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本日はお日柄もよく

「REC/レック3 ジェネシス」公式サイト  神保町は日本教育会館一ツ橋ホールにて「REC/レック3 ジェネシス」を観た。
 前二作を監督したジャウマ・バラゲロは本作では製作にまわり、前二作でも監督として名を連ねていたパコ・プラサが単独で監督を務める。ジャウマ・バラゲロの名前に注目していたから、パコ・プラサなんていう文字列に気付かなかったよ。
 本シリーズは、ゾンビを彷彿とさせる感染と変容の恐怖を題材にしたホラー映画である。第一作はわけのわからないまま逃げ回るしかなかった観客も、第二作で異常事態の真相を知る。
 狂犬病のような凶暴化と比類なき感染力の強さは、それが"悪魔憑き"の脅威だという。
 ブードゥーの秘術や宇宙線、化学兵器といった理由付けがゾンビ作品には為されてきたが、ついに悪魔を担ぎ上げたか。"悪魔憑き"の新たな表現を生み出したのは素晴らしいことだが、"悪魔憑き"だけに次の展開は"悪魔祓い"になってしまうのが予測できて、それはゾンビ型ホラー映画からの離脱を示すようで、このタイプの作品を好むだけに勿体なく感じる。
 シリーズ三作目は神の使徒が悪魔とその傀儡と対決するものと予想していたのが、舞台は結婚式場という。
 純白のウエディングドレスが鮮血を浴びて深紅に染まり、花嫁がケーキカットナイフをチェーンソーに持ち替えての大立ち回り!
 えっ、ナニそれ?
 何がどうして大転回。よくわからないけど余興に「てんとう虫のサンバ」を歌うことになっちゃった。

 さて、本作は現時点で公開前である。ネタを割るのは避けたいが、本作について思うところを語るならばある程度はネタを割らざるを得ない。本作の観賞を楽しみにしている向きは、ここから先を読み進めないことだ。いろいろと明かしてしまっている。
 というわけで、「いろいろと語ってしまうくらい面白かった!」ということだけ胸に残して、さあ、「戻る」を力強くクリック!

amazon:[Blu-ray] REC/レック  愛し合う二人の門出の日。結婚式場には二人を祝う親類や友人知人が詰めかけて、幸せな気分を盛り上げて共有して。新郎新婦は集まってくれた顔ぶれを眺めては来し方に思いを馳せて行く末に希望を見る。
 この日だけは信じられる。人生は素晴らしい、と。
 イヤイヤイヤイヤ、奥さん、人生ってヤツぁ一寸先は闇ですよ。
 教会での結婚式は厳かななかにもアットホームな雰囲気が満ちており、思い出すたびにあたたかな気持ちになるような良い式である。
 今日のこの慶事を出席者全員が祝っていた。晴れ渡る空の下、若い二人の明日に不吉を兆すものなど何もなかった。花婿の叔父が右手を犬に咬まれたとのことだが、これは軽傷のようだ。本人も心配は要らないと云っている。
 披露宴会場は若い二人が門出を飾るには豪華。来客の数も多くて、親族や友人知人との親密度、そして新郎新婦の人徳を窺わせる。
 宴が盛り上がりを見せるさなか、犬に咬まれたという叔父がホール吹き抜けの二階部分から落ちた。妻が駆け寄ると男はやにわに起き上がり、辛苦をともにした女の首筋に噛みついた!
 二次会の開幕だ。

amazon:[Blu-ray] REC/レック 2  主演女優のレティシア・ドレラが見事なスクリーミング・クイーンぶりを披露していて、完全に心を射抜かれた。線の細さを感じさせる面立ちに表情豊かな大きな瞳。この瞳が幸福と混乱と絶望と覚悟を雄弁に語る。マスカラが滲んで目のまわりを黒く汚してさえ、その美貌に翳りは生じなかった。
 この「REC/レック」シリーズは、とにかく出演女優が素晴らしい。アンヘラはかわいいしクララは美しい。「両手に花」ということでスペイン女性万歳を叫ぼうとすると、頭に浮かぶのは本作に登場する、肉感的すぎる健康美女の群れ。黒い三連星ばりの圧倒的な存在感。愛敬はあるけれど両手広げて抱きつかれたら圧死するかも。
 それが"感染者"となって襲いかかってくる。その顔に愛敬など微塵も浮かんでない。こうなるとただの脅威だ。
 門出を祝いに集まってくれた顔ぶれは友人知人を含めて身内と呼べる間柄だが、"感染"してしまっては敵でしかない。彼らとの思い出も親愛の情も振り切らなければ攻撃の手が鈍る。そうなれば今度は自分が危うくなる。
 キリスト教によって在り方をモデリングされた家族の破壊。それをするために悪魔憑きは結婚披露宴会場に現れた。教会では神妙にしていたのが、宴の席では大暴れ。サバトの狂乱を彷彿させるパーティーの様子に浮かれたのかもしれない。
 本作のテーマは「愛」だ。執着にも似た「愛」を捨てられない人間の姿を、惨劇のなかに悲劇と喜劇の要素をちりばめて描いている。身内が変容して敵となったり避難しようとバスに乗り込んだ子どもたちが襲われたりする悲劇的展開と、"スポンジ・ジョン"や補聴器に代表される喜劇的要素、これら対照的な要素が不思議に共存するところがホラーというジャンルの面白さかもしれない。
 対照的というなら本作の流れもそうだ。神の許しを得て新たな共同体が誕生する神聖なる日に、これ以上ないほどの穢れが襲いかかる。幸福な未来への門出のはずがそうはならず、これも皮肉な展開だ。ただし、病める時も健やかなる時も最期までともにあったことだけは誓いの通り。ただし、誓いを象徴するリングは手放してしまったけど(アレを「手放す」と表現してよいものか悩むよなあ)。
 万感の想いを込めたキスと手に手をとっての旅路はロマンティックであり、その前後の流れはホラーとして最高の結末である。キスによって変容を示す点は、前作の最後でアンヘラ・ビダルとトリスターナ・メディロスとの間で交わされるキスの踏襲がある。二人の間の"交歓"といい、映像としても似通ったところのある場面だが、その後のアンヘラとクララの境遇には明確な違いがある。これも対比だ。

amazon:[Blu-ray] REC/レック3 ジェネシス スペシャル・エディション  結婚式と披露宴。素人カメラマンが猫も杓子もカメラを片手に撮影しまくる。また、奮発すればプロのカメラマンに撮影を依頼することができる。P.O.V.(ポイント・オブ・ビュー:主観撮影)のフェイクドキュメンタリー手法を使うには絶好のシチュエーションだ。
 なるほど、考えたものだな。三作目にして大幅に変えてきた設定の数々に感心していると、カメラマンの機材が花婿にあっさり破壊される。そして画面は暗転し録画状態を示す赤いランプが点る。
 ようやくオープニングだ(なんとまあ長いプロローグなんだ!)。そしてこれはP.O.V.の縛りからの解放を意味していた。
 本シリーズはP.O.V.による映像演出が大きな特徴であり、第一作目はそれが話題として取り上げられたわけだが、P.O.V.であることの新鮮味は今や薄れ、これが続くことで演出の幅が狭まるばかり。ならばいっそP.O.V.を放棄してしまおうということだろう。
 これは英断である。形式上はシリーズタイトルの「REC」とは合致しなくなるかもしれないが、要は本質を見失わなければよいのだ。
 それでは、「REC」シリーズの本質とは何か?
 それは恐怖の追体験であり、恐怖の共有である。本シリーズの撮影者はしばしば「知る権利だ!」と叫んで撮影を続行するが、この行為が意味するところは"情報の共有"である。ジャーナリズムの向かう"情報の共有"は、社会を正しい在り様へと導くだろう。しかし本作における"情報"とは、恐怖そのものの記録であり、そして観ている者に恐怖を喚起させるものにほかならない。
 映像記録によって共有され追体験される恐怖。それは恐怖の蔓延を引き起こす。この事態からのびる矢印が示すのは、パニック。
 社会体制の崩壊。キリスト教的家父長制を統治の基本としている社会は少なくない。ヨーロッパには神学を頂点に戴いた学問の体系があり、現代社会はそこから地続きだ。それがパニックに陥る。
 キリスト教の影響を大いに受けて発展した社会は、悪魔にとっては滅ぼすべきものだ。自分がそうされたように、地上から抹消せねばならない。社会の最小単位である家族から国家、果ては人間という種そのものが攻撃対象と考えられる。本シリーズで描いているのは、キリスト教会によって悪魔とされ"暗闇の牢獄"に幽閉された存在の復讐である。
 闘争の過程でキリスト教会に悪辣な行為があったとして、そして万が一にも悪魔の側に大義があったとしても、人類がこれまで通りの日常を享受するには劇的なまでのパラダイムシフトを受け入れられない。善とか悪とかは別にして、人間社会はキリスト教抜きに成立できない。社会は今やその程度には固定してしまっているのだ。
 クララが地下道から続く出口に逃げ出さず日常の象徴たる夫のコルドを求めたのは、つまりはそういうことである。
 結婚に際して女性が思うのは、以下のようなことだろうか。
 平凡な日々であったとしても夫と二人で楽しく暮らし、そのうちに子どもにも恵まれて忙しさや気苦労に悩まされ、それでも家族が幸せでいられる。それが一番。多くは求めないし欲をかいては却って不幸を感じてしまう。まして天地がひっくり返るほどの変化を求めているわけじゃない。普通でいい、普通が一番。
 だから今日のこの日だけは私は平凡な女じゃない。今日こそは私が主役なの!
 主役は確かにクララである。通常であれば「夫と一緒にいる」というささやかな願いを、命懸けで実現するために披露宴会場を彷徨う。その道程でクララは日常を再開するために必要なピースの一つひとつを失ってゆく。なかには彼女自ら捨てたものも。最後に残ったのは、夫と新たに宿った生命。
 彼らさえいれば日常を取り戻せる。三人で抱きしめあって生きてゆける!

 恐怖の共有と恐怖の追体験、恐怖を蔓延させるにはそれに相応しい人物配置と筋書きが必要だ。
 悪魔憑きは野に放たれた。感染の速度は瞬く間であることが明らかとなった。事態は確実に悪化の一途を辿っている。

amazon:[文庫] リング (角川ホラー文庫)  何をテーマに掲げても、「REC/レック」シリーズはホラーである。お化け屋敷とジェットコースターの怖さとスピードを感じさせてくれる。
 こうなると楽しみなのが「REC/レック4」だ。噂によるとシリーズ完結編だという。シリーズは四作品で起承転結を完成させるというわけだ。今から見事な結末となるのを期待している。
 今から「REC/レック4」の展開を予想すると、シリーズ最終章で描かれるのはキリスト教会と悪魔との最終決戦だろう。本作で示された悪魔憑きへの対処方法は、通信機器による伝播の有効性を裏付けるものだ。そこで思い出されるのは前作までのヒロインだ。テレビ局勤務の彼女が"選ばれた"のには理由があるに違いない。
 アルマゲドンはこれ以上ないほどに劇場型の様相を呈することになるだろう。マスコミを利用した呪詛と福音の応酬か? それとも空気感染以上の「リング」式感染でパンデミックを起こすのか?
 いや、マスコミさえも必要ない。今や一般人であろうと撮影と編集ができてインターネット上で公開できる世の中だ。リアルタイムで動画を発信できる環境すら特殊なものではない。恐怖も呪いも世界の隅々まで届けられる時代なのだ。
 本シリーズがP.O.V.を用いてきた理由も、勝負の趨勢を示す意味で明らかとなるかもしれない。

 本作は公開日から333日間、誰でも1000円で観られるキャンペーンを実施するとのこと。
 シリーズ完結編の「REC/レック4」の日本上陸を確かなものとするため、私サテヒデオは本作「REC/レック3 ジェネシス」を応援するものである。
 どうか花嫁の美しい姿を観に映画館まで足を運んでほしい。いささかケチャップ風味なのは最近流行のトマトダイエットに便乗したもの?

 このホラー映画、ドレスコードあり。

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