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金の斧と銀の斧

「お前が落としたのは、こちらの金の斧か? それともこちらの銀の斧か?」

 いえいえ、どちらかというとレビューブログです。
 文字ばっかり。
 読みやすいように改行を施したり記事の内容に関連する画像や動画を貼り付けたりするわけでもなく、ただ文字が連なるばかり。そのせいで画面が黒い。
 こんな所に行ってきたよ、こんな物を食べたよ、といった情報は勿論のこと、記念のスナップも掲載しない。そもそも日記めいた内容から加速度的に離脱しつつある。
 実は去るゴールデンウイークにおいてレジャー三昧の一日を過ごしたのだが、この日のことをブログでは取り上げなかった。友人に連れられて台場でガンダムと再会したりテレビ局の球体展望室に迷い込んだりオクトーバーフェストでドイツビールを堪能したりして、比較的話題になりそうな出来事が盛り沢山。また同日、東京タワーの外階段をヒイフウ云いながら登って降りるなんていう強行軍を強いられて、レジャーというより苦行の様相を呈していたのだけど。
 でも、イベントを詰め込んだ一日だったにもかかわらず、それについてブログでは全く触れなかった。アホほどカメラのシャッターを切ったのに、現時点でパソコンにデータを移してさえいない。その手間すら惜しんでいる。
 生来の怠慢についてはこれを否定しないけど、その自分でも「これってブログのネタになるなあ」などと考えてはいたのだ。でも、結局はチラとも触れない。この日のことについては疲れすぎていて何か書く気力も尽きていたということもあるけど。
 日常生活のあれやこれやを書かないのに、ブログのカテゴリには「日常」がある。看板に偽りあり、である。私だって何かしらイベントがあればそれについて触れないこともないのだ。そうはいっても怪談関連の講演会かサイン会くらいのものだけれど。しかも画像は無し。
 我ながらどうにも無愛想なブログだと思う。噛んでも味がしないというか。

 岩崎書店の怪談えほんシリーズは、現在のところ第一期が五冊刊行されている。
 そのうちの三冊、『いるの いないの』『ゆうれいのまち』『ちょうつがい きいきい』についてそれぞれレビュー記事を書いた。
 その記事のほとんどがレビューのこのブログ。しかし大部分は映画について語ったもの。本を取り上げた記事は少ない。
 理由は単純。私のレビューを読むより実際に当該図書を読むべきだから。すべては作者が文字で記してくれている。私の文章を読むより当該図書を読むべきだ。作品に対する理解を一発で深められる。
 映像には言葉によって固められない情報が溢れている。そこで提示される物事は「説明不足」と表現してしまうと語弊があるけれど、"行間"を自由に読むことが可能である。このことから、つまり映画観賞には誤読の入り込む隙間があるのだ。だから自由気ままに思い込みと印象批評を書き連ねられる。だってそう思ったんだもん、って。
 読書であっても誤読の入り込む隙間はあるだろう。現に私は誤読をしまくっている。ならば映画を観るのと同じように本を読んで思ったこと感じたことを文章にすればよい。しかし、私は読書後のレビューをなかなか書かない、書こうという気持ちにあまりならない。誤読は誤読でそれとして、映画と本との区別なくその誤読具合を開陳すればよかろう。それなのに。
 これについて強いて理由を挙げるなら、それは私が"ミステリ者"であることだ。私はミステリ作品をよく読むので、ネタを割ること・犯人の名を明かすことへの禁忌が刷り込まれているのかもしれない。映画のレビューではネタ割りまくりなのに。
 どうにも煮え切らないなあ。
 とにもかくにも、読書は好きなのだけれどブログで取り上げるのには前向きになれない実情がある。それなのに怪談えほんは三冊もレビュー記事を書いている。これはなぜか?
 絵本であることが誤読の自由度を増している。文章も絵もそれぞれに対する説明としてそこにあるわけではない。それぞれが提示する情報はすべての読者に届くわけではない。気付けばよし、気付かねばそれもよし。
 読書において普通に起こり得る誤読。読者一人ひとりのアンテナの感度の差異によってそれが生じる場合があるが、絵本を読む際には程度のよりいっそう大きな誤読が生まれることも。
 それが良い。その点が面白い。解釈を一本に絞らない懐の大きさと深さが絵本にはある。誤読を許さないならば、六法全書の如き文体を用いるがよい。どう解釈しようとそれは受け手次第。
 このように割り切って本のレビューを書いてゆければよいのだけれど、そこまで男前に徹しきれない。

「あなたが書いたのは小説家のサインの入った怪談えほんのレビューですか?」
「いいえ、違います」
「それでは画家のサインが入った怪談えほんのレビューですか?」
「それも違います。私は誰のサインも入っていない怪談えほんを読んで、それについてブログで取り上げました」

 同じ刺激を受けてその反応が人によって異なるように、映画や本に対する感想や評価が人によって異なるのは当然。
 映画観賞も読書も、とどのつまりは個人的体験だ。何を思い、どう感じるかは人それぞれ。そこにその人となりが表れるというわけだ。
 そもそも取り上げる作品から、ジャンルの嗜好や志向について白状しているようなものである。
 だから、私が日々どのような生活を送っているかを書くより、作品に対するレビューのほうがよっぽど私自身を丸裸にしているといえよう。心のストリーキングである。
 そうなのだ。だから、どこへ行っただの何を食べただのといった瑣末な事柄をブログに記す気持ちになれないのだ。
 とはいうものの、基本的に気分で生きているので、それこそ気分次第でコンテンツの方向性が変わるかも。日記ブログへの方向転換?
 いやあ、それはない。

amazon:[単行本] いるの いないの (怪談えほん3)  自由な解釈を錦の御旗にして暴走する誤読。それは怪談えほんを取り上げた記事でも遺憾なく発揮された。『いるの いないの』では"おばあさん"を鬼婆扱いし、あまつさえ愛らしい猫をつかまえて不確定性理論の成れの果てと断じる。『ゆうれいのまち』では、神隠しに遭った少年が壺から壺へ終わりなき旅を続けるのを見送った。『ちょうつがい きいきい』では運命が断末魔の雄叫びをあげるのを聴き、時を越えて兄を追いかける妹の姿を視た。いずれも絵本にはそれと明示されていない。
 版元がレビューコンテストを開催したこともあって、小説家と画家によるWサインの入った本欲しさに暴走に拍車がかかったのは確かだ。むしろ迷走と表現すべきか。
 解釈は人それぞれ自由、好き勝手に妄想を逞しくすればよい。ただし、それを発信するとなると頭の中身をぶちまけてよいものか少なからず躊躇する。自分の考えは絶対だとも思っていない。よしんば自分が正しいと思っても、それをそのまま言葉にするほど自信家ではない。韜晦の厚すぎるオブラートにくるんで表現するだろう。 はっきりさせるのが必ずしも良いわけではない。怪談えほんにそれぞれ描かれているのは、明示されない事柄が想起させる薄ぼんやりとした恐怖の輪郭であり、はっきりさせてほしいと願うのは野暮天というもの。 まあ、かくいう私は野暮の東日本代表のようなものですけどね。 好きな作品をきっかけに語りたいことを綴っているだけ。映画には好き勝手語れる隙があるけど、本には作者の言葉がみっしりと詰まっていて、私が口を挟む余裕がない。つまり私より作者の声が大きくて、だからそれに対抗してまで自分の云いたいことを吐き出す気力がないのだ。
 実際に当該図書を読むほうが理解度云々やミステリ者としてネタを割るのは禁忌云々は、だから本当のところは逃げ口上だったのだ。実はサテヒデオはただの屁垂れというだけ。それを隠そうとして失敗したのだ。まあ、自分で吐き出したわけだけど。
 なんで自分から明かすかなあ?

 怪談えほんは今のところあと二冊出ている。宮部みゆきと吉田尚令の『悪い本』、皆川博子と宇野亜喜良の『マイマイとナイナイ』。これらをレビューコンテストとは関係なく取り上げたいものだ。
 さあ、二冊を買うところから始めよう! よく云うではないか、「まずは隗より始めよ」と。

 ダジャレでドーン!
 めでたいことがあったので、嬉しさのあまりただでさえおかしい頭がいつもよりもっとおかしなことになってしまっているようです。鼻歌まじりです。広い気持ちで見守ってあげてください。

 結局、今回の記事も画像は載せないのね。
 こういうブログなんです。よろしければまた寄っていってください。

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Comments:2

tenmama 2012年5月28日 15:16

サテさんの文章を拝見していて思うことは、非常にサービス精神にあふれた方だなあということ。作品に対しても思ったことを紆余曲折しながら、我々読者に誠意もって伝えようとなさっていますよね。これからも、フィーリングで、その時思ったことを書きたいように書きつらねていられるので良いかと思います。

メデタイことがあったとのこと!(ナンダロ!??)まずはオメデトウございます、いいなあ、私も浮かれるようなこと求む…

サテヒデオ 2012年5月29日 10:01

tenmama様
 コメントくださいましてありがとうございます。
 お褒めいただいているようではありますけれども、そんなたいしたものではないです。紆余曲折を繰り返して袋小路にはまりこむ、でなければよいのですが。そもそもてんで論理的ではないくせに妙に理屈っぽいのでいろいろと言葉を重ねてしまいます。語り過ぎない微妙な加減が、実に難しいのですなあ。
 ところで、メデタイとは「例のアレ」でございます。

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