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野良犬、地下に潜る!

amazon:[コミック] 少女ファイト(3) (イブニングKCDX)  日本橋ヨヲコ『少女ファイト』3巻を読んだ。
 早坂奈緒と延友厚子は小学生の頃から、ずっと同じチームでやってきた仲である。黒曜谷高校でもそれは同じ。ただし、最近はちょっと様子が違うようで。
 入学金や授業料が免除されるスポーツ特待生として入学したからには、それ相応の結果を出すことが求められる。今までと同じような心構えではいけない、通用しない。同じチームに天才大石練がいるのだ。生半な覚悟と練習量ではレギュラー定着は無理だ。
 厚子は、自宅通学が可能であるにもかかわらず、寮住まいを決める。
 厚子の変化にナオはついてゆけない。そして、ナオの変化に厚子はついてゆけない。ちょっとした気持ちのすれ違いと巡り合わせが事態をややこしくして、ナオは部活動に顔を出さなくなる。
 ナオが賭けバレーボールの試合に出場しているとの噂を聞いて、練は心配する。バレーボールは専用の設備が整っていても怪我をすることのあるスポーツだ。バレーボールがギャンブルの対象として扱われているのはともかくとして、選手に怪我をさせないように配慮されているのか? 練と学は賭けバレーボールの会場に潜入することを決意する。
 厚子がナオのことで頭を悩ませているとき、彼女は電車内で見かけたかつあげ紛いの押し売りをされている少女を助ける。その子は実際は少女ではなく、少女に見紛うばかりに美しい少年。しかも彼は三國財閥の次男坊だ。つまり、黒曜谷高校男子バレーボール部一年生の三國智之の弟だ。広之が買うように強要されていたのは、池袋ガールズベットバレーというイベントの入場チケット。手元に残ったチケットのうち一枚を厚子に渡すと、一緒に観に行こうと誘う。
 チームの仲間を放っておけないと、練はチームメイトの小田切学と幼なじみの式島未散とともに池袋ガールズベットバレーの会場に潜入。広之の誘いに厚子は長谷川留弥子と伊丹志乃を伴って池袋ガールズベットバレー会場へ。
 かくして黒曜谷ストレイドッグス、池袋ガールズベットバレーに全員集合!

 延友厚子の実家は寺である。住職の父親と若い後添い、そして厚子の三人暮らし。実母とは厚子が幼い頃に死別し、彼女は母性というものに飢えていた。小学三年生で初潮を迎えた厚子は、それについて知識はあったが心の用意はできておらず、女性の生理について相談できる母親の不在のなかでパニックに陥る。そこを助けてくれたのが、厚子に先駆けて月経を体験していた早坂奈緒だ。
 この出来事以降、厚子とナオは行動をともにするようになる。二人がバレーボールを始めたのも、厚子と一緒にいたいからとナオもバレーボール部に入るという事情があり、ここに周囲の影響を受けやすいナオの特徴が表れている。
 練とは違う意味でナオはメンタルが弱い。一年生部員による紅白戦で対戦した際、ナオを軽んじる発言の志乃に対して厚子がナオの人となりを評価して曰わく、「ナオはやる気にムラがあるしサボリ魔だ」、とある。朗らかで人当たりも良いけれど、人付き合いが良すぎるところにナオのやや主体性に乏しい性格が表れていて、付き合う人間次第でナオ自身が良くも悪くも変わってしまう。こういうことは人が生きるうえで多かれ少なかれあるものだけれど、ナオの場合は受ける影響が大きい。中学時代、父親の再婚に不服を持った厚子は、一時期、荒んだ生活を送っていた。すると、その影響を受けたナオは男性との交際に走るようになった。しかも決まってダメ男と付き合う。
 周りからの影響を受けやすいナオはそれを厚子に強く指摘され、自分なりに改善しようとするも、その選択が徒となる。この後、黒曜谷高校女子バレーボール部を窮地に追い込むことになるのだが、これは次巻で語られる。
 ナオは周りの人間に依存する気味があるが、そのナオとの関係に依存しているのは厚子だ。何事も厚子がナオを引っ張っているように見えるが、ナオが引っ張られてくれているから成立する関係とも云える。ナオに頼られているから厚子は自分を保っていられる。ナオが自分から離れていくと感じただけで厚子は立ちゆかなくなる。
 男に騙されたと云ってナオが泣きつくのは、決まって厚子だった。厚子がメールを打てば返すのが当たり前だった。それがこのたびはメールに返信しない。この状況に厚子は揺らぐ。自分を頼ってくれないのか? 自分と一緒にいても楽しくないのか?
 厚子がなぜナオに厳しく接したのか?
 厚子はナオを大切に思うからこそ、彼女に一番影響を与える自分の生活を改めようとしたのだ。自分がバレーボールに真剣に打ち込めば、その影響でナオも真面目にバレーボールに取り組むだろう。自分が真っ当な生活を送ることがナオのためになる。
 厚子もナオも不器用だ。不器用だが、それだけに十代の少女の持つひたむきさが表れていて、そこがかわいらしい。

 小学校からの縁と云えば、練と学、そして南との関係もそうである。
 ひょんな所で敵味方に分かれて戦う練と南。かつてのチームメイトと戦うことに対する忌避が練を苛み、そのうえ当のチームメイトから非難を浴びる。怯んだ練に対して今のチームメイトは叱咤するばかりで、なかには狂犬モードの発動を願う者さえいる。
 あの頃、最も勝利に拘ったのは練だが、眼前のチームでは練よりも勝ちに食らいついている者がいる。しかも、あの太っていた小田切学が練は変わっていると断言する。その強い言葉に南は反論できない。
 練自身は学との過去を忘れていたが、学は練にかけられた言葉によって自分を変えることができた。魔法の言葉は学のなかで真理となり、今度は学が練にその言葉をかける。
「どうにもならない他人の気持ちはあきらめて、どうにかなる自分の気持ちだけ変えませんか?」
 それは厚子やナオの胸にも迫ったことだろう。

 練の抱える、かつてのチームメイトとバレーボールで対戦することへの忌避は、予期せぬ巡り合わせで払拭されたように思われる。気になるのは南の言葉。「(白雲山学園高等部の推薦入学の件で)私たちが面接に行かなかった理由は、一人一人違うの」ということだが、まだ見ぬかつてのチームメイトにはどんな理由があったのだろう?
 そして、練のただひとりの"友達"、唯隆子が初登場。ミチルとの因縁も無視できないが、隆子が練に拘る理由がこの時点ではわからない。昔も今も隆子の興味は一番に練に向けられているようだ。
 練にトラウマがあるように、ミチルにも隆子に関するトラウマがある。隆子と相対してまず逃げることを考えたミチルを誰が責められようか。ミチルが逃避先として選んだ学はミチルより強かった。あるいは隆子より芯が強いかもしれない。彼女の他者と戦わない強さは、今後もチームのピンチを救うことだろう。他者と戦わない争わない学がなぜそれをしないのかというと、学は他者によって自分を脅かされることがないのだ。それは練からかけられた言葉によって彼女が学んだこと、どうにもならない

 だから学は強い。その強さがミチルを救った。ミチルは学の強さに練の姉を思い出す。
 大石真理を継ぐのは妹の練ではなく犬神鏡子でもなく、バレーボール初心者の小田切学であろう。真理が辿り着いた境地に学が練を導くに違いない。その境地はバレーボールの能力が高ければ到達できるというものではないのだろう。

 今回の記事はいつにもまして妄想垂れ流し。困ったものだ。

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