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もう七月だけどね

 第13回本格ミステリ大賞記念イベント。横浜の有隣堂伊勢佐木町本店別館で催されたトークショー&サイン会について記事にするはずが、ネタを割ることの罪業だのミステリ学習法で受験対策はバッチリだのと要らんことばかり書いてしまって、本来の目的を見失った前回記事。どうしてあんなことになってしまったんだろう?
 今回こそはまともな内容になるように努力する次第。ホント、頑張るッスよ!

 本格ミステリ大賞が本格ミステリ作家クラブの主催であることは、前回の記事で触れた。
 本格ミステリのジャンル的発展を目的に掲げ、本格ミステリ大賞の運営母体として作家自身によって2000年11月3日に設立された本格ミステリ作家クラブ。設立にあたっては十七人の作家が発起人として名を連ねた。そこには今は亡き鮎川哲也氏、泡坂妻夫氏の名前を見ることができる。

 ここからはトークショーの続きです。
 前回記事でも断りましたように、発言者の真意とは異なるかたちでここに提示する可能性がありますので、発言内容に関しましてはその責任の一切は私サテヒデオにありますことを了解くださいませ。
 また、敬称につきましては、「先生」と呼ばれることを厭う方がおられるので、トークショーに限らずこの記事では「氏」とします。

amazon:[単行本] 本格ミステリ鑑賞術 (キイ・ライブラリー)  大学に入学し、憧れであったミステリ研究会に入った大山誠一郎氏と福井健太氏。大山誠一郎氏は京大ミステリ研恒例の「犯人当て」を、福井健太氏はワセミスの性格から小説より評論を、それぞれに活動の重心におく。
 これに先駆けて時代は新本格ミステリの隆盛と迎える。
 京大ミステリ研は綺羅星の如くプロパー作家を輩出する。推薦者の島田荘司の筆になる京都大学推理小説研究会の姿はまさに「虎の穴」のそれであり、その印象から大山誠一郎氏は入るまでビビってたのだけど、実際に入ってみると意外とまったりした雰囲気で拍子抜けしたらしい。
 高校時代からSRの会や畸人郷、関西ミステリ連合に顔を出していた福井健太氏は、多数の作家や評論家を世に送り出しているワセダミステリクラブに入部。本当は小説を書きたかったのだけど、ワセミスはそんな雰囲気ではなかったらしい。
 ここで司会の芦辺拓氏が、「ワセミスは新本格ミステリ勃興時にことさら強く批判してなかった?」と尋ねると、「実はそうでもない。SRとか畸人郷とか怪の会とかのほうがよっぽどだったでしょ?」と返す。これには芦辺拓氏も「そうだった」と認める。
 ワセミスといえば、かつて栗本薫が勇んで入部したものの、すぐ辞めたくらいに恐かったらしい。獰猛なのはワセミスの気風というか芸風なのだろう。福井健太氏にも猛禽の鋭さが窺える。

 大山誠一郎氏は大学中退後、物書きへの思いを断ち切れず、しかしながら直系の先輩作家の存在があまりに大きくて小説家を目指す覚悟までは固まらず、翻訳家へと人生の舵をきる。それでも自分の作品を物することの気持ちは抑えられず。我孫子武丸、二階堂黎人がそれぞれに編集した本に作品が収録され、着実に小説家への道を進む。そして2004年、ついに『アルファベット・パズラーズ』を上梓。これは学生時代に書いた「犯人当て」を改作したものだそうで。
 福井健太氏が評論家としての活動を始めたのは、大山誠一郎氏の作家活動より早い時期。ここで司会者から「年代の近い作家のデビューはどう感じた?」と尋ねられると、「同世代とはいっても、何歳でデビューするかでこちらも感じることは違う」と返答。この素っ気なさは聞いてるコチラがヒヤヒヤしてしまう。もしかしたら、質問内容こそは福井健太氏の執筆テーマなのかも、と勝手に慮るのは完全に心配症。

amazon:[文庫] アルファベット・パズラーズ (創元推理文庫)  トークショーも終盤に入って、司会の芦辺拓氏から壇上の面々に今後の仕事について質問が。いわゆる告知の時間だ。言質を取る、ともいう。
 大山誠一郎氏はこれに答えて曰わく、「密室蒐集家」の続きを構想している、と。これまでに様々な時代を取り上げてきたが、まだ扱ってない時代がある。また、取り上げておきながら時代色を十分に出せていない点が書き手として心残りなので、今後は時代の習俗というものを十分に打ち出した作品を目指したい。また、『アルファベット・パズラーズ』の次に考えているのが、「フーダニット・ワンダーランド」というタイトルだと発表。ちなみにこのタイトルは、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に触発されたそうな。ハードボイルド・ワンダーランドがあるならフーダニット・ワンダーランドがあってもいいでしょ?
 大山誠一郎氏は他にも、スコットランドヤードの「黒い博物館」を日本に持ってきて「赤い博物館」とし、そこを舞台にした作品を書きたい、と。また、自分は長編より短編のほうが書きやすい。エドワード・D・ホックと同じタイプかな、と自覚しているとのこと。
 福井健太氏は、これまでと同じようにレビューと評論を続けてゆく、と。ただし、氏の守備範囲はミステリに限らない。漫画やアニメに対しても評論活動を行っていて、むしろそこを本拠地としていると公言するほど。それを踏まえて「漫画やアニメのオタクなので、その方面と絡めた企画をやってみたい」と表明するも、その実現には高くて厚い壁が立ちはだかるのを承知していて、「アニメはともかく漫画は版権の問題があって」とトーンダウン。
 それでは、と「ミステリ的見地から注目している漫画やアニメの作品はありますか?」との司会者が問いかけたところ、評論家はいろいろと答えたのだが、そもそもこの受賞者は早口であるため、この答えに限らず聞き取れないことが多かった。聞き取れた範囲で先ほどの問いの答えは、「麻雀漫画がミステリの持つ論理の魅力を有する」とのこと。これについては麻雀をやらないので「そうかもしれないなあ」と思うだけ。実感がいまひとつ伴わないのが残念。しかし、麻雀漫画の新たな読み方を提供した点で評論家としての面目躍如とはいえよう。アニメについては、個別の作品でミステリ文脈をもって語るというのは難しい、と。大ネタを仕込んだアニメもあるにはあるが、ミステリとして期待するまでもないらしい。
 ほかにも注目のアニメで「ダンガンロンパ」がどうのこうのいっていたけど、これについてはさっぱりわからない。アニメは、特にテレビアニメはホントに観なくなったなあ。
 ちなみに、今後の仕事について山田正紀氏、太田忠司氏、鳥飼否宇氏もそれぞれに答えたのだけど、なかでも山田正紀氏の言葉が心に残った。このベテラン作家は、「この年齢になると、若い頃に読んだものへと回帰してゆく」と吐露し、その流れで「昔の自分に戻ろうかな」と。含蓄のある言葉だとは感覚的に思うものの、まるで実感できないのは、己の不明を突きつけられているようで忸怩たるものがある。「回帰」を自覚するには、そもそも前に進んでないだろう、と。

 今回の受賞作品について太田忠司氏が述べたのは、二冊ともに本格ミステリ隆盛の今だからこそ出版されたのだろうということ。出版市場には、とりわけミステリのジャンルにはメインストリームから外れた作品を受け入れるだけの懐の深さがある、というわけだな。納得である。続けて、やや強い口調で「だから、最近のミステリ衰退の風聞なんか嘘!」と断言した。これも納得である。「旅」と「謎解き」は、今後も決して廃れることなく物語の題材にとられることだろう。
 鳥飼否宇氏は、大山誠一郎氏と福井健太氏の二人がともにミステリ研究会に入るために大学を選んだことに感慨無量といった様子。それだけ、それぞれのミステリ研究会が輩出した作家が魅力的だったのだろう。先を行く者が後に連なる者たちを引き寄せたのだなあ。憧れの対象は、次に目標になる。目標は高く設定するのがよい。先輩作家は後輩たちのため、良き目標たらんと常に高みを目指しているのだろう。

amazon:マルアイ 藤壺色紙 画仙 10枚パック  トークショーの後は恒例のお宝抽選会。
 このイベントは、書店の一部スペースを会場にあてていることからわかるように、「本を売る」というこれ以上ないくらいにシンプルな経済原理が働いている。ただし、これも本格ミステリのジャンル的発展を願う気持ちがあってのこと。とにかく、まずは本を手にとってもらう。そこからはじめる。
 会場で本を買うと、一冊につき一枚、抽選籤が手渡される。籤には数字がふってあり、これが抽選番号となる。だから、本を買えば買うほど抽選籤を受け取れる、ということ。
 あとは説明するまでもない。抽選籤に対応する札をボックスの中に入れておき、抽選のたびにこれを引く。うん、シンプルだ。
 たくさん本を買えば、そのぶんだけ籤を手にするわけだから、つまりは当選確率が上がる。これまたシンプルである。
 この抽選会からユニークな点を探すとすると、それは景品である。「お宝」と銘打つだけに日本の市場に出回らないもの、店頭には並ばないもの、サイン入り、あるいは非売品といったファン垂涎の品ばかり。これらを鼻先にぶらさげて「欲しけりゃ本を買いな」とけしかけるのか外道。そう思われる向きがあるかもしれないけれど、本当のところはそんなことを気にしながら本を買う者などいやしない。
 本を買う理由のもっとも切実なものは、お宝抽選会の後に控える合同サイン会にある。大好きな作家にサインを入れてもらう。ただそれだけのために既に所蔵しているのと同じ本をここで再び購入する。ダブろうがどうしようが無問題。肉筆為書き落款万歳!
 サインが入っていようがいまいが、本の内容は一文字も変わりはしないけど、満足度は天井知らずである。生きてて良かった、来年もこのイベントには参加しよう、万難を排してでも!
 だから、お宝抽選会は当たったら嬉しい、という程度の心構えなのだ。外れても「まあ、仕方ないか」とすぐに気持ちを切りかえられる。いや、ホントのところ、悔しいし羨ましいけどね。特にサイン色紙は!
 このサイン色紙がお宝の中のお宝。例年、イベント前日は本格ミステリ大賞授賞式が催されるのだが、その式場で作成されるのがこのサイン色紙だ。本格ミステリ作家クラブ会員による寄せ書きなので、正しくは寄せ書きサイン色紙とするべきだろうか。
 これは末代までの家宝とするべき代物だ。決して空気に触れさせてはならない。手袋着用で扱わなければ罰があたる。
 でもって、ご想像のとおり外れたさ! アッハッハッハァ!

 お宝抽選会で本格ミステリ作家クラブ会員寄せ書きサイン色紙に外れたサテヒデオ。残すは合同サイン会となるのだけれど、ここでサイン画像をアップするなんてことはしない。
 ただ、書きたいことがまだまだあるので、サイン会の模様については次回の記事で!
 いやあ、本格ミステリ大賞のイベントで三回分の記事になるとはお釈迦様でも思うまい。こういう余計な文章がスッキリと纏めることの邪魔をしているのだな(この文章も!)。

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Comments:3

tenmama 2013年7月 4日 12:04

あの日のことがフラッシュバッグするようです。あと一回続くなんてラッキー!三部作だったんですね!わくわくー

サテヒデオ 2013年7月 4日 21:40

tenmama様
 コメントをくださいましてありがとうございます。
 三部作ではありません。三回にわたってダラダラ続いてしまう、というのが本当のところ。一回で済ますつもりだったのですよ。
 でもって、三回目の記事はまだ纏めきれてないのです。いつ更新できるのかは神のみぞ知る!
 あ、それとフラッシュバックです。フラッシュバッグというとピカピカ光る鞄みたいで、この夏に流行るだろうオシャレなアイテムっぽいですね。
 さあ、のたうちまわってください。

tenmama 2013年7月 5日 09:45

ご指摘ありがとうございます!私、会話でもそうですが、文章でも言い回し及び言葉の使い方、特にカタカナ関連は周りを青くさせるくらい雑です。慌てて生きているので直りません、治したいのに。きっちり指摘して下さるサテさんにはいつも感謝です!(以前分子と分母を逆に書いて鋭く突っ込まれたウロな記憶が)フラッシュバッグ、娘が喜びそう!

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