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南北戦争への道

amazon:[Blu-ray] アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド]  7月4日。あるハリウッド映画が封切られた。
 ディズニー傘下の製作会社は、親会社のアイコンになぞらえて主演俳優をミッキーマウスと表する。
 その俳優こそ誰あろうロバート・ダウニーJr.だ。この男が演じるのはアンソニー・スターク。Tシャツのセンスはさておいて、地球上で十本の指に入る天才科学者だ。
 ミッキーマウスに愉快で魅力的な仲間たちが数多くいるように、ロバートの共演者も豪華だ。豪華なのは俳優陣なのか、それとも彼らが演じるキャラクターの顔ぶれか。
 クリス・エヴァンスはスティーブ・ロジャース、クリス・ヘムズワースはソー・オーディンソン、マーク・ラファロはブルース・バナーをそれぞれ演じている。
 そして"神"ならぬ身を酷使するクリント・バートンとナターシャ・ロマノフを演じるのは、ジェレミー・レナーとスカーレット・ヨハンソン。
 サミュエル・L・ジャクソンとポール・ベタニーも忘れちゃいけない。
 本作のステラン・スカルスガルドはイカレちゃいないし裸にならない!
 また、先行する作品で顔見せ程度に存在をアピールしたワンダとピエトロのマキシモフ姉弟を演じたエリザベス・オルセンとアーロン・テイラー=ジョンソンが、本格的に物語に絡んで重要な役どころをこなす。
 アメリカ合衆国の記念すべき建国の日。
 この日、日本で公開されたのは、「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」だ。

 本作は公開してから間もない作品だ。ここに詳細を明かしてネタを割ることの弊害はあるだろう。
 それでも今現在において語りたいことがある。これは私の事情であって訪問者の「作品を観てないから読みたくない!」という心情も理解できる。
 私自身、予告映像から特集記事から何から何までネタを割ってそうなものは、どの媒体であってもシャットアウトして本作に臨んだ。おかげで楽しく観られた実体験があるわけで。
 語りたい私と読みたくない訪問者。平和裡に解決するには「読みたくない」訪問者には通り過ぎていただくのが一番だ(せっかくここまで辿り着いてくださったのだから、いろいろと読んでいっていただきたいのが本音だけれど)。
 というわけで、まだ「読みたくない」という向きは「戻る」をクリックをお願いします!

「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」公式サイト  7月4日。あるハリウッド映画が封切られた。
 さて、本作「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」は様々な要素がみっしり詰まった娯楽巨編であることは言を俟たない。
 本作のヴィランであるウルトロンを取り上げても、進化への渇望と父親殺しの執着はキャラクターの個性と骨絡みであり、彼を語るうえで避けられないテーマだ。
 その"父親"たるトニー・スタークは、悪夢の見せたる未来像から逃れるために己の成したるところを為すべく邁進するが、かつて軍事産業の一翼を担った頃の返り血を浴びて、今さらながらに己の罪業を思い知る。
 トニーと対立関係に立つスティーブ・ロジャースは、時代の孤児としての境遇を思い、殊更に死に場所を求めるような姿勢を仲間に強いて。
 家族を持つ者は私人と公人との間で悩む。古傷を抉られた者は、やはり傷を負い絶えず血を流す者との間に特別な絆を結ぼうとする。
 世界の守護者たる覚悟において一日の長がある神は、滅びの幻視に危機感を募らせる。
 特別な力を持たない人と、人を超越した"神"との葛藤。
 アベンジャーズ・タワーと教会の対比も、"神"の御座と布教の本拠といった、多神教と一神教の対決構造となっていて面白い。
 いやホント「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」は面白いのだ!
 前作が顔見世興行として大成功をおさめたものだから、そして納得の完成度だったから、それと比較して期待外れと思われるかもしれないけれど、内容としては盛り沢山でいて御土産付き。食いしん坊が「もう食べられないヨ」と降参するほどのボリュームだ。
 面白いけど、面白いからこそ語りたいことが次から次へ湧いてきて、もう収拾つかないンだよね。
 とりあえず今回はトニー・スタークとスティーブ・ロジャースとの対立について語りたい。来るべきシビル・ウォーの前哨戦となった対立について。
 とりあえず今回はそれで。

 事の発端は"魔女"の見せた悪夢だ。
 ワンダ・マキシモフは「ロキの杖」を用いた人体実験によってサイコキネシスと精神感応の能力が引き出された。
 ロキの杖の宝玉は精密なコンピュータとなっており、その核たるマインド・ストーンは実は「無限の石」のひとつ。
 ロキが杖を用いてクリント・バートンやエリック・セルヴィグを"洗脳"したように、ワンダもまた精神感応能力をもってアベンジャーズの面々に"悪夢"を見せた。
 個々の"悪夢"は、地上最強チームのメンバーそれぞれの"恐怖心"に根ざしており、つまりは精神的な弱点をダイレクトに攻撃されて、彼らは一時的に恐慌に陥る。
 パニックから立ち直るも、脳裏に刻まれた"悪夢"からは逃げられない。

amazon:[Blu-ray] アイアンマン3 3Dスーパー・セット(2枚組/デジタルコピー付き)  ニューヨーク決戦の後、トニー・スタークはPTSDによる苦悩の日々を送った。
 マンハッタン島を守るために自ら決断したこととはいえ、宇宙空間に放り出された実体験は、強烈な孤独と死への恐怖をトニーの心に刻みつけた。
 眠れぬ夜があった。スーツを開発することに没頭して一時でも"それ"を忘れようとした。果敢ない抵抗ではあったのだが。
 これについてはアルドリッチ・キリアン率いるA.I.M.との闘争の過程において解決することに成功した。
 テロ組織「テンリングス」を装ったA.I.M.の急襲により、多くを失ったトニーが己を顧みて至ったのは、「自分はアイアンマンである」という一念。それは科学者としての矜持である。
 しかし、トニーの胸に巣食う恐怖は新たな姿を得て、実行力に優る天才科学者を追い詰める。

 スティーブは戦後を生きてきたわけではない。
 超人兵士となってからというもの、慰安と国債の販売促進を担うピエロを演じた期間を除いて、彼は数々の戦場でヒドラと戦い、レッドスカルとの最終決戦で北極海に没してから、七十年を経て蘇った経緯がある。
 時代と社会からひとり取り残されて、本当なら戦後に訪れるはずだった幸せとも切り離されて、超人兵士はまだ戦っている。
 スティーブ・ロジャースにとって現代社会への復帰とは戦場への復帰と同義だ。
 それをアメリカ合衆国の名を冠するヒーロー、「キャプテン・アメリカ」としての自分の使命と受けとめて、平和のうちにも「常在戦場」を生きる。
 スティーブの覚悟は熾烈であるが故に他者と相容れないことが少なくない。

 トニーはアベンジャーズのメンバーを含めて最大公約数を救うための枠組みを作るつもりだった。
 スティーブは自分たちが平和のための人柱になるのはやむを得ないものと考え、犠牲が出るならばまず自分たちから、という心づもりがある。

 トニーにとって科学は自らの血肉という感覚がある。実際、アークリアクターが肉体の一部だったわけで。
 科学は、それ自体に罪は無い。扱う者次第なのだ。能力においても責任においても、それを扱うに相応しかるべき人物を正しい方法で選び、彼もしくは彼女に託す。
 しかし、万が一のためにバックアップやリカバリーの用意はしておく。リスクは分散回避しなければならない。
 平和も同じだ。
 今はアベンジャーズが宇宙的脅威に対する砦となっているが、その責任を担うのがアベンジャーズばかりであって良いわけがない。
 アベンジャーズのメンバーに関して能力に不安があるわけでも無責任というわけでもない。選択肢がアベンジャーズただひとつしかないことが問題なのだ。
 トニーは、それを公言するほどお人好しではないけれど、愛する者を喪いそれでもひとり生き残ったなら、そんな自分を決して赦さないだろう。そんな未来を招来しないためのシステム作りを、たとえ独善の誹りを受けようとも、成し遂げるだけの理念と実行力をこの天才科学者は持っている。
 だから「ウルトロン計画」はトニー・スタークの「大切な仲間たちを死なせやしない!」という思いから生まれたものだ。
 平和を守るためだからといっても、人が死ぬ必要はない。

amazon:[Blu-ray] キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド]  スティーブは戦争を生きてきた。愛する者を、決して死なせたくはない人が死んでゆくのを散々その目にしてきた。
 そして科学技術が悪用されてきたことも見てきた。
 科学は、それが最新鋭であればあるほど悪用を企む者を惹きつける。スティーブ自身、超人兵士計画によって生み出された、アメリカ合衆国初のアベンジャーだ。
 そしてヒドラ。レッドスカルことヨハン・シュミットにアーニム・ゾラ。時代は下ってアレクサンダー・ピアース。
 科学はたびたび人道を外れて用いられてきた。
 スティーブは実体験に照らしてそのように認識している。
 この認識が覆ることはないだろう。科学が齎した悲劇を多く見すぎている。恩人も親友も悲劇の当事者となってしまった。
 だから、重大な役割を担うべきは人間でなければならないのだ。科学技術の力を借りることになろうとも、最終的な判断は人が責任をもって下さなければならない。
 アベンジャーズは、その活動のなかでジャーヴィスの力を借りることもあるがそれはあくまでサポートの範囲で、個々のメンバーの行動もチーム全体の作戦も自分たちが決めている。
 地球が宇宙的脅威にさらされるというのなら、地球人類を超越した存在となった自分たちが防衛の役割を担わなくてどうする。他の誰が代わりを務められる?
 成すべきことを為す。それはつまり平和を守るために戦うということだが、そのために犠牲が出るのは仕方のないことだ。犠牲は最小限に食い止める努力をすべきだが、何かしらの犠牲が出るのは避けられない事態も多々ある。
 たとえその犠牲というのがかけがえのない仲間であっても、だからこそそれは無辜の市民であってはならない。犠牲となるのは、戦うことの覚悟を決めた自分たちのうちの誰かでなければならない。
 家族や安定といった寧日を氷の海に置き去りにした男の凄まじい覚悟である。
 だからスティーブは仲間を大切にする。ともに戦い、ともに死するかもしれない仲間だからこそ、かけがえのない絆のなかで秘密や騙しあうことがあってはならないと考える。

 トニーはスティーブの頭の固さに辟易するが、スティーブはトニーの独断専行に頭を悩ませる。
 科学者は語る。科学は人類に使役するもので、未来を切り拓く道具だ。古い人間は脅威ばかりを怖れるが、自分たちの日常生活も科学技術の恩恵に浴している。科学はそれをコントロールする人間次第だ。
 人体実験の被験者は語る。科学に善悪の区別はない。それこそが問題なのだ。善悪の評価なくして意思決定の責任が生まれようか。
 対立はなおも続く。
 進歩は、結果がどうあれその道を行くだけの価値がある。それがあったからこそ自分はスーパーヒーローに名を連ねることができた。
 身の丈にあった歩みこそが大事なのだ。人を超越してしまったからこそ彼ら一般人を置き去りにはできないことを、自分たちは胸に刻まねばならない。先を目指すと云うが、どこへ行くつもりだ?
 トニーとスティーブの思いはひとつ。「地球平和を守る」という点で両者ともに一致しているが、理念と信念との差異があまりにも大きい。
 これがアベンジャーズに、そして地球人類に危機を齎す。

 ブルース・バナーもソーも思いは同じだ。ただしトニーとスティーブとの間に違いがあるように、彼らにもそれぞれに抱えるものがある。

amazon:[Blu-ray] インクレディブル・ハルク  ブルース・バナーも天才の名を欲しいままにした科学者である。彼とトニーとの違いは、その研究によって得られた人生への影響の違いだ。トニーは死と再生の果てに英雄として迎えられたが、同じく死と再生の過程を経てブルースは怪物と恐れられるようになった。
 科学の齎す幸福と不幸とが合わせ鏡のように対照的に並んでいる。
 だからといって世界を逆恨みするすることなく平和を愛するのがブルース・バナーだ。ただし、その観点は特殊に過ぎて。
 ブルースの思い描く平和とは、自分のなかの怪物を目覚めさせないことだ。ブルースにとって、この世の混沌の最たるものが"ハルク"だ。
 そして最大の脅威も。
 ハルクの猛威を思えば、宇宙からの侵略者などたかが知れている。
 破壊者は外部から侵略するものではない。それは自分のなかに存在する。そして何人たりともそれを殺すのは叶わない。
 だから、ハルクと共存する道を模索するしかない。これは自分ひとりで向き合わなければならないとブルースは固く信じている。
 そう。自分ひとりの問題なのだ。

amazon:[Blu-ray] マイティ・ソー/ダーク・ワールド MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド]  ソーにとってミッドガルドはジェーン・フォスターの生きる世界だ。それがこの惑星を守る理由だったが、ここ最近は愛すべき仲間と友人も増えて。
 だからよりいっそうに守護神としての意識は強くなったのだが、一方で"弟"の尻拭いは使命のように脳裏にあって。
 ソー・オーディンソンに悩みは少ない。そんなものを戦場に持ち込んでも碌なことはない。
 問題は即座に解決し、その後に事に当たるべきだ。問題解決が自分の手に余るようなら他者の手を借りる。自分ひとりで何でもできると思い上がるほど幼くはない。
 他者に判断を委ねるときは黙って従う。それは苛烈なまでの覚悟をもってして。
 シンプルだが力強く地歩を固める。現実に即して行動を決める。これが戦場を生き抜いてきた戦神の強みである。
 ソーは父王オーディンから、「扱うに相応しい魂」の持ち主としてムジョルニアを与えられた。ムジョルニア自体が主を選ぶわけだが、その"判定"をソーは重視する。そして「洞察の泉」が齎した"託宣"も。
 天才科学者たちの決断は懐疑派から暴走と見做され、その開発行為を武力行使によって中断させられるところだったが、ソーは科学者たちの夢を後押しした。
 その結果としてこの世に生まれた生命は、ある奇跡を為した。いとも容易に。
 ソーは信じた。「洞察の泉」とムジョルニアを。それらが示した希望を。

 ハルクは科学が産み落とした怪物だ。ブルース・バナーは人の覚悟をもってしてこの怪物との共生に臨むが、そこには絶望しかない。
 トニーの理念は科学への信頼に基づいて楽観的だ。
 スティーブの信念は科学には懐疑的で人間への信仰に基づいて、だから悲観的だ。
 しかし、両者とも一面的な個性の持ち主ではない。トニーは実務家としての非情を併せ持ち、スティーブは古き良きアメリカの魂が人となりの根本にある。
 アスガルドに生きるソーにとって科学は魔法と同じく身近であり、ともに手に負えない代物だ。ただし、ジェーンやエリックのように正しく在る者が正しく使うことに文句はない。ロキは反面教師だ。

 トニー・スタークが掲げた平和維持計画は、ウルトロンという名のヴィランとなって人類を脅かした。
 しかし、ウルトロンという存在が脅かしたのは人類の存亡だけではない。アベンジャーズの意識の違いをも浮き彫りにして、チームの存続を危うくした。
 脅威は去り、しかし確執は過去のものとはならない。きちんと解消されないかぎりそこにわだかまる。
 ウルトロンが掲げた目的。その一端である「アベンジャーズを消去する」については、彼自身は成し得ぬまでも種を芽吹かせはした。事態は動き出している。
 更なる脅威が平和を脅かすとき、ヒーローはそれぞれに選択を迫られる。

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