刑事コロンボ Archive

脱密室宣言!

 最近、自分のツイートを読み返す機会があって、「刑事コロンボ 死者の身代金」を観た際のツイートに、改めて自分の記憶力の無さを気付かされた。
 当のツイートでは「本作は冒頭から展開する偽装に目が向きがちだけど、キモは"密室"からの"消失"なんだよね。で、この"密室"が不完全なところに犯罪としての凄みがある。これがあるために"密室"が密室として捉えられず、"誘拐犯"を生む」と、レスリー・ウィリアムズの身代金受け渡しの欺瞞を"不完全な密室"であるが故に有効だと指摘している。ところが「死者の身代金」を取り上げた記事では、それに触れていない。すっかり忘れてしまっていたわけだ。これには自分でも驚いた。どんだけ鳥頭なんだ、と。
 改めて声高らかに叫ぶ。「刑事コロンボ 死者の身代金」は、身代金受け渡しの偽装トリックが面白い!

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炎のバックハンドブロー

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 ブリマーはロサンゼルスで探偵事務所を営んでいる。多くの所員を抱え、それは数だけでなく質の高さを誇り、設備とシステムはロサンゼルス随一と自負している。
 新聞界の大立者、アーサー・ケニカットから依頼を受けて、ブリマーは依頼人の年若い妻の素行調査をした。結果はクロ。ゴルフのインストラクターとの浮気が判明。しかし、ブリマーはこの調査結果をそのまま依頼人に明かさない。
 調査結果を受け取りにケニカットがブリマーのオフィスを訪れたとき、ブリマーは隣室にケニカット夫人を呼び寄せていた。そこでケニカットに対して細君に浮気の事実などなかったと報告するのを、ケニカット夫人に聞かせる。
 それぞれ違う意味で安心する夫と妻。ケニカットは晴れやかな気分でオフィスを後にしたが、ケニカット夫人は混乱のなか退出する。ケニカット夫人はブリマーからある要請を受けたのだ。
 ケニカットはその地位から、彼のもとには精度と価値の高い情報が集まる。ブリマーのような職業にとって、情報こそが飯の種である。ブリマーは浮気の事実を明かされたくなければ、ケニカットのもとに集まる情報をその一端でもかまわないから自分に流してほしいとケニカット夫人に要請する。

 ブリマーが帰宅すると、思わぬ客が姿を現す。ケニカット夫人だ。ケニカットのビーチハウスはここから三キロほどの所にあり、ケニカット夫人はそこから海岸を歩いてきたという。
 ケニカット夫人が現れた理由、それは昼間のブリマーの提案について返答するため。答えは「No!」だ。自分の不貞を隠すためにスパイを働くなんてできない。ブリマーの申し出を断ることで浮気の事実を夫に明かされるというなら、それには及ばない。自分で夫に打ち明ける。ただし、ブリマーが自分に対して脅迫めいた提案をしたことも云い添える。一度は事実に反した調査報告をしたブリマーと私と、夫はどちらを信用するかしら?
 新聞王のもとには精度と価値の高い情報が集まるが、同時にそれらを有効に扱う術を心得てもいる。一旦、ケニカットに睨まれたら、情報の物量作戦で潰されてしまう!
 探偵社をここまでするのにどれほどの苦労があったと思っているんだ! たかが浮気女風情が良き妻を気取って夫に注進か? ふざけるな! そんなことで潰されるなんて冗談じゃない!
 怒りに駆られたブリマーは、思わず手を出してしまう。ケニカット夫人は仰向けに倒れて後頭部を強打。そのまま帰らぬ人となった。
 とんでもないことになった。もはや脅迫どころの話ではなくなった。殺人を犯してしまった。殺すつもりはなかった。ただカッとなって体が動いただけ。そうは云っても、殺意を否認してそれが認められたところで傷害致死だ。破滅は免れない。
 こんな馬鹿なことですべてを失ってたまるか!
 しばしの沈思黙考の後、ブリマーは隠蔽工作を始めた。

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泥沼離婚劇

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 レギュラー化が決まって第一段の本作は、監督がスティーヴン・スピルバーグ。この後、「激突!」「ジョーズ」「未知との遭遇」と話題作を連発する彼が、「刑事コロンボ」をどう料理したのか、映画ファンにとっても楽しみな作品となっている。

 ジム・フェリスとケン・フランクリンはコンビを組んでミステリ作品を発表している。コンビで書いていると云っても、執筆するのはジムで、ケンは専ら渉外を担当しているにすぎない。役割分担の不均衡は、それぞれが自分に合った仕事に専念できるのだから、この点に問題はない。問題は、それとは別の理由でジムがコンビを解消すると云いだしたことだ。
 ミステリを否定するわけではないが、次はシリアスなものを書きたい。ジムの主張は作家のうちなる欲求であり、それ自体に文句はないが、文章を書けないケンにとってジムの主張を受け入れることは収入減を意味する。死活問題だ。いや、死活問題どころか、プライドがひどく傷付くことになる。これは避けたい。
 コンビ解消の後、ジムは順調に作品を発表し続けるのにケンが鳴かず飛ばずでは、今までの読者もいずれ気付くだろう。実はケンは執筆していなかったことを。スタイリストであるケンとしては、たとえそれが紛れもない事実であっても、自分が辱められるようなことを知られるのは避けなければならない。絶対に嫌だ。
 また、ジムがこれから単独で書く本の印税は、当然のようにケンの懐には入らない。今後、ケンが自力で原稿を書くことはないだろう。よしんばケンが独力で小説を書いたとしても、下手な作品を物して笑い物になるのは、彼のプライドが許さない。ケンの収入源は既刊分の印税、しかもケンの取り分のみとなる。コンビ解消後はインタビューの依頼が入って、雀の涙ほどのギャラを手にするだろう。そんなもので食いつなぐのはケンのプライドが許さない。あくせく働くことも嫌だ。
 書けない作家との辱めを受けて、収入は激減する。ジムの独立がこのまま実現したら、ケンは地獄の日々を生きることになる。ジムが今まで通りメルヴィル夫人シリーズを書き続けるのが最良だが、彼自身が二つの異なるジャンルを並行して書けないと云う。不器用な自分には無理だ、と。それならばジムがメルヴィル夫人シリーズをこれ以上書かない事態を想定して、次善の策を用意しておくべきだろう。
 たとえばジム・フェリスが死ぬとする。ジムが死ねば、二人でここまで育てたメルヴィル夫人をジムと共に葬るとして、ケンがシリーズを書き続けない、尤もらしい理由となる。また、ケンとジムは互いを受取人とする高額な保険に加入している。この保険金が入れば、それ以降の実入りの少なさなんて気にならない。
 ジムの死はケンの問題を解決するのだから、ジムは死ななければならない。そのうえジムの死は、それによってケンに保険金がおりなければ意味がないので、ジムは確実に保険のおりる死に方をしなければならない。
 そうだ。ジムを殺してしまおう!

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バンザイアタック

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 前作「殺人処方箋」でのコロンボは、勿論ピーター・フォークが演じたのだけれど、トレードマークのレインコートもモジャモジャ頭でもなく、むしろスマートにすら感じさせた。葉巻をふかしたりペンを失くしたりと、コロンボらしい特徴はそなえているものの、威圧感さえ漂わせる姿はコロンボのイメージとして一般的に持たれているそれとは大きく隔たっている。
 本作のコロンボは、「これこそがコロンボだよ!」と誰もが認める外見と所作を持つ。雨のあまり降らないロサンゼルスでよれよれのレインコートを着て、櫛を通したとは思われない髪型。好物はチリで、本人曰くなんでもこなす親戚がいる。
 私たちのコロンボの完成だ。

 やり手の女性弁護士であるレスリー・ウィリアムズは法曹界で確固たる地位を築くため、これまで攻めの一手で邁進してきた。それはこれからも変わらない。栄達の道を邪魔する者は誰であっても許さない。容赦しない。
 年齢差のある夫は大物弁護士だ。先妻が亡くなったのを幸いに、彼に取り入って結婚。おかげで事務所の共同経営者に名を連ねることができた。担当できる案件も大きなものになり、レスリーの上昇志向はいよいよ満足させられるのだった。
 いや、まだだ。まだ足りない。
 本当ならば手が届かないくらい若くて美しくて聡明な女が妻になってやったというのに、愛情を感じられないだのとつまらないことで離婚しようとする夫。私は妻になってやったのだから、その報酬を支払うのは当然だろう。金を寄越せと云っているのではない。金が欲しくないわけではないが、大事なのは今の地位と大物弁護士のパートナーという肩書き。これさえあれば、あとは自分で手に入れてみせる。いくらだって儲けてみせる。それを今になって支払い拒否、契約解除なんて、虫が良すぎる!
 もう殺すしかない。

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嚆矢

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 12月に発売予定のコンプリートBOXだが、その特典が凄いと評判だ。初回生産分限定の特典に、「殺人処方箋」の日本語吹替台本復刻版を封入とある。私も持っているDVD版ではジーン・バリーの声を若山弦蔵が担当。けれど、もともとは瑳川哲朗が声を当てていた。その最初の吹き替え版の台本を特典として付けるのだから、マニア垂涎である。瑳川哲朗版の音声も14分だが収録されているようだし。
 その他にも「策謀の結末」小池朝雄版等々、"Buy or Die"の逸品となっている。だいたいがBlu-ray化からして世界初とのこと。これで71400円でなければ、もっと安ければ今すぐ予約するのに。

 精神科医レイ・フレミングは妻キャロルの殺害を目論む。キャロルの魅力を挙げるとキリがないが、最も惹かれたところは彼女が資産家の娘であるということ。ただし、最近は行動を束縛するのが甚だしく、ちょっとした遊びに目くじらを立てる。離婚を匂わすようでは可愛げないと云うほかはない。
 妻と円満に別れるのも悪くない。むしろ別れたいくらいだが、それによって自由に使える金やオフィスを失うのは耐えられない。妻とは別れたい、財産は手にしたい。となると、死別するしかないではないか。
 フレミングは、愛人の大部屋女優であるジョーン・ハドソンを計画に引き入れて、妻の殺害を実行する。
 死亡推定時刻に錯誤を持たせる計画は概ね成功し、フレミングは完璧なアリバイを手に入れる。
 自分を拘束する最大の枷から解き放たれ、内心意気揚々として旅行から帰宅したフレミング。彼を待っていたのは、ロサンゼルス市警察本部殺人課のコロンボと、妻の生存の報せだった。

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「This Old Man」を聴きながら

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 ミステリドラマの金字塔と云えば、これはもう「刑事コロンボ」である。「殺人処方箋」からの旧シリーズ全45話は珠玉の逸品ぞろい。「刑事コロンボ」を観ずして結構と云うなかれ、いや、ミステリ好きを標榜するなかれ。とまあ、これくらい云い切っちゃってもかまわないですよ!
「刑事コロンボ」の何が面白いのかと云うと、倒叙(倒述)スタイルをとることで、探偵と犯人との間の対決構造を鮮明に打ち出したこと。まさにエポックメイキング。ミステリにおける、ひとつの"事件"なのだ!
 今年2011年は、6月にコロンボを演じていたピーター・フォークが亡くなった。年末には、旧シリーズと新シリーズを合わせた全69話を完全収録したBlu-rayのBOXが発売される。良くも悪くも「刑事コロンボ」にとって記念の年なのだ。コンプリートBOXは欲しいけれど、定価71400円は高い。高いよ。旧シリーズのDVD-BOXを持っているだけに二の足踏んじゃう。

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