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東京堂音頭

amazon:[Single, Maxi] 東京音頭  今年もやってきました。本格ミステリ大賞受賞記念イベント。
 本格ミステリ大賞の選考と授賞は今年で第14回を数えるが、記念イベントはここ数年の恒例行事だ。
 第7回の大賞発表記念と銘打った座談会がその嚆矢である。
 かつては知る人ぞ知るイベントだったのが、今やミステリ読者に広く知られるようになったのだろう。これには、TwitterやFacebook等、情報の発信と共有に優れたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の影響が大きいものと思われる。
 このことはイベントの三週間も前、六月上旬に明らかとなる。
 今年の一般参加者は定員が120名。会場となった東京堂書店サイト、イベント告知のページによると、予約申し込み受け付けを開始して翌日にはその数に達してしまったそうである!
 これには驚いた。と同時に焦った。告知に気付かなければ参加できないところだった。告知当日に教えてくださった方がいたのだが、今となってはその方に足を向けて寝られません。
 それにしても物凄いことだぞ。120名の定員が一日で埋まるなんて。
 確かに魅力あるイベントではある。毎年好評を博するイベントなのも事実。一度参加すると翌年も参加したくなるというのは、本好きならば納得できるだろう。
 私自身、夢のような時間を過ごして以来、欠かさず参加している。
 これは私だけではないと信じているが、本格ミステリ愛好家すにとって六月は梅雨でなく本を買う季節なのだ。「本格ミステリ大賞受賞記念トークショー&サイン会」は、そろそろ歳時記に載ってもいい。否、載せるべきだ!

 本格ミステリ大賞とそれを主催する本格ミステリ作家クラブについては、昨年のこのイベントを取り上げた際に説明した。
 尤も、ただの本格ミステリ好きが纏めたものであり、だから事実誤認の懸念は無いではなくて。むしろその可能性は高くて。つまり、間違っていたならゴメンナサイ。
 今回のレポートについても同じことがいえるわけで。
 撮影の禁じられた場にて、外部記録装置なくして事実を正しく記憶に留めておくことなど、この鳥頭にはおよそ無理な相談というものでございます。
 まあ、まず忘れますわ。そうでなくとも記憶違いが起きちゃう。
 ですから、文中にある記述のすべては私サテヒデオにあります。発言者に帰するものではないことをここに断ります。
 また、敬称につきましては、昨年同様に「氏」「女史」としますこと、甚だ失礼とは存じますがご了承くださいませ。
 なお、本格ミステリ大賞や本格ミステリ作家クラブについて、記念イベントにおける個別の催しについて、これらを詳述することはしません。昨年の記事を参考としていただきたい(間違ってるかもしれないけれど)。

 繰り返すけれど、今回の会場は東京堂書店神田神保町店六階の東京堂ホール。
 今まで一度も立ち入ったことのないフロアであるが、東京堂主催のイベントで使用されるのは知っていた。私にとって未踏の地だが、そこへ足を踏み入れる興奮よりも、百名を優に越す人員を収容できるかどうかがひたすらに心配で。
 なぜなら、そこは間違いなく欲望の坩堝となるはずだから!
 震災の後、買い出しの際に行列を作って粛々と順番を待つ日本人。あのような非常時ですら冷静に「譲り合い」の精神を発揮した国民性に、それらの映像を見た外国人からは驚嘆の声が洩れたという。
 一方で、この日本にも狂乱の場は立ち現れる。FIFAワールドカップのブラジル大会では、日本代表が敗北したにもかかわらず渋谷のスクランブル交差点で馬鹿騒ぎが生まれた。生まれたとはいっても誰かが始めたことだ。自然発生的に騒ぎが起こるわけはない。
 冷静と狂乱。この対比は、破壊と再構築、死とそれが齎す世界の再生を描くミステリとの親和性がある。混沌を渇望し秩序を愛する日本人がミステリを好むのは、あるいは民族的な業なのかもしれない。というのは大袈裟なので、やっぱり取り消して。
 ともあれ、餓鬼の如く本を買い求め、敬愛するミステリ作家に対してその身を慮ることなくペンを走らせる修羅が、この日は大挙して詰めかけるわけだ。煩悩の数より多い人数のミステリ好きが跋扈する、本格ミステリ百鬼夜行が東京堂ホールに現出する!

 また訳の分からないことを!
 だから肝心なイベント内容を書ききれなくなるんだよ。学習せぇよ阿呆!
 昨年同様、このたびもひとつの記事に纏められそうにないなあ。

 開場は十二時。しかし東京堂書店の開店は十時。この時刻に合わせて入店することに問題はない。イベント会場には入れないけど。
 一階レジカウンターでイベント参加者であることを告げると、手渡されたのがクリアフォルダー。中には入場券とリストバンド、式次第を記載のプリントが一枚。そして特筆すべきは販売書籍リストだ。
 いや、東京堂書店が用意してくれたすべてのアイテムが素晴らしい出来栄えなのは参加者・関係者の全員が認めるところだろう。後に目にすることになる抽選券や抽選箱も凝った作りで感嘆の声があがったほど。
 それにしても販売書籍リストは凄い。第7回の座談会から参加してるわけではないから確言はできないが、このような心配りが為されたのは今回の東京堂書店がはじめてではないだろうか。いやホント、わからないけど。
 東京堂書店を持ち上げて、だからといって前回までに会場を提供してくれた書店を腐すわけではないし、ましてや責めるつもりなんてあるわけがない。ただ、次回からはハードルが上がったな、と。
 東京堂書店はあんなに素晴らしかったのに、それにくらべて今回ときたら。
 そんなふうに評判を立てられることもないだろう。それぞれに意地があろうから。今回の東京堂書店をひとつの指標にして、どんどん良くなってゆけば参加者の満足度も増す一方だろう。それはきっとジャンルの発展に寄与するはず。
 いや、もうね、それくらい素晴らしかったんだよ東京堂書店の事前準備が。
 参加者と部外者を人目で区別できるリストバンドも、イベント運営を円滑に実行するのに役立っていたようだ。編集者は別にバッジを付けていたので、いずれにしても視覚的に容易に区別ができる体制が整っていた。このことから、部外者が紛れ込むことができなくて、速やかにお引き取り願えたようである。
 ただし、一点だけ不備があったように思われる。本当のところはとりたてて不備とするまでもない事柄ではあるのだけれど、これさえ整っていればと思わずにはいられないことがあって。これについては後述する。

amazon:[単行本] 皆川博子コレクション5 海と十字架  開場までの間、販売書籍リストを眺めて「本日の獲物」を思い定める。狙うは、皆川博子女史の「皆川博子コレクション」既刊分、第一巻から第五巻まで。一巻あたり税抜き価格で2800円。五冊で福沢諭吉と樋口一葉が持ってゆかれる破壊力。
 恐るべきは私の物欲。でもサイン本で揃えたいじゃない?
 皆川博子女史を「東京の母」と慕う綾辻行人氏も今回は参加されるとのことで、「迷路館の殺人」と「時計館の殺人」は真相改訂版を買いたいな、と。ホラ、ノベルス版と文庫版とは基本的に別腹だから。厳密には同じ本じゃないから!
 既に所蔵のタイトルをもう一冊買うのはさすがに躊躇われるが、祭りの狂乱に胸まで浸かってしまっては理性の歯止めも緩くなるというもの。なんとか折り合いをつけて購入にこぎつける。自分に対する詐欺行為である。
 第11回の小説部門を「隻眼の少女」で受賞して以来のイベント参加を果たしてくれた麻耶雄嵩氏。せっかくの機会だから一冊だけでもサインを頂戴したい。
 とにもかくにも東京創元社の『私がデビューしたころ ミステリ作家51人の始まり』は絶対購入だ。寄せ書き的にサインをいただくチャンスとなる、貴重な一冊だ。
 アレもコレもと購入候補を挙げていると、さすがに懐具合が寂しくなって。イカン。このまま会場入りしては衝動のままに散財するのは必至!
 これまた東京堂が巧みなのだ。用意された書籍のうち、そのほとんどが文庫本。文庫本は単行本より安価で省スペースに寄与してくれる、購入意欲を刺激する判型である。あとがきや解説もあるので、親本よりも書誌的な価値を有するわけで。
 だから買っちゃうよねってハナシですよ!
 実際、福沢諭吉が二人と半分以上をきっちり持ってゆかれましたよ。完敗です。鼻血も出ません。頭がクラクラします。

amazon:[DVD] スマイルBEST ゾンビ 米国劇場公開版  本格ミステリ大賞受賞記念イベントの式次第に、ここ数年というもの変化はない。
 開場して一時間は集合と書籍の販売に充てられる。
 イベントそのものはトークショーによって開幕する。これが約一時間(第一の修羅場)。
 トークショー終了後は参加者に一旦退出を願って、その間にサイン会仕様に会場を設営し直す。再び参加者を会場入りさせて、お宝抽選会へと推移する(第二の修羅場)。
 そしてサイン会だ(最後にして最大の修羅場!)。ある意味でメインの催しといえる。
 だから、会場入りするや否や書籍を買いに走る本格ミステリのファンたち。その姿は、敬愛するミステリ作家の肉筆をこの手にするため、欲動のままに本を買う亡者である(私含む)。
 この日、競うように本を買うのには、サインを入れていただくという至極尤もな理由のほかに、もうひとつ大きな理由がある。
 トークショーの後のお宝抽選会。ここで賞品となるのは、まさに「お宝」。基本的に入手困難なアイテムだ。たとえ一般書籍であったとしてもそこには付加価値があり、それはたとえばサイン入りである等。非売品が出品されることも、ここでは珍しくない。
 この抽選会は前もって抽選券を配るのだが、それが書籍販売と結び付いている。つまり、購入書籍一冊につき抽選券一枚を付与するかたち。ハードカバーであろうと文庫本だろうと関係ない。一冊買うと、抽選券が一枚もらえる。
 このイベントに際して東京堂書店が用意した抽選券は千枚。あとは簡単な確率の問題だ。
 当選確率を上げるには?
 だからというわけでもないだろうが、一方でそれを狙っているようにも見受けられるのだが、書店が用意してくれた買い物かごに溢れんばかりの本、本、本。一万円以上の購入者には無料の宅配サービスがあるとはいえ、正気の沙汰とも思えない冊数の本を買う者がアチラにもコチラにも。
 スーパーマーケットでグラム数と値段とを見比べる主婦のようなポーズで購入図書を選ぶミステリ読者たち。その光景は異様。かごの重さは異常。
 一度の精算では物足りなくて(レジまで一度で運ぶことができなくて)、何度となく行列に並ぶ強者も。
 そうなのだ。コミックマーケットにおける最大手「公衆トイレ」と同じように、レジの前に精算待ちの行列が発生してしまった。
 ここで少し振り返っていただく。
 事前準備に遺漏のなかった東京堂書店。唯一の不備があると申し上げた。それは、「レジを三台にしなかった」ことだ。

amazon:[新書] ベスト本格ミステリ2014 (講談社ノベルス)  東京堂ホールのある六階は、そもそもが売り場ではないフロアなのだろう。レジスターすら別フロアから徴収してきたものなのかもしれない。
 これを六階フロア別室のひとつに二台置いて、仮設のレジカウンターを用意。一台きりであるよりは随分とマシだが、それでも捌ききれはしない。なにしろひとりが何冊も買うのだ。十冊オーバーさえも珍しくないのだから、ひとりあたりの精算に時間がかかるのは理の当然。
 だから、レジは三台必要だったのだ。あるいはレジ担当を精鋭揃いにするか。
 行列が解消されていたなら、もっと売り上げがあっただろう。
 行列の長さとトークショーの開始時刻とを睨んで、あるいはまた並ぶのが厭で、こういう理由から追加購入を断念した向きもあったに違いない。
 本と素晴らしき出会いを果たしてもらう。そのために一冊でも多く買ってもらう。この理念を実現するのにチャンスロスは痛い。
 それでも、この日は千冊を超す冊数が売れた。先に抽選券は千枚が用意されたと述べた。この千枚が抽選会を控えて捌けてしまった。これは千冊が売れたことを意味する。
 開場から三時間を経ずして千冊の販売を達成。三時間のうち、トークショーのさなかに本を買う者もいなかったろうから、実質は二時間足らずのうちに千冊以上を売り上げたことになる。勿論、抽選券がなくなったからと買いの手を休める甘チャンはいない。
 回遊魚のように本を買う。買うのをやめたとき死んでしまうのではないかと疑いたくなるくらいだ。
 参加者に余力はあったと思う。頭まで狂乱の渦に浸かりきっていた私たちは、翌日からの食事に事欠くとしても本を買っていたはずだ。「この機会に」とか「せっかくだから」とかの言い訳が思考能力を奪っていた。
 けれど、行列だけは勘弁な。
 スイスイと行列が解消されていたなら、もっと多くの出会いが生まれていただろうに。もったいない。

 東京堂書店の差配が素晴らしかったように、参加者もまた素晴らしかった。これも特筆すべき事柄である。
 内心の衝動はともかく、とても秩序立った行動で混乱もなく、イベントの進行を妨げる者などひとりもいなかった。むしろ譲り合い助け合いがそこかしこで見られた。
 自分さえよければ、という精神の持ち主がいてもおかしくないところ、一冊の本を取り合いするとかお宝の争奪戦だとかは一切なく、とても和気藹々とした雰囲気で終始したことをここに述べておく。
 最高ですよ本格ミステリ大賞受賞記念イベントは。最高のイベントです。だから来年も参加したいのだよなあ。この楽しい時間を多くの人に知ってもらいたいと願う一方で、でも自分は絶対に参加したいと思うわけで。
 これはアレですよ。二律背反ってヤツですよ。ジレンマ?

 でもって、やっぱり一回で纏められなかった。纏められなかったどころか、トークショーの内容に全く触れてさえいない。受賞者の名前すら出てこないのは、我ながらビックリだ。
 イベントの内容を知りたくて「第14回本格ミステリ大賞受賞記念トークショー&サイン会」を検索してヒットしたこのブログを訪れてくれた方には残念な結果です。ホントにガッカリですよね。
 次こそは知的好奇心に満ちて髄液ブシューッてなカンジになっちゃう、そんな内容の記事になるはず。ハズ!
 乞うご期待!

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Comments:2

tenmama 2014年7月 2日 19:14

楽しかったあの日が蘇るようです。(白い妖精のような皆川先生ますます神々しく思えます)今年は綾辻さんもいらしていてずっと欲しかった新装版『霧越邸殺人事件』をまさかのサイン入りでいただくことができてホクホクでした。お宝争奪で誰かが誰かに飛び掛って悲鳴が響いて部屋が真っ暗になりーなどということがあればまさにミステリー的でしたがそんなことなく皆さん穏やかに和やかに楽しまれていてようございました。続きの記事とても楽しみにしております。

サテヒデオ 2014年7月 3日 06:55

tenmama様
 コメントくださいましてありがとうございます。
 今回のイベントもまた素晴らしいものでした。これまでに参加したこのイベントより会場が狭いように感じられましたが、外部要因をものともせずに式次第を成立させた関係者には脱帽です。
 そして本文でも述べましたが、イベント参加者の振る舞いにも感服です。譲り合い助け合いの精神が見られて、まさに江戸しぐさの見本展覧会のよう。
 そういったイベントでしたから、お宝をめぐっての血で血を洗う争奪戦なんてコトは決して起こるはずもなく。ええ、きっと。たぶん。
 続きの記事ですよね。「いつから記事が続くと錯覚していた?」なんてコトにならないよう鋭意努力する次第です。そうですね、今月中には更新できると思います。ええ、きっと。たぶん。

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