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冷たくて美味しいよ

amazon:[単行本] 妖怪事典  何も考えられないところに行商の声。
 この夏はそれほど長くない人生において最低最悪とことんワースト記録。ストレスで胃は痛み、そこへもってきてこの暑さ。名古屋って最低で最悪。
 知多半島と渥美半島に抱きかかえられるようにして上陸するのは、太平洋上で何もそんなにまでというくらいに温められた空気。これが内陸まで流れ込んで、北部の山並みに流れをせきとめられる。結果、濃尾平野に熱気がこもって、まさに天然サウナ。空気が手に触れそうなくらいにネットリと重い。この暑さが気力と体力をガシガシ削り取る。夏ってこんなに苦しかった?
 ジメジメと鬱陶しいのは暑さだけではない。名古屋という土地柄がどうにも暑苦しい。こんな所に来てしまって、本当に失敗した。
 大学時代から付き合っていた彼が結婚を機に父親の会社に入る。いずれは後を継ぐのだから、と社長夫人のヴィジョンを頭に思い描いたのが大きな間違い。当の会社は別段ショボいわけでもブラックなわけでもなくて、その点に関しては騙されたわけじゃないけど、名古屋に拠点を持つというだけで糞だ。
 まず見世物としか思えない結婚式と披露宴、それにまつわるアレやコレ。でもって何を話してるのかさっぱりわからない。名古屋弁は噂にきくほどミャーミャー鳴くことはないけど、妙に間延びする発音の一方でガチャガチャまくしたてる。東京では訛りを感じなかった夫が、今やわけのわからない言葉を話す。ダガヤって何?
 誰も彼もが個人的な事情を知りたがり、でもって実際に知っている。プライバシーが全然無い。なぜ初対面の人が私の経験人数を正確に知っているの?
 そして見栄っ張り。そのくせケチ。お茶した後のレジ前、財布を手に払うの払わせないの押し問答。でもその実は誰も支払うつもりはない。ホント面倒くさい。
 いやホント、マジで来るんじゃなかった。
 行商の間抜けな声が聞こえる。何を売っているのだろう。イントネーションはおかしな感じだけど、口上はさすがに訛り全開ではない。
 ヤロカァミズ、ヤァロカァミィズゥ。
 てっきり蕨餅かと思っていたのが、ヤロカミズ。やろか水?
 この地域の名産品なのかな。行商で売り買いされるのだから日常で食されるものなのだろう。ういろうみたいなのはイヤだなあ。甘ったるい練り菓子を思い浮かべて、でも涼しげな商品名に期待をしてしまう。暑気払いできるなら何でも飛びつきたい。
 口上が思いのほか家の近くから聞こえて、思わず窓を開いて呼び止めていた。口からスルッと出たのは、自分でも考えもしなかった言葉。

「寄越さば寄越せ!」

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