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amazon:[新書] 荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)  荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』を読んだ。
 荒木飛呂彦と云えば日本を代表する漫画家のひとり。その代表作「ジョジョの奇妙な冒険」は週刊少年ジャンプに1987年から連載されている人気漫画である。現在は掲載誌がウルトラジャンプに移って、第八部が好評連載中だ。
 その独特なスタイルでファンを獲得する荒木飛呂彦作品だが、魅力のひとつに登場人物の台詞の印象深いことが挙げられる。「ジョジョの奇妙な冒険」で使われた台詞を下敷きにした文言が、インターネットの世界でミームとなっている。登場人物のひとり、ジャン=ピエール・ポルナレフは何度「チャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗」を味わったことか。
 画風だけでなく文章にも独特な魅力を有する荒木飛呂彦が、もし漫画以外の作品を物したらどんな読み物になるのだろうか? 読書好きの" if "が実現したのが本書だ。
 小説ではない。これは当然。叙述トリックを扱うのでないかぎり、小説にできるようなネタは漫画に還元するだろう。荒木飛呂彦は漫画家なのだから。

 本書は、ホラー映画好きな著者がそれについて語る内容となっている。作者のホラー映画に対する見方が窺える一冊であり、ホラー映画のガイドブックとして数えられる一冊だ。
 著者があまりに個人的な尺度でホラー映画を捉えているので、著者がホラー映画と数える作品に「これってホラー映画か?」と思わないでもないタイトルがあって、解釈を異にする読者にとってはあるいは苦痛としか云えない読書体験になるかもしれない。幸いにも私は面白く読むことができた。こんな捉え方があるのか、と。
 著者が冒頭に挙げた「荒木飛呂彦が選ぶホラー映画 Best20」のうち、半数以上を観てない自分にガッカリした。ネタを割られるのを嫌って読み進めないのもなんだか悔しいなあ、なんて思いつつ読んでゆくと、心配したほどネタは割られてなくて、むしろ情報の出し入れが巧み。取り上げられている作品を観たくなる内容だ。
 自分の好きな映画を、まだ観てない人がこれから観る際につまらない思いをせずに済むように、すごく気を使って紹介する。本書にはこの精神が貫かれている。感動した。我が身を振り返ると、このブログのレビュー記事で何度ネタを割ったことか! 反省しきりである。

 本書の魅力は、荒木飛呂彦の頭の中を覗き込めるという点だけではなくて、その語り口が絶妙に読ませるところにある。著者が読者に語りかける体裁を持つことで、内容が胸にストンと落ちてくる。いつの間にか納得しているのは、これは私が単純ということなのだろうか?
 とにかく一度、手に取ってみてほしい。荒木飛呂彦ファンにせよホラー映画好きにせよ、得るものはあると思う。ホラー映画初心者にとっては今後のホラー映画人生の指標になるだろうし、ホラー映画マニアにはこれまで辿って来た道程を見直す契機となる。
 うん、悪くない読書体験だ。

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