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八州の国の青田買い

amazon:[文庫] 十角館の殺人 新装改訂版 (講談社文庫)  先だって催された東京創元社の「2014年新刊ラインナップ説明会」について、前回の記事はそこで紹介のあった海外ミステリ十点を纏めてみた。
 今回は国内ミステリ七点を取り上げる。
 ミステリにしろSFにしろホラーにしろ、東京創元社は海外作品の翻訳で出版業界にその地歩を築いてきた。
 その東京創元社が国内作家のミステリ作品を刊行するようになったのは、海外作品の出版権の高騰があったからだと仄聞する。国内大手出版社ならまだしも中小規模の出版社にとってはおいそれと手の出せない金額になってしまった。だから日本人作家の育成に力を入れるようになった、と。
 それは本当なのだろうけれど、でもそれだけが理由ではないはず。編集者としてミステリ好きとして、「海外だの国内だの関係なくて、面白い本を出したい!」というのが本当のところだったのだろう。
 かくして、東京創元社は講談社第三文芸部とともに「新本格ミステリ」の名付けられた潮流を作る。その嚆矢を綾辻行人のデビュー作『十角館の殺人』とするならば、その刊行は1987年。それから四半世紀を超える歳月が経って。

 国内ミステリ新刊ラインナップ。一番手は本城雅人『誉れ高き勇敢なブルーよ』だ。
 著者は、新聞社で野球記者を務め、その経験を活かした『ノーバディノウズ』でデビュー。同作は第1回サムライジャパン野球文学賞を受賞。スポーツ小説の書き手として認知されている。
 その経歴から野球のイメージの強い著者だが、当人はサッカー部出身とのこと。
 今年はサッカーのワールドカップ大会が開催される。タイトルにある「誉れ高き勇敢なブルー」とは、言うまでもなくサッカー日本代表チームを意味している。
 梗概は以下の通り。
 アジア最終予選で不調の日本代表。本大会での苦戦を回避すべく監督は更迭される。さりとて代わりの監督人事に適当な人材があるわけでもない。この窮地を打開すべく白羽の矢が立ったのは、国内リーグで活動しなかった、「裏切り者」の烙印を押された男。
 ただし、その行方が知れない。
 次の国際Aマッチまで25日間。タイムリミット迫るなか、果たして「裏切り者」を見つけだすことができるだろうか。
 サッカー好きには堪らない、そしてワールドカップイヤーにぴったりの作品。
 本作は四六版上製での刊行で、十月を予定している。

amazon:[単行本] 風ヶ丘五十円玉祭りの謎  資料において「平成のエラリー・クイーン」と手放しの称賛が送られている青崎有吾は、来月『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』を上梓。
 本書は、著者が生んだシリーズ探偵・裏染天馬を起用した日常の謎連作集ということだ。
 東京創元社の「日常の謎」で五十円玉が関係するとなると、「五十円玉二十枚の謎」を思い出さずにはいられない。
 後に競作集まで刊行されたこの謎は、そもそもがある人物の実体験である。『ぼくのミステリな日常』でデビューを果たした若竹七海女史が、自身の大学時代に遭遇した不思議。
 当時、本屋でアルバイトしていた若竹七海女史。その店を土曜日ごとに訪れる「謎の人物」。彼はレジに五十円玉を二十枚を持ち込んではこれらを千円札と両替してくれと要求する。毎週土曜日、五十円玉二十枚。その人物が店を訪れるのは両替のみが理由のようで、その証拠に一度として本を買ってない。
 普通に生活しているうちに五十円玉が二十枚たまることはあるだろう。しかし、数日で五十円玉が二十枚もたまるというのはどうだろう?
 しかし、かの人物は土曜日ごとに両替に現れるわけで。しかも本屋に。
 なぜ両替をするのか? なぜ本屋で両替をするのか?
 両替せずとも貨幣は貨幣。五十円玉は一般的に流通する通貨である。支払いに使えないわけではない。
 両替するにしても本屋に限定する必要がない。この本屋のほかに商店がないわけでもないのだ。
 アレ、『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』を纏めるはずが、長々と「五十円玉二十枚の謎」について紹介してしまった。脱線だ。そして脱線したまま次へ移行する。

 柚木麻子の『ねじまき片思い~宝子のおもちゃ事件簿~』は、四六版で八月刊行予定。
 玩具メーカーに勤める富田宝子。彼女の五年間にわたる片想いの相手は、外部デザイナーの西島。ルームメイトや同僚から叱咤激励され、あるいは呆れられながら、西島に対して未だ一度も恋心を打ち明けられずにいる。
 この内容ならばただの恋愛小説だが、東京創元社がただの恋愛小説を出すはずがなく。
 宝子は「次から次へと西島が巻き込まれるトラブルを、素人探偵となって陰ながら解決していく」らしい。陰ながら見守るというスタンスから「巨人の星」の明子ねえちゃん型探偵と分類すべきか。

 次は八月に四六版で刊行予定の『武蔵野アンダーワールド・セブン【多重迷宮】』。
 作者の長沢樹は資料によると、デビュー作『消失グラデーション』は「横溝賞史上、選考委員最大の賛辞」と綾辻行人、北村薫、馳星周から絶賛された、とある。
 デビュー作が話題となり、二作目は第13回本格ミステリ大賞候補作となったミステリ界の新星が、東京創元社から新シリーズをスタートさせる。それは「もうひとつの日本」を舞台とするもので、つまり作中に異化効果による現状認識の転換を仕掛けているのに違いない。
 現状認識のアクロバティックな転換はミステリとの親和性が高く、クラクラするような読後感を求める向きにはピッタリの作品かもしれない。

 東京創元社の創立六十周年を記念する出版物が二点。
 芦辺拓『ダブル・ミステリ(仮)』は四六版並製で秋刊行予定だ。
 驚くなかれ。「前からでも後ろからでも読める!」「本の表と裏から始まる二編のミステリ」ということだ。
 イヤイヤイヤ、どういうことなの?
 縦書きから始まる一編は、古式ゆかしい「閉ざされた館」の殺人事件。横書きから始まる一編は、日記形式で綴られるサイコ・サスペンス。
 このような説明があったとしても、それぞれの内容がどのような結末を迎えるのか、全体としてどこに到達するのか、まるで想像できない。
 想像できないというのは、本作に対する期待が盛り上がりすぎて、その到達点を高く設定しているからなのだけれど。

 創立六十周年記念出版のもう一冊は、『私がデビューしたころ 作家51人の始まり(仮)』。六月刊行予定の四六版。
 これは、資料に「作家のデビューエピソードは、時に作品以上にドラマティック」とあるように、51名の作家によるエッセイを収録したもの。
 51人分の思い出や創作論等が一冊に集約されているのだ。コレって凄くないか?
 本書もまた購入リストに載せるべき一冊だ。

 最後は米澤穂信だ。年末に刊行予定のそれはタイトル未定、版型未定である。
 大丈夫か米澤穂信。大丈夫か東京創元社。
 この日、著者がゲストとして現れて、いろいろと弁明をした。否、弁明ではない。説明だ。
 米澤穂信で東京創元社といえば、2004年の『さよなら妖精』だ。それから十年。2014年に作中時間も十年を経過した第二作を用意しているという。
 著者本人の言葉によると、作中に「虎」と「銃」と「カメラ」が出るはず。まるで三題噺。内容をちっとも想像できない。

 米澤穂信のタイトル未定作品がが本イベント国内ミステリ部門の掉尾を飾った。この後、ファンタジー部門へと移るのだが、ここで担当編集者が言伝を預かっていた。
 資料にははっきり「タイトル未定」と記されているのだが、作家にはどうやらタイトルの腹案があるようで。それは「E85.2」。このアルファベットと数字の羅列は、何を意味しているのやらさっぱりわからない。まさかバストサイズ85.2cmのEカップではあるまいな。
 すると、SF界では名の知れた編集者は「東経85.2度を意味しているのでしょう」と発言。私のような地理音痴には発想すらできない領域ですよ。バストサイズに飛びついた自分が恥ずかしい。
 バストサイズかもしれないけど。

 以上七点が「東京創元社 2014年新刊ラインナップ説明会」国内ミステリ部門で紹介のあった出版物だ。
 次はファンタジー部門だ。

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