあわせる。春河カホリ。彼女との甘い時間を過ごすために犬の散歩当番を早朝に切りかえたのだ。"甘い"というのはケンジの主観であり、カホリと話せるならケンジにとってたいていの状況は嬉しくも甘い時間となる。傍目には滑稽に映ったとしても。
 ケンジが次に会ったのは幼なじみ。隣に住む涼浦ナツキは、ケンジにとっては云わば天敵。否、天災。弱みを握られたら最後、どんな状況が出来するか火を見るより明らかだ。そしてケンジは迂闊にも彼女の前で粗相をさらしてしまう。
 これがその朝の出来事。このとき、事件は既に始まっていた。少年少女は変わるべくして変わる。

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のばした手の先にあるもの

「ベルセルク 黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略」公式サイト  一回の記事で語りきることのできなかった「ベルセルク 黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略」。
 本作は、白泉社のヤングアニマル誌に不定期ながらも二十年以上にわたって連載している、三浦健太郎の漫画「ベルセルク」の映画化作品第二弾である。
 隻眼の流浪の剣士が、その旅のなかで「使徒」と呼ばれる異形の怪物と死闘を繰り広げる内容だ。身の丈ほどもある大剣をふるう、「黒い剣士」ことガッツは宿敵との対決を求めて、あえて「使徒」に挑み続ける。
 ガッツの道行きは、果たさなければならない復讐と決着をつけなければならない己の宿命とを背負った旅である。
 今回映画化される三作品は、ガッツが呪われた宿命を背負う以前の物語。その救われることのない半生において、黄金時代と表してもよいほどに輝いていた青春時代を描いている。

 ミッドランド王国とチューダー帝国との間の百年戦争。終局の見えない戦況に著しい変化が生じたのは、ミッドランド王国軍に常勝不敗の傭兵集団が加わったことが理由だ。
 天才グリフィスが率いる「鷹の団」。正規軍随一の軍歴を持つ王弟ユリウスさえグリフィスの前では凡庸な軍人でしかなかったが、彼が暗殺されてからはこの新参者がミッドランド王国軍の屋台骨を支えていた。
 グリフィスと「鷹の団」の働きによって戦勝を重ねるミッドランド王国軍。そんな彼らの前に、難攻不落の代名詞ともなるドルドレイ城塞がたちはだかる。
 天然の要害を利用して建てられた城塞は高く堅く、駐留する兵員数は三万にのぼる。しかも帝国随一の武将と名高いボスコーン将軍が率いる紫犀聖騎士団は帝国最強と謳われている。
 この無敵の盾と最強の矛を有するドルドレイ攻略を、グリフィスは兵数五千の「鷹の団」のみで成し遂げると宣言する。

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鷹が眼下に見下ろす獲物

「ベルセルク 黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略」公式サイト 「ベルセルク 黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略」を観た。
 本作は、白泉社のヤングアニマル誌に不定期連載のドル箱作品、「ベルセルク」の同名映画化作品第二弾だ。ちなみに不定期連載の理由は、作者の三浦健太郎がアシスタントを使わずに原稿を仕上げているからだ。作者生存中に完結するのかしら。
 2012年、劇場における映画観賞の一本目は、完成披露試写会で観た本作の第一弾「ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵」だった。

 「我が青春はあの大空とともに」

 それから半年。"黄金時代"の終わりのはじまりを観るために映画館に足を運んだ。

 ミッドランド王国とチューダー帝国の百年に及ぶ戦争は、ひとりの天才軍人と彼の率いる軍団がミッドランドに与することで情勢に変化が訪れる。
 傭兵の世界では知らぬ者のない、グリフィスと「鷹の団」。戦場に生きる者にとってこの傭兵集団は、味方側につけば心強いが敵側にまわったなら戦慄とともにその名を聞くことになる、「戦場の死神」。常勝不敗と謳われる「鷹の団」がミッドランド王国に加勢した。
 戦果を上げる「鷹の団」と比してミッドランド王国正規軍は精彩を欠くばかり。王弟ユリウスが暗殺されてからは抜きん出た軍才を持つ者はおらず、国王のグリフィスに対する信任はいよいよ厚くなるばかり。
 天然の要衝に築かれた城塞ドルドレイ。それはミッドランドが百年を費やしてついぞ落とせない、チューダー帝国の防衛線の要。三方を峻険たる山に囲まれ、攻めるは城塞の前面からのみ。その城塞も高さと堅さを誇り、一兵すら壁を乗り越えられない。攻城戦に手を焼いていると、帝国最強の紫犀聖騎士団の突撃を食らう。
 ドルドレイを攻略することはミッドランド王国百年の悲願。チューダー帝国にとっては巨大な楔を打ちつけられることになる。
 ここまでは「鷹の団」の活躍もあって快進撃を続けてきたが、難攻不落のドルドレイを前に軍議は紛糾する。これを機にドルドレイを一気呵成に攻略すべしという声のある一方で、被害を拡大せぬよう長期的な展望に立って攻略すべしという慎重論も。
 兵力と戦費とを秤にかける議論の続くなか、国王から意見を求められたグリフィスは一言。
「御命令とあらば」
 かくして、兵員約五千の「鷹の団」が三万もの兵力を擁するドルドレイ攻略に挑む。

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彼方からの手紙

「ももへの手紙」公式サイト  よみうりホールにて催された試写会で「ももへの手紙」を観た。
 アニメーション製作スタジオはProduction I.Gである。監督の沖浦啓之は「人狼 JIN-ROH」を代表作に持ち、その「人狼」の成功があるだけに本作への期待は高い。主人公の声を美山加恋、その母親を優香が演じ、"見守り組"の馬鹿トリオを西田敏行、山寺宏一、チョーの芸達者が固めるという布陣。

 宮浦ももは小学六年生。ももは父親を亡くしたばかり。この夏から母親の親戚筋を頼って瀬戸内は汐島に住むこととなった。
 この島にはももが赤ん坊の頃に連れて来られたことがあるらしいけれど、当人はそのときのことなんか当然覚えてない。久しぶりの再会を喜ぶ母親や親戚には悪いけど、身内といわれても他人も同然だ。
 東京とは大きく異なる生活環境に囲まれ、友人をはじめとする人間関係は白紙となり、頼るべき母親は家を留守にしがち。
 この土地でももが出会ったのは三体の妖怪だった。

 本作を喩えるならば、「思いのほか潤沢な予算を与えられて浮かれた料理人が、アレもコレもと食材を買い集めるも、その一つひとつを料理しきれていない」である。
 面白く展開させられる設定やガジェットが数々用意されているも、「そういう設定やガジェットがあるものならば当然このような展開になるだろう」との予想をことごとく覆す展開を迎える。観客の予想を裏切る展開。そのこと自体は悪いことではない。予想を上回る展開なら大歓迎だ。しかし、本作においてこのような幸せな裏切りはない。いくらでもふくらませられる要素が完全には活かされずに終わっているのが散見されて、なんとまあ勿体ないことか。
 こんな風に、本作を批判しようと思うならそれをするだけの要素をいくらでも挙げられる。ただし、そんなことをしたところで本作の瑕疵が消えるわけではないので、いちいち取り上げることはしないけれど。いや、たぶん。

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我が青春はあの大空とともに

「ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵」公式サイト 「ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵」を観た。
 白泉社はヤングアニマルに不定期連載中、三浦健太郎による日本ダークファンタジーの金字塔である「ベルセルク」が原作。
 また、「ベルセルク」は日本テレビ系列で深夜、「剣風伝奇ベルセルク」のタイトルで放映していた。このテレビアニメ化は、深夜とは云え地上波で夥しいほどの流血場面を真っ向から描いたとあって、国内外を問わず広く好評を博した。このときは原作における"蝕"までをアニメ化した。その完成度の高さから、"蝕"以降のアニメ化を待つファンの声は大きい。

 冒頭に攻城戦があり、その模様がどうにも心奮い立たせてくれる。この場面で一介の傭兵にすぎないガッツが「三十人斬り」で知られるパズーソを斃し、その様子をグリフィス以下「鷹の団」の面々が眺める。ここに彼らの縁は繋がって、戦の後に多額の報酬を受け取ったガッツを団の一部の跳ねっ返りが襲う。馬上の敵を多数討ち取るガッツに隊長格のキャスカが挑むも、膂力に勝る相手の勢いに対して劣勢にまわらざるを得ない。そこに「鷹の団」団長のグリフィスが現れて、一撃でガッツを倒す。
 グリフィスとの決闘に敗れて、ガッツは「鷹の団」に入る。それから三年後、「鷹の団」は戦場では誰ひとりとして知らぬ者のない戦闘集団となっていた。
 彼らはミッドランド王国に雇われており、戦場における目覚ましい活躍が国王に認められて、「鷹の団」は正規軍として召し抱えられ、先陣の栄誉を賜るまでになる。いくら戦巧者とはいえ平民出の傭兵上がりが急激な出世をするのを、家臣の中には面白く思わない者も存在して。
 ある日の攻城戦。勝ち戦は決まったが部下が掃討に手間取っているのを不審に思い、ガッツは城内をひとり進む。ガッツ隊の帰投に遅れが生じ、グリフィスは増援に向かう。この城には伝説の軍人、「不死のゾッド」が与しているという噂がある。ゾッドは、もう二百年の昔からその勇名が伝わる強者だ。実在するとは思えないが、念のために加勢に行こう。
 ガッツが斬りつけた相手は見る間に巨大化し、牛の角と獅子の頭を持ち、全身を黒い毛に覆われた怪物へと変化した。人語を解し、また語り、ガッツとの闘いを歓ぶその存在こそ、「不死者ゾッド」の正体だ。この異常事態に防戦一方のガッツだが、そこに救援に現れたのはグリフィスだ。自分に手傷を負わせられる人間に二人も出会えた歓喜に猛るゾッド。二対一とはいえ怪物相手に劣勢にまわるガッツとグリフィス。柱に叩きつけられたグリフィスにゾッドが止めの一撃を入れる寸前、グリフィスの首元から彼がいつも下げているベヘリットが。それを見た途端、ゾッドの動きが止まる。なぜ真紅のベヘリットをこの者が? 何に思い至ったのか、ゾッドは哄笑すると翼を生やして飛び去った。謎の言葉を残して。
 新参者の栄達を面白く思わない王弟は狩りに乗じてグリフィスを亡き者にしようと画策するが。

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