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我が青春はあの大空とともに

「ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵」公式サイト 「ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵」を観た。
 白泉社はヤングアニマルに不定期連載中、三浦健太郎による日本ダークファンタジーの金字塔である「ベルセルク」が原作。
 また、「ベルセルク」は日本テレビ系列で深夜、「剣風伝奇ベルセルク」のタイトルで放映していた。このテレビアニメ化は、深夜とは云え地上波で夥しいほどの流血場面を真っ向から描いたとあって、国内外を問わず広く好評を博した。このときは原作における"蝕"までをアニメ化した。その完成度の高さから、"蝕"以降のアニメ化を待つファンの声は大きい。

 冒頭に攻城戦があり、その模様がどうにも心奮い立たせてくれる。この場面で一介の傭兵にすぎないガッツが「三十人斬り」で知られるパズーソを斃し、その様子をグリフィス以下「鷹の団」の面々が眺める。ここに彼らの縁は繋がって、戦の後に多額の報酬を受け取ったガッツを団の一部の跳ねっ返りが襲う。馬上の敵を多数討ち取るガッツに隊長格のキャスカが挑むも、膂力に勝る相手の勢いに対して劣勢にまわらざるを得ない。そこに「鷹の団」団長のグリフィスが現れて、一撃でガッツを倒す。
 グリフィスとの決闘に敗れて、ガッツは「鷹の団」に入る。それから三年後、「鷹の団」は戦場では誰ひとりとして知らぬ者のない戦闘集団となっていた。
 彼らはミッドランド王国に雇われており、戦場における目覚ましい活躍が国王に認められて、「鷹の団」は正規軍として召し抱えられ、先陣の栄誉を賜るまでになる。いくら戦巧者とはいえ平民出の傭兵上がりが急激な出世をするのを、家臣の中には面白く思わない者も存在して。
 ある日の攻城戦。勝ち戦は決まったが部下が掃討に手間取っているのを不審に思い、ガッツは城内をひとり進む。ガッツ隊の帰投に遅れが生じ、グリフィスは増援に向かう。この城には伝説の軍人、「不死のゾッド」が与しているという噂がある。ゾッドは、もう二百年の昔からその勇名が伝わる強者だ。実在するとは思えないが、念のために加勢に行こう。
 ガッツが斬りつけた相手は見る間に巨大化し、牛の角と獅子の頭を持ち、全身を黒い毛に覆われた怪物へと変化した。人語を解し、また語り、ガッツとの闘いを歓ぶその存在こそ、「不死者ゾッド」の正体だ。この異常事態に防戦一方のガッツだが、そこに救援に現れたのはグリフィスだ。自分に手傷を負わせられる人間に二人も出会えた歓喜に猛るゾッド。二対一とはいえ怪物相手に劣勢にまわるガッツとグリフィス。柱に叩きつけられたグリフィスにゾッドが止めの一撃を入れる寸前、グリフィスの首元から彼がいつも下げているベヘリットが。それを見た途端、ゾッドの動きが止まる。なぜ真紅のベヘリットをこの者が? 何に思い至ったのか、ゾッドは哄笑すると翼を生やして飛び去った。謎の言葉を残して。
 新参者の栄達を面白く思わない王弟は狩りに乗じてグリフィスを亡き者にしようと画策するが。

amazon:[Blu-ray] ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵  原作漫画はまだ連載中であり、2012年1月現在で単行本は36巻を数える。映画化は第三章まで製作が決まっており、三章の最後はおそらくは"蝕"までだろう。それは「ベルセルク」という壮大なサーガの序盤までの内容にすぎない。つまり原作漫画から、かつてテレビアニメ化で描いたのとほとんど同じ範囲を抜き出したにすぎない。確かにおさまりはよいけれど、ファンはその先の映像化を望んでいる。
 興行成績如何では第四章以降も続くかも、ということだが、果たしてどこまで信じられることか。それでも信じて待つしかないのよね。

 死体の腹から産まれ、育ててくれた男を殺し、戦場にしか生きる場所を見出せず、その境遇から自分以外の何者をも信頼せずに生きてきた男が、ひとつの出会いをきっかけに生き方を変えてゆく。本作は、一匹狼の傭兵であるガッツがグリフィスと出会ってその魅力に惹かれ、「鷹の団」切り込み隊長として活躍するまでとなった顛末を描いている。
 本作の副題にある"黄金時代"とは、惨めな幼少期と苦難の日々が続く復讐の時代に挟まれて、生涯で唯一、ガッツが生きることの喜びと充実を味わった期間を示している。これは「鷹の団」も同じで、ガッツ加入によって戦果をいっそうに積み上げるようになり、その名を戦場に轟かせた。団は一国の正規軍に取り立てられ、果ては「白鷹騎士団」の名さえ与えられようか、という境地に至る。「鷹の団」の全盛期はグリフィスの栄達と歩調を合わせているわけで、つまりはグリフィスの黄金時代でもあるのだ。
 彼らの黄金時代はガッツとグリフィスの決闘から始まる。邂逅時と同じくガッツの敗北で終わったそれをグリフィスは後に「喧嘩」と表した。そして、あの喧嘩は楽しかった、と振り返る。ここにグリフィスのガッツに対する思いが仄見える。
 グリフィスはガッツに向かって「お前は俺のものだ」と云い、確かにガッツはグリフィスの配下にあるのだが、他の団員のそれとは異なる結び付きがこの二人の間にある。それをキャスカは敏感に感じ取っている。グリフィスが時にガッツを特別扱いするのは、有能だが気難しい部下を手懐けるのとは意味合いが違う、と。自分が望んで、しかし決して立てはしない場所にこの新参者はやすやすと立ってのける。グリフィスの隣に。
 グリフィスにとってガッツとの決闘は喧嘩と呼ぶ相応しく、そしてガッツは喧嘩するに値する男なのだ。喧嘩相手は主従というよりも互角の関係である。だからその喧嘩は、少なくともグリフィスにとっては心地好さすら感じられるものだった。
 ガッツとグリフィスの関係は友情で結ばれているとしか思えないのだが、二人とも他者と友誼を結ぶという経験がない。だから自分たちの関係が一般的に友人と捉えられることに、二人ともが気付かない。その境遇から誰とも信頼関係を築くことのできなかったガッツと、その高い能力とカリスマ性から対等の立場で自分と付き合える者のいなかったグリフィス。孤独と孤高、二人がともに友人の何たるかを知らなかったことが、後に悲劇を齎すことになる。

amazon:figma ベルセルク ガッツ 黒い剣士ver.  グリフィスとシャルロットの会話がガッツの心を貫く。「夢」と「友人」についてのグリフィスの見解だ。
 ガッツはグリフィスから依頼された汚れ仕事で心身ともに傷付いていた。グリフィスは最も信頼のおけるとしてガッツにユリウス暗殺を任せたのだが、これは「鷹の団」団長から部下への"命令"だったのか、それとも肩書きだのを無視した個人間の"頼み事"だったのか、傷心のガッツにとってはこの点が重要だった。自分はグリフィスにとってどんな存在なのだろう?
 奇しくもキャスカが抱いている悩みとガッツのそれとが合致したわけだ。そしてグリフィスがシャルロットに語った内容から、ガッツはその思いを改める。グリフィスと並び立つ存在に、並び立つことを認められるような存在になりたいと願うようになる。自分はグリフィスの友人になりたい、と。空高く飛ぶ鷹を見上げるだけではなく、肩を並べてともに行きたいと夢みたのだ。"今"を生きるしかなかったガッツが明日を望んだのだ。
 友人の何たるかを身をもって知らないガッツとグリフィスだが、グリフィスには友人関係の理想があり、ガッツはグリフィスの言に憧れを抱いた。
 グリフィスは他者の人生に指標を与える。これはガッツだけではない。「鷹の団」の面々にもグリフィスとの出会いによって生き方を決めた者がいる。グリフィスはそれら部下たちの視線を自らの夢へと向けさせる。自分の国を持つという壮大な夢に。
 グリフィスの夢が叶えばその子飼いの部下は国の要職に就くことになるだろう。栄達はただの夢想から実現可能な目標へと変わる。ただの傭兵から将軍まで上りつめるのも夢ではない。
 だから、自分の夢をグリフィスに預けるのは、「鷹の団」においてはごく自然なことである。ところがグリフィスはシャルロットとの語らいのなかで、そういう考えを持つ者を友人と見做さないと述べる。有用な部下であったとしても友人ではない、と。
 グリフィスが図らずも示した生き方がガッツにどのような影響を与えたかは、第二章で描かれるだろう。それが齎した顛末も。
 そして第三章では、いよいよ"蝕"がガッツと「鷹の団」を見舞う。

amazon:[Blu-ray] 剣風伝奇ベルセルクBD-BOX  さすがに劇場用映画だけあってテレビアニメで見られたような、びっくりするくらいの作画の狂いというのはなかった。また、今だから挑戦できる演出もあり、本作がテレビアニメの焼き直しではないことがわかる。
 テレビアニメとの違いを鮮明にするためか、キャストはかつてのそれと一新されていて、テレビアニメでの声に慣らされていただけにこれには違和感を覚えたけど、それも最初だけ。キャラクターに合った声を当てているのだから、声優が変わったところでイメージが大きく変わることはないのかもしれない。
 映画は表現の規制がテレビ番組と比較して緩いので、残酷描写であっても逃げずにキッチリと描いてもらいたいものだ。特に第三章は。
 いろいろと期待してしまう「ベルセルク」の映画化である。

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Comments:2

みぃみ 2012年2月10日 15:41

はじめまして。
何の前情報も無く、劇場で鑑賞し、面白いな~と思いました。
「戦う事」を主にしながらも、人間の心のずっと奥にある「琴線」に触れていく…、そんな感想を持ちました。
グリフィスの言葉を聞いたガッツの思うところ…しっかり拝見させていただきました。続きが楽しみです。
登場人物達、戦う力もですが、心も強いですね~。

サテヒデオ 2012年2月10日 20:00

みぃみ様
 コメントくださいましてありがとうございます。
 本作は押さえておくべきところはちゃんと押さえた、よく纏められた劇場用映画だと思います。
 今のところ第三章まで製作決定のようですが、多くの人が観に行けば第四章以降も作られるとのことですから、たくさんの人に観てもらいたいです。
 戦う力と心の強さですか……。これについては次作以降にアッと驚く展開がありますので、それに是非とも期待してください。

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