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来月は八月だよね

amazon:スタチューレジェンド 「ジョジョの奇妙な冒険」第三部 32. J・P・ポルナレフ セカンド 原型・彩色監修/荒木飛呂彦  第13回本格ミステリ大賞の受賞記念イベントについて、ここ二回、記事を書いた。
 はじめは一回の記事で終わる予定だった。否、予定も何も複数回にわたって掲載するなんて、そもそも頭になかった。書いているうちに長くなったので二分割にしたら、なぜか三回に分けることになった。何をいっているのかわからないと思うけど、催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなものでは断じてない。ジャン=ピエール・ポルナレフ氏の云うところの「もっと恐ろしいものの片鱗を味わった」とか何とか。
 とにかく、今回こそを最後とする。最後になる、はず。
 なお、作家のなかには「先生」と呼ばれることを厭う方がおられるようなので、今回も敬称は「氏」「女史」とするので悪しからず。

 お宝抽選会に続いては、いよいよ合同サイン会である!
 お宝で釣るのではないというのはわかった。でも、サインで釣って本を買わせようって腹なんだろ? このように考える向きもあろう。
 それがどうした関係無え!
 本人がそれで構わないといってるんだから構わねえンだよお!
amazon:[単行本] 皆川博子コレクション1 ライダーは闇に消えた  有隣堂がまた透明のバッグを貸し出してくれるものだから、両手に本を抱えることなく買い物に集中できて、おかげで予定の金額をオーバーしてしまった。これには驚いたね。コレも買おうソレも欲しいと手に取っていたら、アッという間に十冊を超えていた。しかも、単行本をガシガシ買っちゃったものなあ。これで「皆川博子コレクション」全五巻のうち既刊二冊があったらどうなってたんだろう?
 昨年の本格ミステリ大賞小説部門で城平京氏と同時受賞した皆川博子女史が、二年連続で参加してくださった。無論、このことは誠に嬉しいことなのだけれど、欲しかった本が十分に用意されておらず、この点が残念だった。たとえば『皆川博子コレクション』にしても、ある程度の用意はあったのだろうけれど、その冊数は購入希望者すべてに行き渡るほど多くなかった。
 ここ最近、皆川博子女史はサイン会活動を精力的になさっていて、おかげで『開かせていただき光栄です』も『少年十字軍』もサインを入れていただいたものを持っている。「皆川博子コレクション」刊行記念サイン会が催されたのか私が知らないだけなのか定かではないが、このイベントに女史が参加なさると知って、これを機に『皆川博子コレクション』一巻と二巻とを購入し、ぜひともこれらにサインを、と意気込んでいたのだ。それなのに開会前に売り切れとは!
 もっと早く会場入りすべきだったか。

 たいていの刊行記念サイン会というのはいろいろと縛りがあって、対象書籍が決まっていたり、ひとり一冊までだったり。そこまできつくなくとも、出版社主導のサイン会では他社の刊行物は当然のことながらダメだったりするものだ。作家自身はいずれにせよ自分の著作物なので、来てくださってありがとうございますという気持ちだろうが、まわりの大人たちはそういうわけにはゆかない。
 本格ミステリ大賞の記念イベントにおける合同サイン会は、一切の縛りがないように思われる(そんなわけないけど)。出版社も判型も冊数も問わない。そこにある本なら何を何冊買おうとかまわないだろう。そのすべてにサインを入れてもらえる。競作集等、一冊に複数の作家が作品を寄せている場合があるけれど、その本に収録されている作品の作者からそれこそ寄せ書きの要領でサインを集めることも許されている。
 A氏の著作物に、それとは全く無関係なB氏のサインを入れてもらうというのは、さすがに断られるだろうが、これは常識として許されるものではない。こんなことを頼むのは人としてどうかしてる。これが許されるのは、「B」というのがA氏の変名である場合だけ。
 あ、本以外のものにサイン、というのもダメ。着ているシャツも携帯電話の液晶画面もダメ。「そのまま刺青を彫ってもらうから」と肩にサインを書いて、というのも却下だ。
 情熱と常識を持って列に並ぼう。

amazon:[文庫] サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)  京極夏彦によると、出版された本はすべて面白いのだそうだ。その本が世に出るまでに多くのプロの出版人が携わるわけだが、つまらない内容ならそもそも費用をかけて出版するはずがない。それがどんな内容であれ、何かしら面白いところがあるからこそ、多くの人が本にしよう、市場に問おうと尽力するのだ。
 そのうえ、出版のプロフェッショナルが「面白い」の上積みを図るわけだ。フォントから紙質、カバーに帯まで考えに考える。販売促進にも力が入る。何を仕掛けるのが効果的なのか、やはり考えに考える。「この本が届いてしかるべき人のもとに辿り着きますように」と、祈りにも似た思いを込めて。
 その思いは作家も書店員も同じだ。本の生まれる根本から先端まで、「本よ、届け」と願っている。そう思うと、一冊の本だけれど重い。
 本格ミステリ作家クラブは、本格ミステリ大賞の運営母体として設立された。本格ミステリ大賞は、ミステリのさらなるジャンル的発展を目指すべく生み出された。ジャンルの発展は良い作品を世に問うだけでは片手落ち。面白い作品を数多くの人に読んでもらうことで、ミステリの持つ魅力の再発見がなされ、それがひいてはミステリというジャンルに対する信頼へと繋がるのだ。
 まずは手にとってもらう。そこからはじめる。
 たとえば、あまりサイン会をしない作家の本を、これを機会に買ってみる。そして読んでみる。面白く感じられたら儲けもの。この世にまたひとつ「面白い」を見つけることができた。その後、その作家の既刊本を買い集めて、新刊を待ち焦がれるようになる。面白く感じなかったら? 次の出会いに期待するだけ。
 本が売れる。販売実績が数字として表れる。ミステリは利益に繋がると判断されれば、出版社は力を入れるだろう。沃野にこそ人は集い、たくさんの人の中から次代の作家が生まれ、やがてジャンルを牽引してゆく。
 夢をみてるかのよう気楽なルーブ・ゴールドバーグ・マシン。物事がこんなうまい具合に流転するほど世の中は甘くない。でも、好きなジャンルが発展することを信じて何が悪い? ジャンルが発展すれば、面白い作品と出会う可能性がそれだけ高くなる。こちらとしても願ってもないことだ。
 まずはこの一冊から。この一冊からはじまる。
 だから好きな本は、枕頭に一冊、書棚の書影が一番映えるところに一冊、布教用に三冊ほど買っとけ!

amazon:[文庫] 少女たちの羅針盤 (光文社文庫)  今回の合同サイン会で、百名余の参加者からの突進を胸で受け止めた作家は、トークショーから出突っ張りの面々を含む十九人。名前のみ敬称略のかたちで記載すると、大山誠一郎、福井健太、太田忠司、鳥飼否宇、芦辺拓、有栖川有栖、大倉崇裕、大崎梢、北村薫、霧舎巧、黒田研二、篠田真由美、辻真先、法月綸太郎、東川篤哉、水生大海、三津田信三、皆川博子、山田正紀。いやはや堂々たる顔ぶれだ。
 この十九人の作家にファンが群がる。とはいってもミステリ好きは紳士淑女であり、その集まりであるから列を作って粛々と順番待ちをするのだが、どの顔も興奮の色を隠せない。ほんのわずかな間ではあるけれど、憧れの作家と一対一の時間を持てるのだ。大好きな作家が自分のために時間を割いてくれるのだ。卑屈になることなく、素直に嬉しい。
 この嬉しい時間が十九人分も体験できる。お腹いっぱいだよ!
 特に言及しておきたいことがひとつ。水生大海女史はサインを入れた後、購入者に手渡す際にわざわざ立ち上がって頭を下げておられた。その姿を間近で見て胸を打たれた。私も『少女たちの羅針盤』の文庫本を買い、サインをお願いしたのだが、購入した本の多寡にかかわらず態度を変えないところに、それが当たり前のことだといわれればそれまでだけど好感を抱いた。これだけで応援したくなるのだから(この時点ではまだ作品を読んでないのにもかかわらず)、思考回路の単純なこと。
 ちなみに、その他の作家の態度が悪かったということでは断じてない。水生大海女史のそれが抜きん出て印象に残った。ただそれだけのこと。
 東京創元社の名物編集者として知られた戸川安宣氏が、ご自身のブログで明かしたところでは、九百冊ほどの売り上げがあったとのことだ。ジャンルの発展に少しは寄与できたのではないかと思う一方で、それだけの数のサインが為されたことに驚く。
 これはイベント当日に戸川安宣氏から伺ったのだけど、皆川博子女史が今年もお見えになったのは、御本人から申し出られたとのこと。確かに皆川博子女史は本格ミステリ作家クラブの発起人のひとりに数えられるけれど、それだとこれまで毎年出られているわけではないことの理由を説明できない。昨年、ファンと時間をともにされたことが、女史の意思決定を促したのだとすると、作家にとっても読者と直に交流できる場は貴重なのだと考えられる。
 だから、ペンを走らせすぎて腱鞘炎スレスレの痛みを腕に覚えたとしても、また参加しようと思うのかもしれない(過去に参加した作家のうち、誰かが腱鞘炎を起こしたということがあるのかないのか、私は知らないけど)。
 サインをする作家諸氏の苦労は勿論だが、買った本にサインを入れていただくべく何度も列に並ぶファンも大変だ。
 この日、私は十冊を超える本にサインを入れていただいた。この冊数でも終わってみれば心身ともに疲労を感じたというのに、ひとりで五十冊以上を買った強者を知っている(それだけの冊数を買っただけあって、その強者はお宝を複数掻っ攫っていった)。あの人は大変だったに違いない。
 サインをもらう順序を考えるのはゲーム攻略にも似ていて、待ち時間を如何に短くするかがポイント。それにしたって五十冊の強者は最後まで残っただろうなあ。

amazon:[単行本] 悦楽園 (ふしぎ文学館)  来年は第14回を数えることになる本格ミステリ大賞。はたして、どの作品が小説部門、あるいは評論・研究部門で最優秀作品として大賞に輝くのだろうか? 今から楽しみである。
 個人的、そしてあまりに無責任な希望をここに述べさせてもらうと、来年も皆川博子女史には御参加いただきまして、それまでに刊行の完了している『皆川博子コレクション』全五巻にサインを入れていただきたい! 出版芸術社には在庫の一切をさらって、イベント会場に搬入してもらって(ふしぎ文学館の『悦楽園』も!)。
 ちなみに記念イベントの会場は神保町の東京堂書店になる模様。これは行くしかあるまい。ただし、気をつけねばならないことがある。当日、三省堂や書泉にフラリと寄ってしまうと、会場入りする前に荷物が地獄になることは必至である! 今から既に心配しているのさ。くれぐれも買い物は計画的に。

 さて、三回にわたって、第13回本格ミステリ大賞記念イベントの模様を書いてきた。最後まで付き合ってくださった方には御礼申し上げる。ありがとうございました。
 これらの記事でミステリに、そしてこのイベントに興味を持っていただけたなら、これに尽きる喜びはない。
 それでは、また来年。

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Comments:4

tenmama 2013年7月 7日 08:39

拝読致しました。そうそう、皆川先生の全集の冊数の少なさといったら!テーブルを睥睨して仰天しました。多分二巻は二冊ほどしかなかったかと。ほんと、もっと置かないといけませんよねー二冊ですよ、たった二冊!

心に残る素晴らしい時間でした。来年も楽しみです。

サテヒデオ 2013年7月 7日 10:30

tenmama様
 コメントを残してくださいましてありがとうございます。
 そうですか。『皆川博子コレクション』二巻は二冊っきりでしたか。ちなみに、開場と同時に入場なさったのですか? だとすると、最初から用意されていたのがその数ということになりますね。イヤイヤイヤ、いけませんね。
 来年は出版芸術社にも東京堂書店にも、なにより皆川博子女史にも頑張ってもらいたいですね。お見えになるかしら、女史。

tenmama 2013年7月 7日 21:18

そうです、かなり張り切ってテンパって赴きましたので、開場前に皆様と共に並び、そして場内に入った途端に彼の君のブースにまろびでました。で、最初、全集二巻の姿も見られず本気で蒼白に…。なんと、一巻の下に入ってて!なんのドッキリ!?心臓に悪いわー

来年、ついつい期待してしまいます。先生、いつもお変わりなくにこやかで品があり…お会いするたびに小娘のように頬を染めうっとりしてしまいます。来年のことを考えて全集の残り三冊の購入我慢するのか…せっ切ない!

サテヒデオ 2013年7月 8日 21:09

tenmama様
 再びのコメントありがとうございます。
 開場時に二冊きりというのじゃ手に入らないわけですよ。やれやれ。
 ところで、「皆川博子作品精華」はやはり絶版なのでしょうかね? 今更購入するのは無理ですかねえ?
 なにはともあれ一年後。待てば海路の日和ありってやつですかねえ。

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