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ときめきトワイライト

amazon:[DVD] トワイライト 初恋 スタンダード・エディション 「トワイライト 初恋」を観た。
 陽光降り注ぐアリゾナから北米一降水量の多いワシントン州フォークスにやってきたイザベラは、これから父親との二人暮らしをはじめる。両親の離婚後、母親と暮らしていたベラだが、母親の再婚を機にこれまで離れて暮らしていた父親との生活を選んだ。継父となる男と反りが合わなかったわけではない。継父が遠征や転地が日常的なマイナーリーグ所属の野球選手であり、生活のリズムが安定しないこともあって、新婚夫婦の邪魔をしてはいけないと自ら距離を置くことを選んだのだ。
 地元の警察署長を務める父親は、その真面目過ぎる性格が原因で妻と別れることになったが、娘は彼の性格やその距離感を嫌っていない。幼馴染みとも再会した。心配することがあるとすれば、これから通う学校での生活だ。幼馴染みは居留地の学校に通っているので、一緒に通うことも学校で相手をしてもらうこともできない。
 飛び込んでしまえば新しい環境に対する心配は杞憂にすぎなかった。季節外れの転入生ということで、物珍しさも手伝ってベラの話し掛けられることと云ったら!
 気さくに話し掛けてくる同級生のなかで、彼らとは対照的に神秘的な雰囲気を漂わせる少年をベラは発見した。その少年の名はエドワード。カーライル・カレンの養子のひとりだ。学校にはカレン家の養子が五人通っていて、いずれも独特の雰囲気を醸成している。特にエドワードは、とても同年代と思えないような佇まいを持っている。カレン家の子供たちは自分たちのなかでそれぞれパートナーを持っているが、エドワードだけがその限りではない。だからと云って、誰彼構わず手当たり次第に女性と付き合っている、というわけでもない。
 エドワードは孤高なのだ。それ故に、特に女子生徒から注目される存在となっている。
 生物の授業でエドワードと隣り合わせたベラは、ときめくより先に気分を害した。エドワードがあからさまに自分を避けているのがわかったからだ。ほとんど初対面と云ってよい間柄なのに、どうして避けられなければならないのか。その理由がわからない。特に失言をしたわけでもない。そもそも会話を交わす間もなくエドワードは避けはじめたのだから。
 ひょっとして、ワタシって臭い?
 そうかと思えば急に話し掛けてきて、親しげな態度をとる。神秘的と云えば神秘的だが、要は何を考えているのかわからない!
 そんなある日、ベラが愛車の傍らに立っていると、友人の運転する車が雨に濡れた路面を滑ってこちらに向かってくる! 愛車との間で潰されるのを覚悟したとき、ベラはエドワードが傍らに現れて片手で車を制止するのを見た。
 エドワードの人間とは思えない動きを目の当たりにして、ベラの彼への興味はいや増すばかり。そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、エドワードは思わせぶりな態度と言葉に終始する。ベラの心は掻き乱される。
 幼馴染みが洩らした言葉をもとに検索サイトを駆使して集めた情報を総合すると、エドワードの正体として考えられるのはひとつ。彼は吸血鬼だ。

 本作を本格的な吸血鬼映画と期待してはいけない。晴天の下こそ歩かないが、曇天や雨天とは云え真っ昼間に活動する者を吸血鬼と呼ぶのは躊躇われる。キリスト教の頸木から逃れた吸血鬼の存在を私は許せるので、十字架や聖水が効かないのはよしとできる。しかし、夜の住人が昼の世界を闊歩できるというのは、ガチガチの吸血鬼原理主義者ではない私であっても胸にもやもやと違和感を覚える。
 雨天と曇天の空の下を闊歩する本作の吸血鬼は、陽光の下にあっても灼け落ちるわけではない。皮膚がキラキラと光るだけ。エドワードがベラの前で陽光の下に身を晒す場面がある。エドワードが予め驚かないでくれと事前に断るくらいだから、さぞや醜く変貌するのだろうと思えば全身キラキラのスワロフスキー人間になるだけ。想像とは違う意味で驚いた。
 カーライル・カレンのグループは決して人間を襲わない"菜食主義者"らしいけれど、所詮は吸血鬼だ。エドワード自身が云うように最凶最悪な捕食者には違いない。どのような哲学を有していても人間の敵なのだ。しかし、本作における吸血鬼は、その能力や習性に比してそんなに怖くない。
 腕力をはじめとする力強さや敏捷性、鋭敏な感覚というのは、吸血鬼のそれは人間とは比較にならない。本作でエドワードが見せる超人行為の数々は、しかしそのいずれもが怖ろしいというより格好良くない。特に敏捷性が発揮される場面の滑稽さと云ったら、出来の悪いお笑いコントのようだ。小動物が懸命に動いているような印象をなんとなく受ける。
 よしんばアクション要素に問題があっても、それは吸血鬼映画として致命的な瑕にはならない。しかし、本作に登場する吸血鬼の大半は人間を襲わないのだ。人を襲わない、動きが滑稽な吸血鬼。吸血鬼映画としては惨敗ではないか。
 いやいやいや、まだ救いはある。性行為を伴わずに増殖する吸血鬼だ。吸血行為そのものに深い快楽が生じる。そのような生態を持つ吸血鬼は、常に色気を漂わせている。どういうことかと云えば、生殖器とも云える口元を彼らは常に晒しているのだ。血を塗ったような赤い唇にその間から時折覗かせる牙、それ自体が別の生き物のように動く舌、人の鋳型に耽美を流し込んだような存在、魔族の頂点に立つのが吸血鬼だ。だから人は惑わされてその毒牙にかかるのだ。
 本作の吸血鬼は美しくも気高い存在として物語世界に君臨しているだろうか?
 蛍光灯の光の下、大多数の女子生徒の注目を浴びるエドワードは、蒼白い肌に鬚の剃り跡が青々としていて、私は中日ドラゴンズの仇敵であるミスター・ジャイアンツを思い出してしまった。いわゆるひとつの「鬚が濃い」! また、カーライルが初登場した際も笑った。あの外見を異常と云うのは失礼だろうけれど、少なくとも奇妙とは断言できる。
 吸血鬼映画とするならば本作は成功しているとは云い難い。それでは面白くないかと云うとそうでもない。本作を少女漫画だと捉えると、途端に面白くなる。私は「りぼん」を思い出した。転校生の女子と学校のアイドルが繰り広げる、どきどきロマンティック・ラブコメディが本作の本質だ。これは断言できる。

 最初はいがみあっているように見えた二人の関係は、本当は初対面の段階から意識しあっていた。
 いつもは冷静な態度で友人からの相談には的確な助言を与えるヒロインも、自分のことになると気持ちを整理できなくて突拍子もないことをしでかしてしまう。
 仲間以外の者には決して明かせない秘密を抱えるヒーローは、孤独な心を抱えたまま自らの宿命に生きようと考えていたが、そこに運命の相手と出逢って酷く惑う。呪われた宿命を彼女と共有するわけにはいかない。求める心と抑える理性とが常に戦っている。
 つまりは両想いなのだ。そうだろうよ、少女漫画なのだからな。当然と云えば当然だ。バカバカしいほど定石通りだ。

 両想いの二人だが、そこは少女漫画なので恋の成就は容易くない。ヒロインとヒーローの気持ちが交わらないのも無理はない。ヒロインはヒーローの本心を知らず、彼が背負う宿命の大きさを知らない。ヒーローはヒロインを想えば想うほどに彼女を不幸にしたくなくて、敢えて彼女を遠ざける。
 徹頭徹尾、首尾一貫した少女漫画だ。王道だ。昭和の薫りさえ漂う。
 業を煮やしたヒロインはヒーローを呼び出して、「あなたは何者なの?」「私のことをどう思っているの?」というようなことを尋ねる。好きならはっきり告白してよ、ってわけだ。ヒロインが切っ掛けを与えて、ヒーローが決断し実行する。少女漫画としては文句のない展開だろう。
 ヒロインのヒーローに対する誤解は解け、ヒーローはヒロインの想いを知る。晴れて交際を始めた二人だけれど、この時点で既にその想いには若干のすれ違いが生じている。
 ヒーローはヒロインを今後ずっと守ってゆくことを誓い、ヒロインはヒーローと共に生きてゆくことを望む。「哀・戦士」の歌詞かよ。

 クライマックスはヒロインに横恋慕する男の登場だ。本作にはカレン家とは別の吸血鬼グループが登場するが、そのなかのジェームズがベラを狙う。吸血鬼としての本能からジェームズはベラを襲うのだが、これを少女漫画の文脈から読み取ると違った面が見えてくる。互いに求める気持ちがあるのに、ヒーローは二人の関係を進展させようとはしない。このことがヒロインには物足りない。そんなときに出逢ったのはワイルドな男。強引なアタックに図らずも操が奪わそうになるその瞬間、ヒーローが参上する。この時、ヒロインの心境を表す擬音は「ズッキュ~ン!」である。勿論、彼女のまわりをハートマークが飛び回っている。
 恋の鞘当てはヒーローの勝利に終わる。これもこの段階ならば当然の展開だ。少女漫画における展開としては、単行本に換算するならば三巻目といったところだろう。

 試練を乗り越えて、二人の絆はますます強くなり、愛はいっそう燃え上がる。そんな二人だけれど、全てにおいて同じ想いを抱いているわけではない。この時点での齟齬はさて措いて、ヒーローは恋人を守ってゆくことを改めて誓い、ヒロインは恋人と共に生きてゆくことを改めて強く願う。
 ヒロインは死を賭して通過儀礼の儀式に参加したが、吸血鬼の共同体には加入できなかった。だからと云って彼女は諦めない。その想いはますます強くなる一方だ。
 今は一緒にいられるだけで満足の二人だけれど、いずれは衝突することになろう。その間隙を縫って現れるのが新たな恋のライバルであることは、少女漫画の定石から考えれば明白だ。あなたの気持ちを理解できるのは自分だけだと云って、弱気な心を揺さぶるはず。その役割を担うのは、エドワードの相手にはヴィクトリア、ベラの相手にはジェイコブといったところだろうか。どうだろう?
 いろいろな意味で次作が楽しみだ。

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トワイライト 初恋 from 象のロケット 2011-08-23 (火) 00:47
霧に包まれたワシントン州フォークス。 アリゾナからの転校生ベラは、不思議な雰囲気のエドワードに心惹かれる。 彼はベラを避けていたが、ある日事故に遭った彼女...

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