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青田買いのセンスがワンダー

 3月18日に日本出版クラブ会館で催された、東京創元社による2014年の新刊ラインナップ説明会。
 もう一ヶ月以上も前の出来事なんだねえ。のんびりしてたらあっという間に四月下旬。ゴールデンウイークが目前に迫っている。「光陰矢の如し」とはこのことだよ。
 それはともかく、件のイベントについては、このブログで未だ触れてない事柄が多い。
 そもそもイベントが四部構成であることは先の記事にて述べたけれど、ではどういう内容だったかまでは説明してない。
 遅まきながらここに述べるとする。
 第一部がラインナップ紹介。
 第二部がエディターズチョイスについて。
 第三部が東京創元社創立六十周年記念フェアの内容紹介。
 第四部がメディア化情報。
 それでもってこのブログではまだ第一部のラインナップ紹介すら終えていないわけで。いやはや、どうにもこうにもダメだねえ。

amazon:[単行本] 旋舞の千年都市<上> (創元海外SF叢書)  東京創元社といえばSFジャンルにおいても強い版元で知られる。この日、司会進行を務めた池澤春菜嬢も「我が心のトリコロール」と早川・創元・サンリオを挙げるくらい、SF者にとっては心の三大栄養素となっているのだろう。
 その東京創元社が新たにSF叢書をブチ上げる。その名も「創元海外SF叢書」だ。
 第一弾はイアン・マクドナルドの『旋舞の千年都市』上下巻。説明会の時点では「近刊乞うご期待!」といったところだったが、現時点では刊行済み。なんだかんだで評判は良さそうだ。
 その自爆テロの犠牲者はゼロ? 事件現場に遭遇してから精霊が見えるようになった青年をはじめ、何らのかかわりを持たない六人を主要登場人物に据えて織りなされる壮大な物語。
 配付資料には「東洋と西洋、過去と未来、科学と神秘が融けあう近未来のイスタンブールを駆け回」るとあって、なんとも面白そうだ。

amazon:[単行本] 霧に橋を架ける (創元海外SF叢書)  奇数月に刊行される「創元海外SF叢書」。
 五月に刊行予定の第二弾は、キム・ジョンスンの短編集、『霧に橋を架ける』。
 表題作はヒューゴー賞・ネビュラ賞の二冠を獲得したという。その内容はというと、「異星を舞台に、正体不明の危険な"霧"が流れる大河に橋を架けようとする人々の苦闘と絆を描い」たもの。
 また、「心の触れ合いや喪失と再生を描く」とのことで、幻想趣味の嗅ぎ取れる一冊。
 刊行が発表されている創元海外SF叢書の四タイトルのうち、一番気になるのが本書である。安くはない買い物だけに買おうか買うまいか悩んでるんだけど、さて、どうしようかしら。

 創元海外SF叢書の第三弾は七月刊行予定、レイ・ヴクサヴィッチ『月の部屋で会いましょう』。
 なんと33編もの作品が収められているという。説明文には何度も「奇想」の文字が並ぶ。これも気になる一冊。短編の切れ味の鋭さにジャンル小説の美しさが感じられるんだよなあ。特にSFはその傾向が強いかも。

 創元海外SF叢書第四弾は秋刊行予定のマーク・ホダー『バートン&スウィンバーンシリーズ バネ足ジャック怪事件(仮)』である。
 タイトルにあるように「バネ足ジャック」を題材にとった、しかも「ヴィクトリア女王が暗殺された」大英帝国倫敦を舞台のスチームパンク。
 夢の蒸気機関に浪漫をのせて、懐かしくも新しいガジェットが次々に繰り出されるのだろうなあ。霧のロンドンに噴き上げる蒸気。なんとも絵になる光景だ。
 資料には、著者は「デビュー長編である本作で、2010年のフィリップ・K・ディック賞を受賞した」とある。鮮烈なデビューだ。ちなみに、このときの次点が伊藤計劃の『ハーモニー』英訳版だったとのこと。

amazon:[文庫] 図書室の魔法 上 (創元SF文庫)  さて、「創元海外SF叢書」から離れて、SFジャンルのラインナップ紹介を。
 今月末に創元SF文庫で刊行予定なのが、ジョー・ウォルトン『図書室の魔法』上下巻。
 大切なことはみんなSFが教えてくれた。
 現実社会に居場所を見出せず、SFやファンタジイ、物語世界に没頭する少女が主人公。夢見がちな性格にくわえて生活環境の激変があり、疎外感を覚えていた彼女は、図書室にてひとつの出会いを果たす。
 女子ばかりの寄宿生活。もはや想像の域を出ない「秘密の花園」。ここを舞台に繰り広げられる愛と青春の思春期。「いつか来た道」ですなあ。
 しかもヒロインは「妖精が見えて魔法を使える」ということだ。梗概だけ読むと、いきなり付与されたヒロインのギフトに戸惑う。この要素が物語にどのような展開を齎すか、物語にうまく馴染んでいるかが気になるところだ。
 なお、「本を心の底から愛したならば、本もあなたを愛してくれる」との惹句は、鼻の奥をツンとさせてくれる。この文言だけで手に取ってしまうかも。

amazon:[単行本] 柴野拓美SF評論集 (理性と自走性――黎明より) (キイ・ライブラリー)  小説から一旦離れて、今月刊行予定の牧眞司編集の『柴野拓美SF評論集 理性と自走性――黎明より』を紹介。
 本書は、日本初のSF同人誌「宇宙塵」を編集発行し、その傍らで「小隅黎」のペンネームで作品を物してきた柴野拓美氏の著述を纏めたもの。SF評論・研究の分野において大きな業績を残した氏の評論やエッセイ、解説に作家論、様々な考察を全670ページに集成した一冊である。
 著者は日本SF界を代表するパイオニア。その経歴を語ることが日本SFの歩みをなぞることに繋がる。残念ながら2010年に亡くなられたが、その業績はそのすべてではないにせよこのようなかたちで後世に遺る。
 後進は本書を里程標にして、新たな地平へと足を踏み出すことができる。こうして考えてみると、本書はまことに意義深い一冊だなあ。

 山田正紀作家活動四十周年記念作品は夏に刊行予定の『スワンブック(仮)』。
 仮タイトルの「スワンブック」とは、資料によると「人には人生の最期に読むべき、それぞれの一冊」とある。
 主人公「僕」の母親はスワンブックに『銀河鉄道の夜』を選んで逝った。その遺志から遺骨を花巻まで運んだ主人公は、昭和8年9月20日にタイムスリップしてしまう。
 その日、宮沢賢治の逝去前日。
 前回までに取り上げた作品や今回の記事でもそうだけれど、「本」を題材にした作品がラインナップに多く見受けられる。出版不況が叫ばれて久しい今日、「本」の持つ力を再確認する作品を世に問うことを、東京創元社は試みているのだろうか。だとするなら、その成功を祈りつつ出版物をいろいろと買わせてもらおうかしら。
 東京創元社をラ・マンチャの男にするわけにはゆかないから。

 世の中の「とんでもない」に着目して、トンデモ本やトンデモ物件を楽しく品評する団体、と学会。その会長を務める山本弘。秋に刊行予定があるのは、この著者の描くビブリオバトル小説、『BISビブリオバトル部 翼を持つ少女』だ!
 本作は、ビブリオバトルを題材に取りつつ最終的にSFへと帰着するものではない。ただひたすらにビブリオバトル。愛と勇気とビブリオバトル。「愛と青春の旅立ちはビブリオバトルでいかが?」のビブリオバトルだ!
 本作もまた「本」を愛する者を描いているわけで。個人的体験であるはずの読書から一歩踏み出して、「ボクのワタシの好きな本をみんな読んでみて!」と熱烈に推薦するカンジ。熱量の違いこそあるだろうけど、この気持ちはよくわかる。最近読んで衝撃を受けた一冊を「Read or Die」の一冊だぜ、などと嘯いて薦めることがあるだけにね。

 新人作家育成のために創設された「創元日本SF叢書」。SFジャンルの最後紹介されたのは、この叢書からの一冊、この夏刊行予定の宮内悠介『エクソダス症候群』だ。
 イベントには作家本人が登場し、自らの新作について説明した。
 舞台は宇宙、火星の精神病院。精神医療を題材にとった作品なのだが、配付資料には内容紹介が一文字も記されてなくて、しかも一ヶ月以上も前のことなので記憶はスッカラカン。この頃になると若干の疲れさえ覚えていて、メモもろくに取ってない体たらく。
 スミマセンよくわかりません。実際に読んでもらうのが一番だと思います。
 シマッタ! これを書くのは掟破りだ。「読めばわかる」は、レビューならともかく紹介を為すことの意義を打ち消す一言なのに!
 これ以上、続けられなくなるではないか。

 最後に失言が飛び出しましたが、これにてSFジャンルのラインナップ説明は終了。次回は「その他」と「エディターズ・チョイス」のそれぞれ三点、計六作品を紹介して第一部ラインナップ紹介を終えようと思う(「エディターズ・チョイス」は第一部の範疇にあるのではなく、第二部そのものでした。ここに訂正します。申し訳ないです)。
 いよいよ「池澤春菜の変」に至るわけで、日本出版業界に激震が走る!
 でもって更新はいつになるのやら。

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