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Man of Tomorrow

「マン・オブ・スティール」公式サイト 「マン・オブ・スティール」を観た。
 原案と製作はクリストファー・ノーラン。彼は、「闇の騎士」として知られるバットマンの苦悩と英雄伝説を題材にした三部作、ダークナイト・サーガを完成させた。「メメント」以降、観客の度肝を抜くことにかけて人後に落ちない映像作家が、本作でタッグを組んだのはザック・スナイダー。ザック・スナイダーの映画監督としてのキャリアには、アメリカンコミックを原作に持つ「300」と「ウォッチメン」がある。
 本作もまたアメコミを原作を持つ。それどころかアメコミを代表するヒーローが主人公だ。
 そのスーパーヒーローは「鋼鉄の男」の二つ名を持つ。特徴ある星条旗カラーのコスチュームは、誰もが一度は目にしたことのあるはず。
 ヒーローの素性は、母なる星を失い、その際に両親によって赤子のうちに地球へと送られた、「惑星クリプトン最後の息子」。その遺児は名をカル=エルというが、地球の養父母は彼をクラークと名付けた。
 地球人クラーク・ケント。人類をはるかに超越する肉体と知性、特殊な能力を有する彼は、長い期間をモラトリアムに過ごすが、後に自らの使命に目覚める。そのとき人々は、男の胸に描かれたエンブレムと超越した能力に因んで、そして親愛と畏敬の念を込めて、彼をスーパーマンと呼ぶ!

 永らくの繁栄を誇った惑星クラプトンも崩壊の危機に瀕している。この危機に科学者ジョー=エルは固定観念を覆す大冒険を試みる。妻のララ・ロー=ヴァンとの間に子をなしたのだ。
 冒険の成果が文字通り産声をあげた後、ジョーは元老院にコデックスを自分に託すよう求める。
 ジョーの申し出が却下されたそのとき、軍部によるクーデターが勃発。首謀者であるゾッド将軍が長老たちを襲う。
 ジョーとゾッドは互いを友人と認める間柄であり、ともにクリプトンの未来を憂うのだが、立場とそなわった個性の違いによってそれぞれの目指すところは大きく異なる。
 主張を違える二人の男は、それぞれが実力行使によって己の信念を貫く。このたびのかがく科学実験の成果を軍人は知らず、クーデターは科学者にとって寝耳に水。想定外の状況にあって、これを最後の好機と見たジョーの行動は迅速だった。彼はクーデターの混乱に乗じてジェネシス・チェンバーからコデックスを奪取する。
 もはや一刻の猶予もならぬ。ジョーはコデックスを産まれたばかりの愛息に託す。クリプトンの希望を安全な場所へ無事に逃がさなければ、すべてが水泡に帰する。
 息子の避難場所として夫婦が選んだのは、太陽系第三惑星。原住民によって「地球」と呼ばれている星だ。若く健康な恒星は黄色の光を放ち、ジョーとララの息子に強靭な肉体と素晴らしい力を与えてくれるだろう。
 希望の子の名前はカル=エル。「エル家の息子」という意味だ。

 カル=エルが母なるクリプトン星から脱出し、ジョー=エルはゾッド将軍に殺される。一方でクーデターは鎮圧され、叛乱部隊はファントム・ゾーンでの禁固刑を受ける。
 やがて、惑星クリプトンは最期の日を迎えて。

 さて、本作は封切を月末に控えている。劇場公開されてない作品を取り上げる際はいろいろと気を遣う。
 まだ観てない人に向けてネタを割るのは心苦しい。さりとて書きたいことを書かずにいるのも不完全燃焼だ。この二律背反に悩んでしまう。
 スーパーマンの物語自体は有名だ。映画化は勿論のことドラマ化やアニメ化が幾度もなされて、それらは日本に上陸している。日本人には馴染みの薄いアメコミも、ここ数年に著しい映画化の傾向に従って、続々と翻訳されている。
 だから、主人公の生い立ちから就職先や恋愛に関して、このヒーローについて少なくない事柄を知っている。たとえば、弱点がクリプトナイトである等。ただし、こういう知識も、その程度は個人差がある。どこまで周知のこととして扱えばよいのか考えものだ。
 一方でこうも思うのだ。個人ブログで好きなように記事を書けないことにどんな意味がある?
 なんだかんだと悩んだ末に、やっぱり自分のやり方を貫くしかないわけで。ですので、今回もなんだかんだでネタを割ってしまいます。極力、ネタを割らないように努めはするけれど、それが第一義とはならない。
 だから、とりあえず作品を観てからでないと読む気になれないという向きは、このまま「戻る」をクリック!

amazon:[単行本] スーパーマン:アースワン(ShoPro Books)  クラーク・ケントは幼い頃から自分が他者とは違うことに悩んでいた。クラークがこの世界の誰とも違う特別な存在であることを、彼の養父母は最初から心得ていた。
 ジョナサンとマーサのケント夫妻は、ある夜、隕石の墜落を目撃する。墜落現場に向かうと、そこには見たことのない乗り物が。その中から赤ん坊が現れたときに、彼らはこの子が将来担うであろう使命と、この子を育てるという自分たちに課せられた使命を予感した。
 果たして、赤ん坊が乗っていたのは地上には存在しない物質で作られていた。つまりは宇宙船だったわけで、当然のことだが赤ん坊は異星人となる。
 その事実を前にしてもケント夫妻はこの子を育てることにした。この子が地球へと送られたことには相応の意味があるはずだし、カンザスの片田舎で自分たちと邂逅を果たしたことは運命に違いない。
 ならば、運命に従うことを怖れる必要はない。この運命の果てには希望があるはずだ。
 ケント夫妻は息子をクラークと名付けた。こうして「惑星クリプトン最後の息子」は、地球人クラーク・ケントとなった。
 幼いながらもクラークがときおり見せる大人顔負けの力に、わが子の健やかな成長を願うジョナサンは危機感を募らせる。それはクラークが人間離れした力を持つことに対してではない。人間離れした存在を周囲がどう扱うか、だ。奇しくも、これはクラーク・ケントつまりカル=エルの実母、ララ・ロー=ヴァンが危惧したこととまるで同じ。
 わが子が異端として迫害を受けるのではないかとのジョナサンの心配は、クラークに力の抑制を強いることになる。
 全力を禁じられたクラークは、たとえ苛められても仕返しをすることを許されない。たとえ眼前で学友たちが窮地に陥っても、自分の本来の力を秘匿するためには見捨てなければならない。
 ジョナサンの教えはクラークを苦しめる。なぜ自分は自由気ままに振舞えない?
 優しく情熱を胸に秘めた人物へと育った少年は、父親の教えほどには己を完全には抑えつけられず、だから妙な噂を立てられる始末。ジョナサンはクラークに告げる。「善人になっても悪人となっても、お前は世界を変えるだろう」
 ジョナサンは確信している。地球人類が次の段階へと進むとき、その大いなる第一歩はクラークとともに果たされるはずだ。だから、それに相応しい存在へとクラークを育てあげなければならない。
 ジョナサンは自分たち夫婦が託されたのが希望であることを信じていた。そのうえで自らの希望を息子に託した。
 父親は息子に希望を託した。実父は自分たち種族への、養父は地球人類への、それぞれの希望を。二人に共通するのは、なにより愛するわが子が心安く暮らせるよう、素晴らしい生涯を送れるようにとの願い。大上段に構えた理念や心に刻み込んだ信念よりも、子の幸せを願い、それを優先するものだ。親が子に希望を託すとは、そういうことを織り込んでのことである。
 ジョー=エルとジョナサン・ケントは、二人ともが厳しい行為と態度のうちに優しい瞳でわが子を見守り、そして胸いっぱいに息子を誇る。自分が希望として掲げるのは、種族や社会にそれを見出すのではなく、愛する息子であると。

amazon:[Blu-ray] マン・オブ・スティール 3D & 2D ブルーレイセット (初回数量限定生産)  実の父親と育ての父親がともに愛し希望を託した息子は、自らの異端であることに心を痛める。周りの者が見えてないものが視え、聞こえない音を聴く。異常なまでに研ぎ澄まされた感覚も、大人すら軽く凌駕する力も、誰からも共感を得られない境地にある。少年はますます自らの異端を思い知り、孤独感を深めてゆく。
 養父母は、彼らの愛する息子に事実を打ち明ける。お前は私たち夫婦の間に生まれた子ではない。遠い宇宙からやってきたのだ、と。
 少年にとってショックなのは、自分が地球人ではないこともさることながら、自分が父と母の本当の子どもではないことである。自分が周りの人間と違っていても、父親と母親が自分と同じだと信じていたかったのに。
 反抗期はクリプトン人にも訪れる。少年は口喧しい養父に口答えするようになる。少年にとってみれば烏合の衆でしかない地球人からの視線をいつまでも気にする養父に怯懦を見る。なにをそんなに恐れることがあるのか、と。
 しかし、これは少年が間違っている。父親が恐れたのは息子が異端として迫害を受けることではなく、少年が信念なき力をふるうことだ。何のためにその力を使うのか、誰のために全力を尽くすのか、わが子はちゃんと考えなければならない。でなければ、息子は強大な力を恃む怪物となってしまう。
 父親は、愛するわが子を怪物にしたくなかったのだ。息子を怪物ではなく英雄にするためならば、この命だって喜んで差し出せる。
 死ぬのは恐い。しかし、果たさねばならぬ事柄を成し遂げぬまま、のうのうと生き長らえることはできない。そんな姿を息子の前にさらすわけにはゆかない。そんな自分の姿に影響を受けて、息子が生き方を曲げることのほうがよっぽど恐い。
 ジョー=エルもジョナサン・ケントも、息子のために己が命を投げ出した。
 なぜなら、息子は希望だから。
 なぜなら、愛する息子だから。

 ラッセル・クロウとケヴィン・コスナー。厳しくも愛情深い父親役を演じるのに、これほど適した役者もいないだろう。かつては自らが主役を演じてヒーロー像を体現していた二人が、本作では父親という存在が示さなければならない強さを見せてくれる。
 強い父親像。普段の生活態度は問わない。いざというときに偉大な背中を見せられるというのが、それなのではないだろうか。悩みを聞いてくれて、道を示してくれて、きちんと叱ってくれて。決して追い越せない背中を見せつけてくれる存在なのではないだろうか。
 その点、ラッセル・クロウとケヴィン・コスナーは大きな背中を持っている。その背中には、これを追い越すのは骨だな、と実感させるに足る広さと厚みがある。次代へ繋げる想いを表現できる佇まいがある。

 男は己の出自を知り、託された希望がどんなものかを知り、何よりも愛されたことを実感する。男には二人の父親がいて、二人の母親がいて。
 明日があって。
 二つの星の二つの種族。その架け橋となるように、実父と養父がともに願う。この子に奇跡が起きますように。艱難辛苦のその果てに、理解と共感が立ち上がり、心をひとつにする奇跡。
 男は、空高くまっすぐ飛び立つべく、背すじを伸ばし、胸を張り、ひたすら前を見つめて。怒りも不信も道を示してはくれない。信じることが希望を生む。二人の父にそれを教わって。
 明日を信じて今を生きる。満天を覆っていた雲が晴れて、目の前に道ができた。

 太陽が昇って「明日」は来る。太陽の光がクリプトンの息子に超人の感覚を与え、地球に満ちる大気が強靭な肉体と強大な力を与えた。
 惑星クリプトンで生まれた赤子は、地球に育って英雄の資質を手に入れ、愛情のこもった導きで英雄としての自覚を得るまでに至った。
 ここにヒーローが誕生した。彼は、笑顔を浮かべながら脳天気に力をふるうということのない、むしろ悩み多きヒーローである。辛気臭くて煮え切らなくて。でも、だからこそ懊悩の末にとられた行動には信頼がおける。
 未成熟だが力強い。どこかの国を思わせるような、若々しいヒーロー。
 その名はカル=エル、クラーク・ケント。胸に「希望」のエンブレム。意思は曲げない曲がらない。「Man of Steel」。

 スーパーマン!

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