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地球の歩き方 アメコミイベント編

 さて、アメリカのコミックブックについて語る記事の第8回となる。
 今回はこれまでと趣向を変えて、この週末に開催を控える「海外マンガフェスタ2015」とその前日に催されるライブペインティング・イベントに先駆けて、アメコミのイベントについて述べてみる。
 とはいえ、私自身が海外マンガフェスタに参加するのは今年で三回目となる。そして、それ以外のアメコミイベントに参加した経験は無い。申すまでもなく、アメコミイベントに関しましても初心者なのであります。
 こういう事情なので、他人様に偉そうに蘊蓄を垂れられるほどに詳しいわけではない。だから、これまでの経験とこのたび参加するにあたって掻き集めた知識を総動員して、この記事を書き上げる所存。
 さあ、どうなりますことやら!

amazon:[大型本] ブラックサッド 赤い魂 (EURO MANGA COLLECTION)  私がアメコミの翻訳本を改めて読みはじめたのが二年前。『バットマン:梟の法廷』と『梟の街』、『バットマン:ハッシュ 完全版』と『梟の夜』を読んだのは、2013年の9月が終わる頃だった。
 アメコミ本は安くない買い物となるためしばらく買い控えていたが、その後は「ニューアベンジャーズ」へ行ったり「デス・イン・ザ・ファミリー」に挑んだりと、アメコミ読書体験を積み重ねてゆき、このジャンルへの興味を着実に大きなものとしていった。
 そこで目に入ったのか耳にしたのか今となっては確かなことを忘れてしまったが、「海外マンガフェスタ」なるイベントの開催を知ったわけだ。
 会場は台場の東京国際展示場、通称「東京ビッグサイト」。世界最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット」の会場として知られる(「見ろ。人がゴミのようだ!」を再現するのでお馴染み)、あの東京ビッグサイトだ。人混み嫌いの私にとって足を踏み入れたい場所ではなかったが、そうは言ってもコミケに行くわけでもないし、よくよく見ると創作系同人誌の即売会であるコミティアの一部軒先を借りての開催であるようだから、そうムチャクチャ混雑するほどでもなかろう。このように思ったわけだ。
 高をくくって馬鹿を見ることになるのは世の習い。2013年10月20日の東京ビッグサイトは、さすがにコミケほどの末世的な混雑ではないけれど、コミティアもこれでなかなか馬鹿にできない人気ぶりで。
 だからウンザリしたのだ。それでも、せっかく来たのだから、と足を進める。
 会場の一隅。ステージが設えてあって壇上ではトークショーが。アディ・グラノフ? 誰だそりゃ? ライブドローイングにサイン会? 興味無いなあ。
 今からあの日の自分を殴りに行きたいぜド畜生! あのアディ・グラノフである。サインを頂戴する千載一遇のチャンスだった!
 大失敗である。人生の痛恨事である。私は単なる傍観者としてそこに立っていた。ただそれだけ。カエサルなら「来た見た負けた、だな?」と嘲笑うところだ。
 予備知識なく、楽しもうとの気概もなく、何かを得ようとか取りこぼすかもしれないとかいう葛藤もなく、ただ「海外マンガフェスタに行った」との事実だけを記憶に留めて、私の無残な初参加は終わった。
 ちなみに、この海外マンガフェスタは文字通り海外のマンガが対象だ。だからアメリカンコミックばかりでなく、フランスのバンド・デシネ(BD)は勿論のこと、世界中からマンガ作品や作家がここに集う。
 残念なことにBDに関してもさして興味を持ってなかった私は、しかし会場で顔を合わせた知人に勧められてフアンホ・ガルニドのサイン会に参加した。これがこの日における数少ない収穫のひとつだ。たいして興味のなかったBD作品にもかかわらずサイン会の列に並んだのは、展示の原稿があまりにも美しかったのが理由だ。発作的にサインを欲したのだ。
 イベントとは、積極的に何かを為そう、何かを手に入れようと努力しない者には、何も齎さない。参加者とは、「自らイベントに飛び込んで、そのなかで楽しみを見つけ、その時間と空間とを味わい尽くす」者のことをいう。料金に見合ったサービスを受容するだけの「お客様」のことではない。
 私自身はお客様意識でいたつもりはないが、さりとて参加者でもなかった。ただの傍観者だった。その証拠に、この帰り道、悔しいとも思わない自分がいた。大きな判型の『ブラックサッド 赤い魂』を持ち帰るのが難儀だな、と思ったくらいだ。

amazon:[大型本] ICONS:DCコミックス&ワイルドストーム アート・オブ・ジム・リー  翌年、つまりは昨年の2014年になると状況が変わる。状況というより私のなかのアメコミ熱がどんどん上昇していた。だから、「こいつァ今年も行かねばなるまい!」と勇んで参加した。
 そう。このときは"参加"と称するに相応しい行動の数々が見られただろう。たとえばそれは開場直後の競歩だ。否、むしろ「強歩」と表するのが妥当なほどの歩きっぷり。これは無理からぬところで、なぜならある人物のサイン会整理券が先着限定で配られるから! あれは50人分だったか、今となっては忘れてしまったが、これに私は命を懸けたのだ。
 その人物とは誰あろうジム・リーである。稀代のアメコミ・アーティストにして現在はDCのCo-Publisherだ。ちなみに『バットマン:ハッシュ 完全版』のペンシラーはジム・リー氏である。
 催されたのは、氏の画集『ICONS』購入者対象のサイン会。海外マンガフェスタ前夜にあったという、ジム・リー氏を迎えてのライブペインティングのイベントには、この情報をつかむのが遅くて参加できず、悔しい思いを胸中でたぎらせていたところにこのニュースだ。「行かねば!」の一念である。
 この頃にはグレッグ・カプロとアレックス・ロスばかりではなく、幾人かのお気に入りアーティストを見出していた。ジム・リー氏もそのひとり。もうね、多少アクが強かろうとバタ臭かろうと免疫がついていた。コテコテのマッチョを前にしても動じない胆力を手に入れていたのだ。
 2014年11月23日。会場はやはり東京ビッグサイト。開場後、首尾良く整理券を入手し、心のなかで「我が生涯に一片の悔い無し!」のあのポーズ。かくして即席の世紀末覇王は会場を闊歩する。
 イヤイヤイヤ、のんびりなんてしてられない! 次に向かうはギャリー・ガストニーのブース。氏はインドネシアのアメコミ・アーティストだ。

 海外マンガフェスタでは小学館集英社プロダクションやヴィレッジブックスのようなアメコミ翻訳本の出版社等が出展する企業ブースのほかに、海外のコミコン(Comic-Con)がそうであるように、アーティスト・アレイが設けられる。
 この「アーティスト・アレイ(Artist Alley)」とは、「アーティストが個人的に運営する出店」と捉えるのが適当だろうか。コミケの企業ブースに対する同人ブースと同じようなもの、かな?
 同人サークルが自ら用意した頒布物を販売し、持ち込まれたスケッチブックにリクエストに応じて絵を描くように、アメコミ・アーティストも自らの画集やアートプリントポスターを販売し、そこにサインを入れたりコミッションを受けたりする。
 ファンにとっては憧れのアーティストからサインを、スケッチを、コミッションを、それぞれ手に入れる千載一遇のチャンス。アーティストにとっては自分を支えてくれるファンの生の声を聞くチャンスだ。いずれの立場にとっても交流の場として機能する。
 というわけでギャリー・ガストニー氏は、他のアーティストがそうであるように、アーティストアレイで出展していた。
 このブース、ゴッサムの麗人たちを描いたプリントが出迎えてくれて、それらが実に魅力的なものだから大人気! 長蛇の列ができるのは一目瞭然だった。事前にプリントを買うことを考えておらず、折るのも破るのも許されないそれらを無事に持ち帰る算段無しに来てしまったので、涙をのんでこれらの購入を諦める。『ICONS』の存在が大きすぎて(その判型とページ数も、購入金額も)、更なる散財に歯止めがかかったのは、紛れもない事実だ。
 それでもこのチャンスをふいにするのが嫌で、スケッチブックを購入し、それにキャットウーマンを描いてもらった! またもや心のなかのラオウが「我が生涯に一片の悔い無し!」と!

 ふと隣合うブースを見ると、ひとりの男性が絵を描いている。その絵は、否、絵柄はストライクゾーンのド真ん中を貫いて。お顔までは存じませんが、もしやアナタはサミ・バスリ?
 その男性はインドネシアのアメコミ・アーティスト、「ペン先で"かわいいは正義"を実現する男」サミ・バスリ氏その人だ! こちらも何種類かのプリントを売っているようだがそれでも退屈しているのか、絵を描くことで無聊を慰めているようだ。
 違う!
 サミ・バスリ氏は注文を受けて絵を描いているのだ! オイオイオイオイ、サミ・バスリに好きなキャラクターを描いてもらえるの?!
 アメコミイベントの初心者であるが故に確かなことは何もわからず、仲介をなさっている方にアウアウと話しかける。アメコミイベントに特有のマナーだとかローカルルールだとかがあるのでは、と躊躇するも一瞬だ。これを逃せば次の機会は無いかもしれない。
 一期一会のバンザイアタックで、「既に何名かのオーダーを受けているので完成までに時間を要するけど大丈夫?」との返答をもらう。
 大丈夫です。夜まで待ちます!
 というわけで私の人生初となるコミッションは、サミ・バスリ氏が受けてくれた。このときは知らなかったが、イベント当日にオーダーから受け取りまで成されるコミッションを「当日コミッション」という。

 ちょっと待て。そもそも「コミッション」とは?

 実はここで「コミッションとは何か」を説明する文章を書いたのだけれど、それが長くなりすぎてアメコミイベントについて語る記事なのに「サテヒデオ、コミッションをかく語りき」の巻となってしまう。これではいけないので、別にコミッションを語る機会を設けることにする。
 とりあえずは海外マンガフェスタ2014について続ける。

 とはいえ、語るべき事柄はそれほど多くない。トークショー等のイベント企画については、その内容は公式サイトで公開されている。そちらを読んでいただくと、当日の様子が窺えるだろう。また、公式サイトのほかにも個人のブログ等、詳細なレポートをなさっている方がいるので、そちらの記事を読まれることをオススメする。
 ジム・リー氏のサイン会で無事に肉筆を頂戴し、サミ・バスリ氏からコミッションを受け取った。「我が生涯に一片の悔い無し!」の出血大サービスである。
 かくして私の海外マンガフェスタ2014は終わった。アメコミ歴二年目の初心者、生来の小心者にとっては上出来といえよう(採点の基準はガバガバだけど)。
 そして今年、2015年。この週末はいよいよ海外マンガフェスタ2015だ。前日はアメコミ・アーティストを迎えてのライブペインティングにトークショーのイベントがある。春からコチラずっと楽しみに生きてきた二日間が目前だ。
 たぶん鼻血出る。否、きっと鼻血出す!

 いつにも増して参考にならない内容となってしまったが、実際にイベントへ足を運ぶ端緒となってくれたなら嬉しい。人生における「たった一度だけ訪れる特別な一日」と出会えることだろう。
 何事も一期一会だね(無理矢理な締め)。

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