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魔法の国の青田買い

 もう先月のこととなったけれど、18日に日本出版クラブ会館にて開催された、東京創元社による2014年新刊ラインナップ説明会について、ここ二回の記事で海外・国内ミステリ計十七点の紹介を纏めた。
 配付資料を横目に、「正確に」「過不足なく」を心掛けていたら、このイベントだけで三つ目の記事を数えることに。いやはや、一度のイベントに三つも記事が必要になるとは。我ながら纏めるのが下手だなあ。
 さて、ミステリ部門の次はファンタジー部門である。これは四点の紹介があった。

 マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト三部作」は、『タイタス・グローン』『ゴーメンガースト』『タイタス・アローン』だが、実は著者本人は三部作で完結させるつもりはなかったらしい。シリーズをさらに続ける意図があったようだが、病を得て亡くなってしまった。
 創元推理文庫から六月刊行予定の『タイタス・アウェイクス』は、マーヴィン・ピークが残した四作目のための覚え書きをもとに、その寡婦メーヴ・ギルモアが著したものである。マーヴィン・ピークの物語世界を継承したメーヴ・ギルモアの成果、つまりその刊行は、しかし彼女の死去の後にようやく実現した。

amazon:[単行本] アーデン城の宝物  E・ネズビット『アーデン城の宝物(仮)』は六月刊行予定。
 多くのファンタジー児童文学作家に影響を与えたのがE・ネズビット。「ハリー・ポッター」シリーズのJ・K・ローリングもその列に連なるという。
 そんな「英国児童文学黄金時代のファンタジーの名手」による20世紀初期の作品。しかも「タイムトラベル・ファンタジーの草分けともいえる名作」がいよいよ刊行の運びとなる。
 資料から引用すると、「エルフリダとエドレッドの姉弟は、お父さんが海外に行ったきり行方不明。お金がないので崖の家も下宿屋として人に部屋を貸してる毎日。ところが、ふとしたことからエドレッドが、かつての名家アーデン卿であることが判明」するわけだ。
 不運な境遇にありながら互いに支え合って健気に生きる姉弟。しかし実は名家の当主たる資格を有していて、という逆転劇で大団円を迎えても文句のないところ、以下のような展開になるのだから驚く。
 アーデン城に移り住んだエルフリダとエドレッドは伝説の宝を探すのだけれど、その導き手が「家の紋章にある不思議な白いモグラ、モルディワープ」だ。モグラを呼び出し、その助けを得て過去の時代を訪問する姉弟。
 かくして彼らの冒険が始まるわけだが、面白いのはタイムトラベルの手段である。機械工学的にタイムマシンを開発するならSFだが、本作はジャンルが異なる。幼い姉弟でも可能な時間旅行の手段とは、訪問先の時代の装束を身にまとうこと。
 刊行当時の習俗にあったらしい、一種のコスチュームプレイ。昔の衣装を着て、過去に思いを馳せる。つまり、想像力こそ時間と空間を自由に行き来するタイムマシンということだ。現実では妄想のたぐいであっても、物語のなかではそれが実現する。ファンタジーとは最も読書らしい読書、極めて個人的な体験を味わえる行為なのかもしれない。
 ハリー・ポッターと彼の友人たちが繰り広げる冒険に胸躍らせた向きは、本書を手にとってはどうだろうか。

 アレクサンダー・レルネット=ホレーニアは二度の世界大戦に従軍。1968年にはオーストリアのペンクラブ会長に就任した。
 今夏、四六判上製で刊行予定の『両シチリア連隊(仮)』は、「二重帝国崩壊後、頽廃の都ウィーンで起きる異常な連続殺人」と資料にあり、ミステリ好きとしては興味のひかれるところ。
 続いて「幻のオーストリア幻想小説。本邦初訳」とあるので、ミステリ仕立てであってもあくまでファンタジーの範疇におさまる作品なのだな。
 作品の舞台は1925年のウィーン。ロションヴィル伯爵は、今でこそ退役しているものの、先の大戦で両シチリア連隊を率いる軍人。元ナポリ総督の催す夜会に招かれた彼は、席上でひとりの騎兵と対面する。騎兵から奇妙な体験談を聞いた、その夜以降、ロションヴィルのかつての部下たちが次々に殺害される。
 名誉ある両シチリア連隊の連隊員たちはなぜ死ななければならなかったのか。その驚愕の真相とは?
 説明によれば、アンチミステリの傑作と数えられる「虚無への供物」に匹敵する、と。
 オイオイオイ、そいつは本当か? 本当ならばすこぶるつきに面白いんじゃないのか!

 ファンタジー部門の最後は国内作品。
 乾石智子の「オーリエラントの魔術師」シリーズから最新作『沈黙の書』が、四六判仮フランス装で五月に刊行予定。
 山形在住の著者は、「スターウルフで目を覚まし、コナン・ザ・バーバリアンに最初の一歩を助けてもらった」とその嗜好を表明する強者。ファンタジー純粋培養なのかしら?
 いろいろな意味で期待の作家であり、期待の一冊だ。

 のんびりと更新しているので纏めるのが遅々として進まない。ま、それが私らしいかな。
 でもって次はSFのハズ!

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